4つの議席に12人の候補者が乱立する参議院選挙の愛知選挙区では、激戦を勝ち抜こうと驚くような知恵を絞った戦いが行われています。ユニーク作戦を取材しました。

■10年来の“相棒”と…立憲民主党の新人・田島麻衣子さん(42)
田島さん:
「今は浴衣を着ていますが、去年まではですね、人道支援服を着て国連職員を現場でやっておりました」
アフリカの難民キャンプなどで働いた元国連職員だけあって、選挙戦はとにかく「現場主義」。
6月29日午前6時ごろの愛知県豊橋市・豊橋魚市場…。時には早朝から長靴で市場を動き回り、とれたての海鮮を実食。
そんな田島さんの「現場主義」の象徴が、度々目につく『リュック』。
田島さん:
「この口を閉めてるんですけど…糸がほどけちゃって破れちゃいましたね。なのでと時々ここから出し入れしてます(笑)」
国連時代から使う10年モノの相棒です。

ただ、すごく大切なのは分かりますが…決起集会でベージュのジャケットと赤のワンピースにリュックを背負う姿は多少の違和感も…。
とはいえ、現場の声を大事にリュックを背に、走り回ります。
田島さん:
「ひとつ本当にお約束したいこと。それはですね『現場主義』です。皆さま、おひとりおひとりの声に耳を傾けたいと思います」

■共産党ってオシャレ? 共産党の新人・須山初美さん(40)
須山さん:
「デザイナーとして働いてくる中で、本当にまぁそういうセクハラなのかなと思うようなことも受けながら」
デザイナー時代の自身の経験を交えながら、ハラスメント防止を訴えました。
ところで、トークショーが開かれた場所は、オシャレなビルの中にあってまるで美容室のような空間です。机の上には写真撮影のためのアイテムも…。

よく見ると…実はここ、共産党のイベントスペース。
若者を意識した空間を作ることで、共産党に関心がなかった人達を取り込む作戦です。須山さんのトークショーに訪れたのは若者ばかり、とはいきませんでしたが…。
須山さん:
「女性が働き続けることはすごく大事だなと思っていましたし、パワハラをなくしていく法律にまだなっていないですから、そこにも取り組みたい」

■“言葉のプロ”が… 日本維新の会の新人・岬麻紀さん(50)
岬さん:
「自分で表現しないことは相手には伝わらない、伝えていくと伝わるは全然違うんですね。伝わらなきゃダメ、いいですか?」
岬さんは、企業の研修などを行う会社の代表で、日本語をキレイにそして上品に操るフリーアナウンサーです。
ところが、7月4日の出発式では…。
岬さん:
「もう無名だし、お金は無いし、ちょっとだけべっぴんですわという感じで頑張っていきたいと思います。応援してちょうよ!」
選挙戦が始まると、維新と共に公認を出した減税日本の河村市長とコッテコテの“名古屋弁街宣”を展開。

河村たかし名古屋市長:
「おかーちゃん応援したってちょうよ、岬、岬ね」
岬さん:
「いろいろと賛否両論ですけども、やっぱり名古屋色を打ち出すためには名古屋弁で良いと思うし、共感が増すのは当然ですよね」
Q.岬さんの名古屋弁は?
河村名古屋市長:
「ほらビューティフルだがね」
これまでのキャリアをかなぐり捨て、“名古屋くささ”を前面に押し出す選挙戦です。

■9万人目前「YASU-METER」 公明党の新人・安江伸夫さん(32)
弁護士で、全候補者の中で最も若く、女性人気もピカイチです!
そんな安江さん、街頭演説の後におもむろに取り出したのはスマートフォン。
安江さん:
「じゃあヤスメーターをみなさんに押してもらいたいと思います」
そう言うと支援者に声をかけ、握手。そして、スマートフォンの画面を向けてはタッチ、向けてはタッチ…。一体何をやっているんですか?
安江さん:
「ヤスメーター、これみなさん、お会いした人、握手した人に応援ボタンを押していただいております」

スマホの画面をタッチしてもらい握手した人の数をカウントする、その名も「ヤスメーター」。立候補決定からわずか1年でその数は9万人に近づいています。
安江さん:
「本当にみなさんとの絆、応援いただいたものを大事にしていきたいと思います」
スマホを介して有権者と一体感を共有。安江さんはきょうもスマホ片手に握手を続けます。

■不屈の“選挙チャレンジャー” 社民党の新人・平山良平さん(71)
福島瑞穂副党首の後ろで、自らのぼりを立てる平山さん。実は、こののぼり…。
平山さん:
「のぼりのポイントは、自分で布を買ってきて、表から見ても裏から見てもちゃんと字が読めるように」
文字は直筆。リサイクルショップで買った楽器スタンドを利用したお手製ののぼりです。

一応「新人」ではありますが、今回で7回目の挑戦。これまで作ったのぼりは200本を超えるといいます。
Q.「お手製」はこだわりなんですか?
平山さん:
「やっぱり自分でできることは自分でするっていう、やっぱりそれは民主主義の原則でもある」
最小限のコストで最大限のアピールを。そしてもう1つ力を入れるのが、街頭演説の「生配信」。党存亡の危機に手作りとデジタルの両輪で臨みます。
平山さん:
「こういうことを生で訴えている、それを直に観れるというそういう効果を狙ってやってます。”いいね!”がとんとんとくるから、いいね!」

■“民主主義怪獣”で政権に牙? 国民民主党の現職・大塚耕平さん(59)
7月6日、名古屋駅前で演説をする大塚さん。今回の選挙で4期目を狙います。
大塚さん:
「私は今回、冗談でこんなことをやってるんじゃないですよ!」
両脇には…怪獣!?
♪でも、でも、デモクラシー「デモクラシーを大事にせず悪い怪獣にしているのは誰だ!」
民主主義=デモクラシーを怪獣に見立て、忖度やえこひいきが「悪い民主主義」につながると訴えるアニメ動画。

大塚さんが古代ギリシャの哲学者ソクラテスと肩を組んで歌う独特な世界観。本人が作詞しました。
怪獣は動画を飛び出し街頭にも。政策通のベテランが異色の着ぐるみ作戦で、『真剣』に危機感を訴えます。
大塚さん:
「お子さんが関心を持ってくれると、当然親御さんも関心もってくれる。この18年(参議院議員を)やってきて日本の民主主義が変だなと皮膚感覚で感じますから、そこをお伝えするのが僕の仕事だと思っています」

■安定の「どぶ板」選挙 自民党・現職の酒井庸行さん(67)
とってもダンディーでクールなポスターですが…街宣車を伴わずに黒のワンボックスカーで訪れたのは蟹江町内の建設会社。
酒井さん:
「実はですね、6年前(前回の選挙の時)にもお邪魔をさせて頂きました」
20分も滞在せずにすぐさま車に乗り込み、次はあま市内のロケットエンジン製作会社へ。

その後も鉄工所や運送会社など、この日だけで企業を4社回ったほか、個人演説会や出発式など秒刻みでスケジュールをこなします。
ちなみにライブ動画配信とかに興味は…?
酒井さん:
「ないです。YouTubeやネットで自分の考え方をあげるのもいいんでしょうけど、でもやっぱり、フェイストゥーフェイスですよね」
“ガラガラ声のアナログ男”が愚直に訴え続けます。

愛知選挙区には主要政党の7人の候補者のほか、ご覧の5人の方が立候補しています。
・諸派(オリーブの木)の新人・橋本勉さん(65)
・諸派(労働の開放をめざす労働者党)の新人・古川均さん(65)
・無所属の新人・石井均さん(54)
・諸派(安楽死制度を考える会)の新人・牛田宏幸さん(48)
・諸派(NHKから国民を守る党)の新人・末永友香梨さん(37)