『ヤドカリめし』という言葉、ご存知でしょうか。ある形態の飲食店のことなんですが、数年前から東京や大阪で増え始めています。
名古屋に登場した『ヤドカリめし』を取材すると、その人気の理由が分かってきました。

■中華料理店にヤドカリめし
名古屋市東区にある「大陸バル隆麺」。
ラー油と唐辛子の辛味が効いた「四川マーボー豆腐」や、大きな豚肉がゴロゴロ入った「黒酢の酢豚」などが自慢で、ビジネスマンや地元の人たちに人気の“中華料理店”です。
しかし、ランチタイムに来てみると…。

(柴田美奈アナウンサー)
「間借りカレーって書いてあります。店内では…皆さんカレーを召し上がってますね。中華じゃない」
実はここ、お昼は、スリランカ人のシェフが営む“カレー屋さん”に大変身!昼と夜で、店の形態が全く変わるんです。
一番人気のメニューは、チキンと野菜、豆の3種類のカレーが一度に楽しめるスペシャルカレープレート。

昼のカレーは、中華料理店の店舗を間借りして営業する「宿借り」の状態。こうした営業スタイルから、「ヤドカリカレー」と呼ばれているんです。
関西発のスタイルで3年ほど前から登場。大阪には、100店ほどあると言われています。
こちらのお店では、スリランカから取り寄せたスパイスを使うなど、本格的。
男性客:
「間借りカレーが流行りって聞いたことがあって。面白いと思いますよ。昼だけじゃなくて夜も来てみてもいいのかなという気にはなりますね」
でも、どうして“ヤドカリ”で営業しているんでしょうか?
“ヤドカリ”しているカレー店のオーナー:
「スリランカ料理を始めたいと思って店を探したんですけど、お金もかかるし場所も空いているところが見つからないんですよ。たまたまこのお店の社長さんと出会って、お店を貸してくれるよって言ったから」
開店のために何百万円もかかると言われる初期投資は、ほぼゼロ。調理器具もほとんど、中華料理店のものを使えるので、開店のハードルが低いんだそうです。
一方、場所を貸す側にもメリットが…。

大陸バル隆麺・奥村店長:
「お昼のお客さんにも夜の隆麺を知ってもらったりとか。お昼のテーブルにもメニューを置いてあるので、相乗効果が生まれればいいなと思ってます」

■夜ワインバー、昼時々おにぎり店
名古屋市中区大須にある、隠れ家的ワインバー「ル・テロワール」。
ソムリエが世界各地から集めたおよそ60種類のワインや、ワインに合う料理が味わえるお店です。
おしゃれなワインバーにしか見えませんが、こちらも「ヤドカリめし」のお店。日曜日のお昼に来てみると…。
(柴田アナ)
「カウンターにお客さんがいらっしゃいます。おにぎり?ですかね、色んな種類が沢山並んでます」
なんと“おにぎりの店”に大変身!
愛知県設楽町でとれた無農薬のお米を使い、具材は、おにぎりの定番、たらこや鮭、さらに、鮮やかな五目稲荷など、この日は11種類。
お米本来の味が楽しめると人気で、早い時には1時間ほどで売り切れてしまうんだそうです。

おすすめは「こにぎりランチ」。おにぎり3個と、魚や野菜のおかず、そしてデザートまでついて500円です。
こにぎりランチ・大矢久美子さん:
「お店の場所と調理器具を無償で提供して頂いて、かかっているのが材料費だけなので」
お客さんにも「お値打ちに食べられる」というメリットが!ちなみに、平日は別の仕事をしていて、今年の4月から月に2回ほど、日曜日のお昼に間借りで営業しているとのこと。

同・大矢さん:
「自分で(一から)やろうと思うと、ハードルも高いし、経験も知識も何もないんですけど、オーナー始めお客様からご指導いただけますので、ちょっとずつ練習しながらやっていきたいと思います」
店舗を貸す側、借りる側、お客さんの三者にメリットがあった『ヤドカリめし』。まさに“三方よし”の形態と言えそうです。