名古屋にある2つの老舗ホテルがタッグを組んでお弁当を作りました。テイクアウトはもちろんデリバリーもしていますが、その狙いを取材しました。

■名古屋の老舗ホテルが“お弁当”でタッグ

 国産牛のステーキに、本格的な中華料理の点心。

どれもおいしそうですが、すべてテイクアウトやデリバリー用です。作るのは、「ホテルナゴヤキャッスル」と「名古屋観光ホテル」のシェフたち。しかも共同作業です。その名も「シェフズキッチン」。

名古屋を代表する老舗ホテルが手を取りあった、デリバリーとテイクアウトのサービス。少々値は張りますが、他とはちょっと違います。

「名古屋観光ホテル」と「ホテルナゴヤキャッスル」。

名古屋観光ホテルは1936年、「名古屋にも国際級ホテルを作るべき」と、商工会議所などが中心となり誕生。

中部の迎賓館として、その役割を果たしてきました。

一方、「ホテルナゴヤキャッスル」の誕生は1969年。

名古屋城の目の前という好立地に加え、日本初だった展望エレベーター。

最上階には360度回転するバーなど、当時の最先端の設備を備え、広く知られてきました。

■人気メニューのアレンジや両ホテルで考案した特別メニューも

6月19日の午前10時。ホテルナゴヤキャッスルの厨房で、テイクアウトやデリバリー用の調理が始まりました。中には、名古屋観光ホテルのシェフの姿もあります。

名古屋観光ホテルのシェフ:
「だいたい2か月ほど前から来て、昼の間は一緒に手伝って弁当を作っています」


ランチメニューはレシピもコラボします。例えば、牛フィレ肉ステーキ弁当は…。

ホテルナゴヤキャッスルのシェフ:
「観光ホテルさんで人気商品のステーキ丼をこちらに持ってきて、お肉は名古屋観光ホテルさんがチョイスしたお肉を使って、ナゴヤキャッスルはソースでアレンジを少し加えまして、コラボしています」


その「牛フィレ肉ステーキ弁当」は2000円。

観光ホテルで人気だったステーキ丼のお肉に、ナゴヤキャッスルオリジナルの照り焼きソースをかけることで、双方の「いいとこどり」をしました。

和食の週替わりランチ。この日はみりん麹に漬け込んだ、キングサーモンがメインです。

ホテルナゴヤキャッスルのシェフ:
「やっぱりキングサーモンの脂が落ちるとすごく甘みがあってうまいので。みりんの麹と合わさるとすごくふくよかで、みりんの香りとちょうど合わさる感じ」

ご飯の上に高菜炒めと炙り明太子が乗る、「鮭みりん麹弁当」は2300円。

こちらも両ホテルのシェフがアイデアを出し合って考案しました。値は張りますが、双方が手掛けていると聞くと一度は食べてみたくなります。

しかし、なぜライバルがタッグを組んでいるのでしょうか。

ホテルナゴヤキャッスル広報担当者:
「ライバルのホテルですけれども、老舗ホテルということで客層は似ていますし、お互いのお客様にも知っていただけるということで、相乗効果を狙って始めました」


実は3年ほど前から、お互いのレストランで共同のスタンプラリーをしていました。

また観光ホテルで1番人気の「あんパン」をナゴヤキャッスルで販売したり、逆にナゴヤキャッスルで1番人気のパン「ボイゲル」を、観光ホテルで販売したこともあったそうです。

午前11時。デリバリーの担当者が弁当をホテルの紙袋に詰めていきます。

デリバリーの担当者:
「きょうの注文は牛フィレ弁当が9個です。お客さまはホテルの商品が安心に届くということと、ホテルの制服で届くということで、非常に喜んでいただいております」

ホテルマン自らがデリバリー、確かにちょっと豪華な感じです。

そして正午。ホテル1階のテイクアウト受付コーナーに男性が来店。

男性客:
「たびたびこちらのホテルを利用していまして、(コロナで)美味しい物を食べに行けないから、近くでやっていただければそれを利用させていただいて美味しくいただいています」


別の3人の女性はレストランでの食事の後、お土産用に注文していました。

女性客3人:
「主人(へのお土産)。ここで結婚式を挙げたんです」
「私は息子が(ここで結婚式)」


やはり利用者の多くは常連客のようです。

午後3時。中国料理「柳城」ではデリバリーの調理が始まっていました。

厨房の奥では香港から来た点心師が、ホテルオリジナルの点心を包んでいます。

本場の味が楽しめる「香港点心膳」(2500円)は、皮にカボチャを練り込みカニが乗ったシュウマイや、ホタテを包んだ蒸し餃子など、ナゴヤキャッスルオリジナルの点心が魅力です。

それをホテルマンがデリバリー用の保温バッグに入れ、配達に出ます。

■ロースにフォアグラ,トリュフも…高級ホテルらしい「殿様メニュー」は15000円

ちなみにこの「シェフズキッチン」のディナーには、なんと1人前で1万5000円もするメニューもありました。その名も「殿様ロッシーニ」!

これに、ハンガリー産の高級食材フォワグラ。ブランデーで香りをつけしたものをトッピングします。

さらに、トリュフや金粉まで。それを金ピカの丼に盛り付けます。まさに名古屋を代表するホテルならでは、名古屋らしい一品です。

しかし注文はあるのでしょうか?

ホテルナゴヤキャッスルのシェフ:
「毎日は入っておりませんが、特にGWにはよく(注文が)入りましたし、リピーターも結構みえます。5回も6回もという方もみえます」


毎週のように注文する常連客もいるそうです。

名古屋を代表する2つのホテルがタッグを組んだテイクアウト&デリバリー。そこには、老舗ホテルのシェフが手掛けるだけのことはある、確かな味がありました。

ホテルナゴヤキャッスルのシェフ:
「今までお互いに別々でやってきましたけども、相手のホテルはこういうやり方をするというのは非常に勉強になりますね、お互いに」

観光ホテルの広報担当者:
「これからもメニューの開発を続けてしばらくは続けていこうと思っております」