愛知県の県立高校で、休校期間中の授業の遅れを取り戻すべく、6月から「スタディサプリ」の導入が始まりました。どんなものなのか、実際に利用している生徒にも話を聞きました。

■授業の遅れを取り戻そう…愛知の県立高校が導入した「スタディサプリ」とは

 愛知県の県立高校で6月から導入された、リクルートの「スタディサプリ」というアプリ。動画に登場し授業を教えるのは、全てプロの予備校の講師です。

動画は長くても1本20分から30分。単元ごとに細かく分かれていて、国語、数学、英語、理科、社会の主要5教科・18科目、およそ4万本が見放題です。

また、講義に合わせてテキストも用意されていて、より理解を深めることができます。

 スタディサプリは8年前、個人向けに始まりましたが、最近では学校単位での利用も増加。高校は現在、全国およそ5000校のうち、半数の2500校が利用しているといいます。

さらに新型コロナ感染拡大後は、3カ月で600校以上の申し込みがあり、会員数は110万人に上ります。

■実際に使用している子供たちや親の感想は

 では、実際にどのように「オンライン学習」を使っているのか、受験生のお宅を取材させてもらいました。

中学1年生からオーボエを始め、プロの演奏家をめざしている麦沢さん。愛知県立明和高校の音楽科に通う3年生です。

県内の公立大学への進学を目指していますが、休校期間中はあまり勉強しなかったといいます。

麦沢さん:
「最初休みになった時は、ちょっと英単語覚えようかなとか、頑張ろうかなと思ったんですけど、結局大してやらなかったですね」

麦沢さんの母親:
「(Q.勉強をやっている感じは?)正直、一度も見たことがない(笑)。でも部屋でやってたかもしれない。受験生やで!受験生だからね!」

麦沢さん:
「やってたかもしれないぐらいで(笑)」

大好きなオーボエの練習ははかどったといいますが、それ以外の科目の勉強はほとんど進まなかったそうです。そんな彼女が、6月から「スタディサプリ」を使い始めました。

麦沢さん:
「すごい。(先生が)目の前にいるみたいな感じでサクサク進んでくれたので。テンポ良く最後まで、あっという間に聴けました。学校の授業で受けてみて苦手だったところとか、(理解が)イマイチだなってところを、(再生ボタンを)押すだけで何回でも見られるから、すごくためになると思いました」

一方、受験生の娘を心配していたお母さんも…。

麦沢さんの母親:
「すごく分かりやすくて。自分が授業を受けても分かるって思って。ちょっと学校の授業とは雰囲気違うよね、割と必要なことだけを言ってくれているんだなということがすごく分かったので」


一安心の様子。

今回の導入で愛知の県立高校に通う生徒は、通常・月額1980円(税別)のところ、無料で利用できます。(※通信料は別途かかります)

Q.お母さんの学生時代と比べると?

麦沢さんの母親:
「うらやましい、本当にうらやましい。私の時はインターネットで調べる(方法)もないですし、頼りは参考書。こういったものがある今の子たちは、すごく幸せだなって思う。すごい幸せだと思うよ、こういうの。もったいない、もったいない、使わないと」


麦沢さんと同じ明和高校に通う他の生徒も…。

3年生の女子生徒:
「(学校の)普通の授業だと1から100まで全部じゃないですか。スタディサプリでは分からないところだけ見られるので、そこがすごくいいなと思います」

別の女子生徒:
「倍速機能とかがあって自分のペースで見られるので、見返したりできるのは自分に合っているかなと思います」

■綿密な分析を元に動画の再編集など飽きない工夫 提供元のリクルート

 その「わかりやすさ」には、リクルートの戦略がありました。

リクルートの担当者:
「1秒ごとに視聴率のグラフを作っています。どこで視聴者が離脱しているのかを分析していて、例えば冒頭で『この授業の目的はー』とか『絶対合格するんだ!』という熱い思いを語ると、実はそこで一気にユーザーが離脱してしまって、視聴率が下がるということが起きてしまっていたので」


視聴データから動画を再編集したり授業を撮り直したりして、利用する生徒たちを飽きさせないように工夫していました。

■先生も感じる“仕事の在り様が変わる可能性”

 一方、学校側は…。

明和高校の先生:
「復習あるいは予習の部分で1週間に1課題程度、この動画を見たりこの問題を解いたりということを、スタディサプリを通して指示を出すようにしています」


学校としては、コロナの第2波、第3波により再び休校を余儀なくされた時にスムーズに利用できるよう、今は準備期間と捉えているようです。

今回のスタディサプリの導入で、先生は仕事の有り様にも変化が生まれる可能性を感じています。

明和高校の先生:
「どうしても(1クラス)40人に対して授業を展開していくと、全員をしっかり理解できるまで時間をかけるということが難しいところが実際にあります。『こういう(分からない)状態になったら、これ(スタディサプリ)を活用すると、この講座がいいよ』ということが言えると、新しい形が生まれてくると思います」