■実は去年『減少』に転じたバレンタイン市場

 2月14日のバレンタインデーに向け、デパートの特設コーナーや専門店は、連日多くの人でにぎわっています。

 一粒数百円はする高級チョコレートから“バラまき”用のお値打ち品まで、値段も種類も幅広いラインナップ。どんな相手に渡すにしても、どんなチョコを選ぶのかは楽しみのひとつです。まだ、迷っている方は、三重県発祥のちょっと変わったチョコレートはいかがでしょうか。

 日本記念日協会によるとバレンタインの市場規模は、「友チョコ」や「ご褒美チョコ」などの追い風に乗り、2017年、史上最高の約1385億円に。市場は熱く燃えました。しかし、去年は推計で約1300億円、前年比6%減となりました。

 減少の理由は「恋をしない人が増えたから」...。本命チョコを贈る人が減っているのだといいます。

 冷めていくチョコレート市場…しかし目新しい商品も続々と登場し、再び燃え上がろうとしています。

■“きのこの形”でなく本物のきのことチョコのコラボ

 三重県津市で、きのこの研究や栽培技術の指導などを行う「岩出菌学研究所」。ここに、きのことチョコをコラボさせた研究者がいます。原田栄津子さん(45)。目指すのは甘いだけじゃない、身体にも優しい健康的なチョコで、市内の洋菓子店と共に10年ほど前からきのこスイーツの試作を始めました。

 カカオの風味を引き出すのは、砂糖や生クリームだけではなく、日本人に馴染みの深い「うま味成分」も隠れた立役者なのだと原田さんはいいます。

 うま味成分とは、食べ物にコクや深みをだす成分で、よく知られているのはグルタミン酸やイノシン酸、それにグアニル酸。このグアニル酸を多く含むのが、実は干しシイタケです。

 きのこを研究する原田さんは、このグアニル酸に目を付け、きのこのうま味成分をチョコに混ぜたところ、カカオの味が深まったといいます。

 こうして製品化されたのが、津市にあるお菓子教室「シュクレ」と一緒に開発したマカロン、シイタケガナッシュを挟んだ「シイタケマカロン」と、キャラメルクリームにハラタケ科のコプリーノを混ぜ込んだ「コプリーノマカロン」です。(5個入り1500円税込)

 そして、もう1つは、シイタケとマイタケの「きのこトリュフ」。溶かしたチョコに、シイタケとマイタケのうま味成分を混ぜたのがポイントです。(6個入り1300円税込)

■大人の生チョコ…「白い幻」

 原田さんが開発したコラボチョコはほかにも。津市の洋菓子店「ムッシュ・コウノヤ」と作り上げたのは、色が白く、かさが大きいオオイチョウタケを使った生チョコ。

 三重県で採れるのは、津市と松阪市の山間部だけ。しかも年に数日しか良い状態では収穫できないことから、「白い幻」ともいわれる貴重なきのこです。

 この「白い幻」を生クリームで煮詰めて出来上がった生チョコは、酸味の効いたチョコとマッチした大人の味わい。

 オオイチョウタケは、マツタケよりもうま味が濃いといわれますが、この生チョコを食べただけでは、そのうま味がわからないのが奥の深いところ。口の中でチョコが完全にとけ、喉を滑り落ちた瞬間、ようやく分かります。鼻から通り抜けるのは、まさにきのこです。 (8個入り1850円税別)

■シイタケ農家に生まれシイタケ嫌いだった女性の“きのこ愛”

 原田さんは、シイタケの原木栽培が盛んな宮崎県北部の美郷町出身。シイタケ農家に生まれ、幼少期から栽培を手伝ってきましたが、嫌いで食べることができなかったといいます。

 そんな原田さんがきのこに魅せられるようになったのは、進学した宮崎大学農学部で森林化学研修室に入り、きのこを菌糸から培養したことがきっかけ。時間と愛情をかけて世話をすると小さなきのこが生まれた瞬間に感動し、きのこが可愛く思えるようになったそうです。

 その後、中国農業大学への留学、青年海外協力隊きのこ隊員としてチリへ。帰国後、「きのこを通して社会に貢献する会社」を掲げる岩出菌学研究所に就職。趣味も、「おいしくて奇妙なきのこを求めて世界を歩くこと」になりました。

 きのこに恋をした原田さん。開発したチョコは、見た目はいたって普通の生チョコやマカロン。

 鼻腔をくすぐる香りもデパートのものと変わりませんが、口にいれると、新しい出会いが待っています。

お菓子教室「シュクレ」

住所
三重県津市長岡町3057-9
電話番号
059-226-8194(月曜定休)
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洋菓子店「ムッシュ・コウノヤ」

住所
三重県津市八町2-15-1
電話番号
059-223-2052(10時~19時 水曜定休)
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