名古屋のデパートで開かれている東北の物産展。東北地方も台風19号で大きな被害が出ましたが、被災から1カ月、特別な想いで東北の幸を届ける出店者を取材しました。
厚切りの牛タンに、山形名物玉こんにゃく、そしてウニ・カニ・イクラがたっぷり載った海鮮弁当も…。

ジェイアール名古屋タカシマヤで12日から始まった、「大東北展」。買い物客が続々と集まっています。

買い物客:
「ずんだ餅と牡蠣とこんにゃく…何回も来てます。物産展マニアなんで(笑)」
別の買い物:
「楽しい!『あっ!』て惹かれたところにサーっと寄ってくかなって」
2011年の東日本大震災の復興への想いを込めて始まったこの「大東北展」。今年は“別の想い”も込められていました。

10月、日本列島を襲った台風19号…。
東北地方でも宮城県や福島県で死者が出たほか、住宅への浸水被害が出るなど多くの人の生活を一変させました。

宮城県石巻市の本田水産。サバやワカメ、それに牡蠣など、地元宮城特産の海産物の加工業者で、今年「大東北展」に初出店しています。
水野取締役:
「こちらが牡蠣剥きをするむき場になりますね。ひたすら剥く場所です、ここは」
山積みになった、獲れたての牡蠣。30人ほどの従業員が一斉に殻から実を剥がしていきます。

水野取締役:
「実が非常に入ってますね、こちらは。宮城県の牡蠣は外海できれいな海で育ってますので、非常にさっぱりしてクリアな味がするというか」

宮城自慢の牡蠣。「大東北展」にもこの牡蠣を使った特製弁当などを出品します。しかし、初出店を前に台風19号に見舞われました。

水野取締役:
「水はここくらい(膝下ほどの高さ)まで来ました、コンロの下ぐらいまで来ましたので。水が浸かっているすがたを見た時は愕然としたんですけれども…」

台風による雨で工場が浸水し、一部の機械が故障。さらに仕入れ先で養殖中の牡蠣が多いところでは3割ほど流されてしまった恐れがあるといいます。

しかし、遠く離れた名古屋の大東北展に地元が誇る「おいしいものを届けたい」という想いは変わりません。

水野取締役:
「被災した前と同じような商品をきちんと出せるような形で復旧を目指してやりました。おいしいものを売るために、作るためにパワーがありますので。(大東北展を)宮城のおいしい牡蠣を召し上がる機会にしていただければなと思います」

11日、ジェイアール名古屋タカシマヤで出店ブースを担当する、本田水産の小南さん(60)。自慢の牡蠣も、無事に届きました。
小南さん:
「台風19号のこともご心配いただくので、元気にこうやって現場に出られるようになりましたということをお伝えしたいですね」

迎えた初日…。東北自慢の名産品を買い求めていく、大勢のお客さん。台風被害にあった出店者にとって、何よりの心の支えです。

福島からの出店者:
「2011年の3.11(東日本大震災)、そして今年の台風19号。やっぱり2回目(の被災)ですので心は折られましたね。(食べた方の)笑顔を頂きたいですね、『おいしかったよー』っていう言葉を、帰って地元で皆に伝えたいと思いますね」

本田水産は、牡蠣汁の炊きこみご飯の上に、カラッと揚げたカキフライとプリップリの牡蠣が乗った特製弁当です。
買い物客:
「災害にめけずに頑張ってやってきて出てきているっていうね。ほっとする感じがしますね」
別の買い物客:
「我々が買うことによってお互い元気になってきますよね。頑張ってほしいと思いますよ」

本田水産の小南さん:
「大粒の牡蠣を名古屋のお客さん用に持ってきました。風味豊かにプリプリに仕上げていますよ。地元で作ってる人たちの気持ちも一緒に届けばいいなと考えております」