■避難所での感染対策に…“プライバシー保護”のための間仕切り用段ボールの活用
 
新型コロナウイルスの感染リスクが消えない中、災害が発生したらどうなるのか。多くの住民が押し寄せる避難所で、いわゆる「3つの密」を回避しようと、自治体も動き始めています。

 防災倉庫に積み上げられた、避難所で使われる間仕切り用段ボール。15年間、訓練以外では一度も使われていないといいますが…。

豊橋市防災危機管理課の長坂さん:
「少しでも感染症のリスクを避難所で減らしてもらえないかと職員の中で考えまして、今後こういったものを使っていきたいと思います」

 元々はプライバシーを保護するためのものですが、避難所でのソーシャルディスタンスを確保する手段として、今注目を集めています。

 まもなく迎える梅雨、大雨シーズンを前に、急がれる避難所での新型コロナ対策。実は、すでに対策に迫られた自治体もありました。

■3月の大雨で避難指示出された北海道の街…“3密”どう防いだ?

 北海道東部の標茶町。

 今年3月、大雨で町は避難指示を出し、避難所を開設。当時、北海道では独自の緊急事態宣言が出されていて、感染リスクが心配されていました。

 密集を避けるため町は、長さ20メートル、幅1メートルのシートを用意。これに沿うように避難者を滞在させました。

 また、マスクを配布し、消毒や手洗いの徹底、換気といった対策を取り、避難所で感染者を出すことはありませんでした。

標茶町交通防災係・伊良子係長:
「前例がない、今まで感染症が流行している中での避難所運営は当然やったことがなかったのですが、避難所を開設するとなってから、非常に準備の時間が短かったので、精いっぱいの対応ができたのではないかと思います」

■新型コロナ対策踏まえ避難所の開設訓練…体調確認に3密対策

 岐阜県は5月、新型コロナ対策に絞った「避難所運営ガイドライン」を新たに取りまとめました。

 避難所の建物に入る前、全員の体調を確認。悪い人は専用スペースに誘導するなど、健康な人と完全分離することを明記。

さらに一般のスペースでも2メートルの間隔は確保するとして、避難所のレイアウト案まで示すなど、具体的な対応を各自治体に促しています。

 5月下旬に美濃加茂市で行われたのは、新型コロナ対策を踏まえた避難所の開設訓練。市の職員、およそ50人が参加しました。

(リポート)
「避難所の解説訓練が始まりました。いまスペースを作っているのですが、居住スペースは2メートル位ずつ空けている形となっています」

 段ボール製の間仕切りでスペースを確保。このスペースに2人が入る想定です。

 間仕切りのない避難所でも、スペースを確保するため、床にテープを張ってチェックします。

美濃加茂市防災安全課・長尾課長:
「園芸用の(2メートルの)ポールですけれども、半分のところで1メートルの印を付けまして(長さを測る)。2メートル×1メートルでお一人様分のスペースを確保できる」

 避難者の受け入れの手順も確認です。受付や誘導の職員は、フェイスシールドや手袋を着用。

 避難所を訪れた人は体調についてチェックカードに記入、そして検温です。体調に問題がない人は、避難所の一般スペースに誘導します。

 体調が悪い人は、個室に設けた専用スペースに誘導。動線を分けるなど、感染が広がらないための工夫です。

 順調に進んでいるように見えた訓練ですが、参加した職員からは…。

■環境,人,スペース…訓練で見えた課題

防護服を来た誘導係役の職員:
「蒸します。なんか汗が、この帽子取れない。今まだ5月ですけど、夏場になると不安がありますね」

避難者役の職員:
「(避難所運営に)人(職員)がたくさん要るなと感じました。受付もそうですけど、実際やろうと思うとこんなに人を充てられないと思います」

別の避難者役の職員:
「学校の体育館とか想定しているのでしょうけど、極端な話、集まれば教室まで借りなきゃならないような、そのぐらいのスペースがいるんだなというのは、やっぱり一番大きいかな」

 避難所での集団感染をいかに防ぐか、自治体も手探りの状態です。

 防災に詳しい岐阜大学の小山真紀准教授は、「台風や雨など、ある程度事前に予想できる際は避難の計画を立て、密集を避けるため避難所だけではなく、親族や知人の家ホテルなどへの避難も選択肢に入れることを検討すべき」と話していました。

 また、避難所での生活に備え体温計、マスク、消毒液、手袋等をあらかじめ準備するなどこの機会に必要なものは何か1人1人考えて欲しいとしています。