電話などを使って言葉巧みに現金を騙し取る特殊詐欺。被害は一向に減る気配はなく、最近犯行グループに20歳に満たない「少年」が関わるケースも増えているといいます。

 実際に特殊詐欺で「受け子」をしていた17歳の少年を取材すると、少年らが簡単に犯罪に手を染めてしまう現状が見えてきました。

■「特殊詐欺」に手を染め逮捕された少年…きっかけは軽い気持ち

少年:
「罪の意識っていうのはあまりなかったです。詐欺っていわれても、詐欺がそんな重いことっていうのを、まず認識していなかったです」

 こう話すのは17歳の少年。どこにでもいるようなこの少年が加担したのは「特殊詐欺」。少年は今年2月、詐欺容疑で逮捕され、この4月から愛知県の瀬戸少年院で矯正教育を受けています。

 少年が特殊詐欺に関わったきっかけは…。

少年:
「いとこがいてその人の友達が暴力団との関わりがあって、『詐欺の受け子・出し子を集めているけどやらんか?』みたいな感じですね。そのとき高校辞めて1カ月、バイトもやっていないという感じだったので、することもないしやってみようかなっていう感じ」

 少年が手を染めた特殊詐欺…。愛知県内だけでも去年1年間の被害総額はおよそ13億円に上ります。

 一般的に特殊詐欺グループは、頂点に指示役がいて、その指示を受け電話を掛ける『かけ子』、そして騙された被害者の元へ行き、実際に現金やキャッシュカードなどを受け取る『受け子』、ATMで現金を下ろす『出し子』など役割が分かれていると言われています。

 少年が担っていたのは『受け子』。

少年:
「指示をもらって被害者の家にキャッシュカードを取りに行く作業。(だまし取った)総額っていったら結構な額ですね、2~3000万とか」

■今年7か月間で愛知県警が特殊詐欺事件で検挙した72人のうち「20人は少年」

 今、特殊詐欺に少年が関わるケースが増加しています。今年1月~7月までに愛知県警が特殊詐欺事件で検挙したのは72人。そのうち20人は、20歳未満の少年でした。

 少年が特殊詐欺に加担しないよう、愛知県警も対策に動き始めています。

<ツイート内容>
「1ヶ月で周りの人たちの年収稼がせますよ!」

 これはツイッターに投稿された、特殊詐欺のメンバーを募集する書き込み。SNSにはこうした書き込みが溢れ、甘い言葉で少年を誘い出します。

 愛知県警は、8月からこうした募集の書き込みに対して直接警告メッセージを送り、注意を呼びかける取り組みを全国に先駆け始めました。他にこんな取り組みも…。

愛知県警の警察官:
「僕がやってるのは、罪を犯した少年を捕まえたりする仕事です」

■所属や家族構成など個人情報を抑えられる…少年院でその恐ろしさを講演

 7月、瀬戸少年院で開かれた講習会。少年およそ60人の前で話をするのは愛知県警の捜査員です。

愛知県警の警察官:
「受け出しやる子っていうのは、身分証、顔写真付きの身分証だとか、家族構成とかね。(自分の)身分を全部明かして登録しなきゃ使ってくれない。もし持ち逃げなんかしたら追い込むぞっていう脅しをかけるわけね」

 愛知県警は各少年院でこうした講習会を開催。少年らに直接、特殊詐欺に関わらないよう呼びかけています。

 以前、特殊詐欺に加担し瀬戸少年院に入所している17歳の少年。

少年:
「やっていくうちにどんどん辞めれなくなってく。先輩も怖いし、その上の人も。暴力団ではないけど、いったらチンピラみたいな感じ。そういう人達の方が怖いじゃないですか、なにしてくるか分からない」

 軽い気持ちで始めた特殊詐欺…。グループに自宅を知られ、自ら抜け出すことはできませんでした。精神的にも未熟な少年らは、犯罪行為がどんな将来を招くか想像することがなかなかできません。

少年:
「その詐欺やってる時に職質されて、捕まっちゃったとかじゃなくて、『やっと終わった』っていう感じ。軽く考えて被害者の方のキャッシュカードを取って、お金を取ってしまったことは、少年院に入ったからって許されることではないし。やらなければよかったって感じですよね、やってから気づいても遅かったですね」

 少年が安易に特殊詐欺に加担するケースが増える中、私達大人は何ができるのでしょうか。

■子供が突然スーツ姿に…大人は子供の異変に注意を

 特に年頃のお子さんがいる方はどんなところに注意したらいいのか、愛知県警に聞いてまとめてみました。

 特殊詐欺では役所の職員や弁護士などに成り済ますことがあるので、スーツ姿になることが多くなります。理由もなくスーツで出かけることが多いと要注意です。

 また突然、親が知らない間にブランド品を身に付けたりするのも注意です。犯罪行為によって現金を得ているかもしれません。また、家を長期間空けるのは犯罪行為に関わっている可能性もあるので要注意です。

 この3点いずれについても言えることですが、とにかく家族のコミュニケーションを増やすことが、子どもが犯罪へ加担するのを防ぐ近道と言えます。