真夜中のお寺で起きたのは住職の仏心を踏みにじる犯行でした。そのあまりにも大胆な犯行の一部始終を、防犯カメラが捉えていました。

■悪縁断ち切る「縁切り寺」で相次ぐ賽銭泥棒被害

 映像が撮影されたのは、愛知県愛西市稲葉町にある「大法寺」。

470年の歴史があり、悪い縁を断ち切る「縁切り寺」として知られています。

 実はこのお寺では、以前から頻繁に賽銭を盗まれる被害に遭っていたといいます。しかし、本当に生活に困った人の助けになるのならと、目をつぶってきました。

大法寺の住職:
「必要な時もありますもんね、お金が。生きていくのが辛い時もありますから、そんな時には手をかけてもらってもいいもので」


■見て見ぬふりを続けてきた住職が警察に被害届を出した理由

 賽銭箱には、こんなメッセージが。

『賽銭箱に手をかけたあなたへ。どうしても必要な時はお地蔵様に手を合わせてください』

これまでは賽銭泥棒にあっても慈悲の心で見て見ぬふりをしてきた住職ですが、今回は警察に被害届を出し、防犯カメラの映像も公開することに。そこにはこんな経緯がありました。

大法寺の住職:
「あまりにも盗まれることが多かったものですから、今年1月に(引き出しを)開けたら鳴るようなブザーを入れたんです。そうしたら、2月にブザーの入った箱ごと盗まれまして」


防犯ブザーそのものまで盗むのはさすがに悪質だと6月、勝手に開けられないようにカギが付いた賽銭箱を新たに設置。

そのすぐあとの犯行でした。

■鍵をこじ開けられず…男が大胆な行動に

罰当たりな男が寺にやってきたのは、6月19日の午前1時前。

男が狙ったのが新しくなったばかりの賽銭箱です。

持っていたのはドライバーのようなもの。賽銭箱のカギをこじ開けようとしますが、思ったようには行かないようです。

その後は箱の周りをウロウロしたり引き出しを開けてみたりと、物色を続けることおよそ6分。こじ開けることを断念したのか、男は強引に賽銭箱を抱え、消えていきます。

大法寺の住職:
「壊せないことをみて、持ってっちゃいましたね。20kg以上あると思います。僕たちが持っても重たいですから。逆にこの執着はすごいですね」


 男は想像以上の重さで諦めたのか、賽銭箱は元の場所から30メートルほどのところに捨てられたように放置。

大法寺の住職:
「ここに、お線香とかろうそくが入っていて、これも全部出されていましたし、中の灰も全部、散乱していました」


少しでも軽くしようと思ったのか、中身が捨てられていました。

ただ、結局賽銭箱をこじ開けられなかったのか、カギはかかったままで賽銭の被害はありませんでした。

■それでも住職は「お寺でお待ちしております」

大法寺の住職:
「やっぱりお賽銭に手をかけるってよっぽどなことだと思いますから。一緒にお話しして、そして縁切りのお参りをして、一緒にご飯を食べてお菓子を食べたら、いろんなことが開けると思いますから。お寺でお待ちしています。」

 男は60代から70代くらいとみられていて、警察は窃盗未遂の疑いで捜査しています。