これから市場の拡大が急速に進むとみられている、新時代モビリティ。中でもここ数年で広がりを見せているのが「電動キックボード」です。

 三重県鈴鹿市でたった5人の会社が開発を進めていて、この春ごろから町で見かけるようになるかもしれません。「ちょっとそこまで」が楽しい毎日になりそうです。

■たった5人の会社が開発…“公道OK”の『電動キックボード』

 風を切って、颯爽と進んでいくバイクのような乗り物。最近、日本でも見かけるようになった三輪タイプの電動キックボード。その名は「シャオメリ」。

試乗した外国人:
「いいね!楽しい!」

試乗した男性:
「結構楽しくて。乗りやすいね」


 三重県鈴鹿市の自動車工場「フヂイ エンヂニアリング」。従業員は5人、この小さな会社からシャオメリは生まれました。

 社長の藤井充さん(44)に開発のきっかけを伺うと…。

フヂイ エンヂニアリング 藤井充社長:
「もともとはうちの社員のエンジニアの子が、スケボーにバッテリーとモーターをつけて走って、趣味でやっていたんですね。それをみんなで乗ってみたりしているうちに、これは面白いねと。面白いんですけど、これ実際は公道を走っちゃいけないんですね。なので公道で走れるようにと」

「公道を走行できる」という実用性にこだわって、ウインカーやライト。

それに、クラクションなどを付け、道路交通法や保安基準に沿った設計にしました。

 最高速度は25キロ、1回の充電で20~25キロほど走行できます。普通自動車免許が必要で、販売価格は税込みで21万円です。

藤井社長:
「アクティビティ性が高く、乗って楽しいので、ちょっとした移動をこういうもので楽しんでいただけたらなと」

 実際に記者も体験すると、体感速度は思ったより速く、体重移動で曲がるため、操作に慣れるまで少し練習が必要だとわかりました。

スノーボードでゲレンデを滑るような感覚です。

■F1レーサーは道半ばで諦め…今は「人の力を何倍にもする」モビリティ開発に注力

 もともとは、F1レーサーを目指していたという藤井さん。資金が足りなくなり、道半ばにして夢を諦めましたが、それでも車に携わる仕事をしたいと、14年前に会社を立ち上げました。

 現在は、車の修理をする傍ら、モータースポーツのメッカ・鈴鹿市で、ホンダのレーシングチームからの仕事も請け負っていて、シャオメリのような新時代のモビリティ開発にも力を注いでいます。

藤井社長:
「人が乗るものを作るというのは責任も大きいんですけど、やっぱり動く喜びというのは、何ものにも代えがたい。モビリティがあることによって、一日で何十キロ何百キロ移動できるようになって、人間の力を何倍にもしてくれるデバイスなので、まだまだやれることはいっぱいあるんじゃないかと」

■資金は「クラウドファンディング」を活用…目標額は600万円

 シャオメリの部品の多くは中国から輸入していて、今回の費用は、インターネットで支援を呼び掛けるクラウドファンディングで募ることにしました。

藤井社長:
「やっぱり今、クラウドファンディングって、すごくいろんな方が見てくれる。こういう乗り物を認知いただくのに一番早い方法です」

Q.目標額は?
藤井社長:
「600万円です。(期限は)1/14まで。残り18日です(取材当時)」

 目標金額は600万円、スタートから一カ月半の昨年末、すでに559万円が集まりました。

 取材中、会社に突然の来客が…。

 神奈川県川崎市から出張で三重県を訪れたついでに立ち寄ったという男性は、クラウドファンディングでの支援者。試乗しての感想を聞くと…。

神奈川から訪れた男性:
「例えば家からたばこを買いに行くとか、美容室に行くとか、ちょっとした距離ですけど、車にも積めるので、出先でもまたちょっとどこか行くときに使えるのではないかな」

■春ごろからは公道で見かけるかも!広がる「電動キックボード」の可能性…国立大学との実証実験も

 年が明けて1月。この日、藤井さんが向かったのは、三重大学の工学部。4月から予定している、シャオメリを使った実証実験の打ち合わせです。

 シャオメリは、設定を変えることで、最高速度を調節することができ、公道と大学構内とで、最高速度を変えて使うことの「有効性」を確かめる実験です。

三重大学大学院 機械工学専攻 松井博和助教:
「モードを変えられることによって、こういうモビリティの領域が広がるんじゃないかということで、実証実験になるわけです」

 そして、クラウドファンディングの期限の1/14…。600万円の目標を上回る金額が集まり、最終的に724万円に。

藤井社長:
「目標が600万円だったので、大成功です」

 今後は、支援してくれた人にシャオメリを発送し、4月ごろから、街中で走る姿が見られそうです。

藤井社長:
「まったく終着点ではないです。やっぱり社会課題として、高齢の方の移動というのはクリアしていかなきゃいけないものでもあるので、僕らこうやって車作るとかモビリティを作るというところで仕事をしているので、そういうことを今後やっていきたいと思っています」