感染拡大が止まる兆しがありません。愛知県内で10日、新たに13人の新型コロナウイルス感染者が判明。このうち1人を
含む名古屋市の2人が死亡しましたが、市は死者の年代や性別などの概要について「法律で定められている」として明らかにしていません。

 10日、愛知県で新型コロナウイルスに感染した13人のうち、市内在住者に該当する10人について記者会見した名古屋市。

 10人のうち1人は昨日死亡。その後、陽性と判定されました。さらに、9日までに感染が判明していた71人のうちの1人も死亡したと発表しましたが…。

名古屋市の担当者:
「年代・性別につきましては、ご遺族のご意向により非公表とさせていただきます」

 亡くなった患者2人の年代や性別など、死亡した以外の事実を伏せた名古屋市。その理由について、感染症法の3条を持ち出しました。

名古屋市の担当者:
「感染症法の3条という法に基づいての部分なんですけれども『感染症の患者等の人権を尊重しなければならない』」


Q.遺族の意向と公衆衛生上の重要性を考えたら、知らせる方に重きをおくべきでは?

名古屋市の担当者:
「1例1例の年齢などを公表するのが本当に公衆衛生上の意味があるのかについては、1例では僕はあまり意味がないように思います。統計学的に、こういうデータが多いとかを集計しながら、全体として報告する方が公衆衛生学的にいいのではないかなと」

 公衆衛生よりも感染症法に規定される「人権の尊重」を重く見たといいます。感染症法にはさらに16条に、「情報を公表するにあたっては、個人情報の保護に留意しなければならない」ともあります。

 しかし一方で、「情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない」とも明記されています。

また、集団感染が発生した場所についても明らかにしていない点については「感染リスクがある人は健康観察対象者として把握できているため」としていましたが…。

Q.亡くなった人は健康観察の対象者ですか?

名古屋市の担当者:
「ではないです」

 亡くなった患者は健康観察対象となっていませんでした。

あいまいな発信を繰り返し、市民に届く情報も分かりにくくなるばかりの名古屋市。この対応に街の人は…。

70代女性:
「やっぱりシニアの方が多いと聞きますけど。私も持病があることですし、具体的に言ってほしいと思いますよ」

40代男性:
「風評被害を受けているジムさんもたぶんあると思うので、やっぱり全て公開してほしいですね」

20代男性:
「不安に思っている国民のひとりなので、情報は欲しいかなと思います」


 と、不満の声が目立ちました。新型コロナウイルスをめぐる一連の市の姿勢について、専門家は…。

専門家:
「感染者の情報は住民にとっても重要になってきますので、性別や年齢層あたりの情報はあってしかるべきだと思います。それが発表されることによって、個人情報や人権が損なわれるということは現段階では考えにくい状況です」

 これまでに感染した愛知県の99人のうち81人が名古屋の在住者。

名古屋市の担当者:
「一部(感染経路が)追えない方が出ています。市中感染が始まりつつある。市内のどこにおいても感染の可能性がある状態と考えて行動していただくのが大事かなと」

 「どこでも感染する可能性」と、“雑な発信”をする市の姿勢が問われています。