母親は3時間45分に対し、父親はわずか『49分』。これは、父親が1日に育児をする平均の時間です。
育児時間に含まれるのは、授乳やおむつ替え、お風呂などの世話で、離乳食など食事を作る時間は入っていません。
今、母親1人に育児を強いる、いわゆる「ワンオペ育児」が問題になっています。問題解消のための「お父さん向けの育児合宿」を取材しました。
■「産後うつ」発症は11人に1人、命を絶つ母親も…

去年7月にオープンした産後ケアハウス「ははのわ」。愛知県岡崎市に初めてできた産後ケアの施設です。
院長の野田志保さん(46)は20年以上にわたって、助産師として出産の現場だけでなく子育ての相談にものってきたベテランです。

ははのわ院長 野田志保さん:
「産後うつの増加っていうのは今、周知の事実で、よくお母さんが『いつまでこの状態続くんですか?』っておっしゃるんですね。『終わりがあるように思えない』っていうのが産後の特徴かなと思います」

産後うつの増加…。厚労省によると、11人に1人が産後うつを発症。さらに2年間で92人の母親が出産後、1年未満で自ら命を絶っています。

それにもかかわらず、父親の育児時間は母親のわずか4分の1以下。いま、「母親のワンオペ育児」が問題になっています。

野田さんは「パパ対象」の合宿を開き、子育てについて改めて考える場を作りました。
■父親も育児参加を…産後ケア施設が始めた「パパ合宿」

参加した藤田さん夫婦は、生まれたばかりの赤ちゃんと3歳の女の子を持つ4人家族。夫の真輝さん(28)は美容室のオーナー兼店長です。

夫の真輝さん:
「8時50分くらいに家を出て、帰ってくるのが遅いと2時とか3時とか…」

野田院長:「すごい生活ですね」
妻の遥さん:
「パパだけ別で寝て、子供2人と私で3人で寝ています」
長女の向葵(ひまり)ちゃん(3)の子育てはこれまで、妻の遥さん(28)に任せっきりでした。
しかし今年10月、長男・飛羽(とわ)くん(1か月半)の誕生をきっかけに、このままではいけないと、真輝さん自ら教室への参加を申し込みました。
夫の真輝さん:
「今嫁がすごい大変なんですけど、やっぱり帰った時に、嫁が笑ってないというか…。子育てをして嫁が楽になって毎日が楽しく笑顔になってもらえるのがベストかなって」
■夫は「悪戦苦闘」、妻は「ひとときのリラックス」
真輝さんが講習したのは、半日で子育ての基本を勉強するプログラム。

夫の真輝さん:
「いやーホント、首が怖いです。本当にもう、頭支えないと息ができない感じがするので」
抱っこするのもままならず、何から何まで戸惑いの連続です。オムツ替えひとつとっても…。

野田院長:「そこから開けないで…」
夫の真輝さん:
「なるほど…本当に初めて感がめっちゃ出ちゃってますね」
野田院長:
「両足ぐっと上げちゃう人がいるんですけど、赤ちゃんはそれだと股関節に負担がかかっちゃうのでできれば、おしりをこうやって上げていただいて」

オムツを替えるのにも5分かかりました。
夫が奮闘しているその頃、妻は子育てからちょっと離れてリラックス。別の部屋で横になっていました。

妻の遥さん:
「家だと普段横になることもできないのでありがたいです。こうやって実際にレッスン受けてくれて、これからちょっと頑張ろうかなって(真輝さんが)言っていたので、来てよかったなと思います」
一方、夫は沐浴の練習、さすがは美容師、シャンプーするのはお手の物でした。
プログラムの最後は夫婦そろってのカウンセリング。

妻の遥さん:
「日中ですかね、やっぱりちょっと眠気が来ちゃうのか…」
野田院長:
「ならし保育が週に2回っていうのが、もしかしてつらいところなのかもしれないかなぁ」
子育ての悩みや困りごとをぶつけます。
■運営施設の院長「父親が育児に参加しやすい社会の理解を」
そして午後4時、6時間にわたる教室が終わりました。
夫の真輝さん:
「これからも笑顔満載の家族であれるように、サポートしていけたらなと思います」
妻の遥さん:
「気持ち的にもすごく楽になって、今日1日休めただけでもだいぶ違いますね」

野田院長:
「『結局はお父さんだな』って思うんですね。お母さんが産後に、すぐに育児・家事すべてをしなきゃいけないっていうのではなくて、もう少しお父さんが参加しやすい社会の理解っていうことが全体に必要かなと思っています」
産後ケアハウス『ははのわ』の「パパなる合宿」は、6時間コース(午前10時から午後4時・軽食付き)で1万3200円、1泊2日コースが3万9050円。父親が普段どれくらい育児をしているかによって、プログラムも組んでくれるということです。
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