愛知県と三重県の県境で4月、立て続けに21件起きていた不審火。燃やされたのは、地域の人たちを見守るお地蔵様などでした。

 このうち2件に関与したとして、警察は34歳の男を逮捕。男はほかの不審火への関与をほのめかす供述をしていて、その動機は極めて身勝手なものでした。

住人:
「犯人が捕まってホッとしています」


別の住人:
「子どものお守り本尊に傷をつけるということは、許せませんね」


 13日朝送検された、三重県木曽岬町の人材派遣会社社員・杉浦忍容疑者(34)。

 4月7日、愛知県弥富市前ケ須町で、地蔵に火をつけて、お堂を全焼させた疑いのほか、

 神社の狛犬の前掛けなどに火を付けて燃やした疑いで、11日逮捕されました。

<杉浦容疑者の供述>
「水抜き剤をかけてライターで火をつけた」


 調べに対し、容疑を認めている杉浦容疑者。杉浦容疑者が関わったとされる2件のほかにも、4月3日から、愛知の弥富市・飛島村、三重の木曽岬町にまたがり、連続して不審火が発生。

 4月7日、弥富市稲吉2丁目の稲吉観音寺の敷地で地蔵の前掛けが燃やされた不審火では…。

(リポート)
「こちらの地蔵を燃やす犯行の一部始終を、防犯カメラは捉えていました」

 防犯カメラの映像には、1台の車が…。車から降りた不審な人物が手を伸ばした次の瞬間…突如、炎が上がります。

 その後、不審な人物は車に乗り込むと、そのまま逃走。わずか1分間ほどの犯行でした。

 さらにその15分後、東に400メートルほど離れた、秋葉寺の観音堂が全焼。

 弥富市と隣接する木曽岬町などではその後も半径2.5キロほどの範囲で、地蔵などが燃える不審火が相次ぎ、4月3日から7日にかけて合わせて21件にものぼります。

被害者の早川さん:
「着ていた服です、着物。これはうちが着せてあげますので」

 4月7日、地蔵を燃やされる被害に遭った弥富市の早川さん。無残な姿となった地蔵には、早川さんの特別な想いが込められていました。

早川さん:
「私の不注意もありまして、事故で四十何年前に1歳半の子供を亡くしたので。自分の子供と一緒ですので、毎日仕事をしながら今日も元気でやっとるかとか、その供養のために作ったお地蔵さんです」


 この周辺は1959年の伊勢湾台風で大きな被害が出た地域。

 町に点在する地蔵は、伊勢湾台風で命を失った人たちを偲ぶとともに、地域を守ってくれる存在として祀られたといいます。

早川さん:
「更生していただいて、またうちの前のお地蔵さんを通られましたら、手の一つでも合わせて帰っていただきたい」


 地域にとって大事な地蔵を燃やす罰当たりな犯行。

<杉浦容疑者の供述>
「社会に不満があった。ほかにもやった」


 動機についてこう話し、ほかの犯行もほのめかす供述をしている杉浦容疑者。

 杉浦容疑者は新型コロナウイルスの影響で、派遣の仕事がなかったということです。

 警察は防犯カメラの映像などから、ほかの不審火についても杉浦容疑者による犯行の可能性が高いとみて、余罪を追及しています。