■災害時の備えに…進む次世代自動車の活用
まもなく東日本大震災から8年を迎えようとしています。そんな中、電気自動車など次世代自動車を災害が起きた時の電源として活用しようという動きが、東海地方でも広がろうとしています。
2月、名古屋市内で開かれた環境に関するイベント。会場であるものが注目を集めていました。
男性:「すごいですね!」
女性:「びっくりです!驚きで」
子ども:
「車って電気とか水出せるんだなって思った」
(リポート)
「テレビやスマートフォン、そして電子レンジ、この部屋全体の電力をまかなっているのは1台の車なんです」
それは、水素と酸素から電気を生み出し、モーターを動かす「燃料電池自動車」。
環境にやさしい燃料電池車や電気自動車など、いわゆる次世代自動車が災害時の電源としても利用できるのです。
注目が集まる理由は、去年9月に発生した「北海道胆振東部地震」。北海道全域から2日間、灯りが消えました。南海トラフ巨大地震が発生した場合でも、同じように大規模停電が起きる恐れがあります。

■テレビにファンヒーター、スマホの充電も 1台で約1週間分の電気を供給
福岡県北九州市が運営するモデルルームでは車の電気を使った暮らしが体験できます。
外にある燃料電池自動車で家の中に電気を送るのですが、まず車からの電力を家庭で使えるように変換する設備と、車をつなぎます。ガソリンを給油するように、はめ込むだけで準備完了。タブレットで通常の電力から切り替えると、「ガチャン」という音が…。
担当者:
「これが車からの電力に切り替わった証拠です。違和感なく、途切れることなく、一瞬停電することなく切り替えることができます」
実際に家電を使ってみると、消費電力の大きいファンヒーターやドライヤー、電気ポットまで使用可能。さらに炊飯器で温かいご飯も炊くことができました。ご飯の味もおいしく仕上がっていました。
冷蔵庫やテレビ、ファンヒーターからスマートフォンの充電まで、日常生活に必要な電気をこの車1台で賄おうとすると、1週間分ほどの電力を供給できるそうです。
内閣府によると、南海トラフ地震が起きた場合、東海地方の電力復旧にかかる時間は7日。つまり、停電を経験しないで済む計算になります。
ただし、燃料が半分であれば、3日4日と電力の供給も半分になってしまうので注意が必要。地震などの災害はいつ起こるか分かりませんので、非常用電源ということも意識して早めの充電をすることが大事だということです。

■課題は価格…車の街・愛知県豊田市では補助金も充実 使用できる設備も拡大へ
災害時の救世主となる次世代自動車。しかし、保有率は約14%…。その理由を街で聞いてみると…?
街の男性:「一般の人にはまだ手が出ないかな…」
別の男性:「もうちょっとお金があったら…(笑)」
街の女性:「みんなが乗るようになって、ちょっと価格が抑えられるのなら」
そう、「価格」です。安いものでもおよそ300万円。燃料電池車では700万円以上もする高級車です。
そんな次世代自動車の保有台数が日本でトップクラスなのが、車の街・愛知県豊田市。実に5万台あまりと、4台に1台が次世代自動車です。
豊田市の担当者:
「やはり自動車産業の街っていうところが大きくて、ほんとに次世代自動車っていうのが身近なんだろうなと思いますね」
もちろん、それだけではありません。手厚い補助金も設けられています。
次世代自動車を新車で購入すると国から補助金が出ますが、豊田市は独自に補助金を上乗せしていて、最大およそ280万円も安くなるんです。
豊田市の担当者:
「環境にいいだけじゃなくて、災害時だとか役に立つよというところも合わせてPRしていかなきゃいけないなと思っております」
また、避難所に指定されている市内の中学校には、去年、車から体育館に電気を送る設備が作られました。プラグインハイブリッド車にコードをつなぐだけで、体育館とトイレの照明、さらにコンセントからも電気が取れます。車1台で3日ほどの電力をまかなえるとそうです。
同じ設備は現在、11の小中学校に設置されていて、豊田市は3年後までに28か所まで広げる計画です。