岐阜県を襲った記録的な豪雨から2か月あまりが経ちました。
 
 豪雨で多くの家屋や道路が被害を受けましたが、被災地の住民らは復興に向けて前に進み、自治体は新たな災害に備え、動き始めています。それぞれの再出発を取材しました。

■コロナの影響で休業 再開した矢先に…それでも店を続ける理由

 鉄板の上で香ばしく焼かれた鶏肉とキャベツ。岐阜県の郷土料理・鶏ちゃんです。

 下呂市の鶏ちゃん専門店「杉の子」。店主の斎藤順子さんは、およそ2か月ぶりの店の再開を特別な思いで迎えました。

斎藤さん:
「一からやり直しです。心も折れましたけど、やっと元に戻りかけたというか、冗談も出るようになりました」

 7月、岐阜県を襲った記録的な豪雨は、これまでに経験したことのないものでした。下呂市や高山市などに、大雨特別警報が 発令され、総雨量が1000ミリを超える地区もありました。

 増水した飛騨川の影響で国道41号線は、下呂市小坂町で崩落。JR高山線の線路にも土砂が流れ込むなど、交通の大動脈が遮断されました。

 全半壊の住宅は43棟。床上・床下浸水の住宅は300棟以上に。

 下呂市の「杉の子」にも、増水した飛騨川の水が流れ込み、床上60センチまで浸水。

 営業休止に追い込まれた「杉の子」は、新型コロナウイルスの影響で7月までの2か月間休業していて、営業を再開した矢先の被害でした。

 あれからおよそ2か月…。

斎藤さん:
「ここから向こうに落としごたつの座敷があったけど、全部取り払ってテーブルにしました。ちょうどここまで水が来ました」

 店内の壁も一部張り替え、コンロなどの調理機器を新調。さらに、新型コロナ対策でテーブルの間にパーテーションも新たに設置。

 被災したものの今のところ、行政などからの補助はなく、改修の費用はすべて自己負担。数年間店を続けてやっと返せるほどの額といいますが、それでも再開を決意したのは、支えてくれた地元の人たちや待っているお客さんのためです。

常連客:
「水に浸かった時は本当に心配したけど、これからまた賑わうといいですね」


愛知から訪れた客:
「じゃんじゃんお代わりして貢献します。また来ます」


 再び賑わいを取り戻した「杉の子」。

斎藤さん:
「頭が真っ白の中、手探りでしたので。本当に人のありがたさ、自分一人では何もできないので、みんながやって下さったということです。あとは頑張るだけです」

■人的被害なし…避難指示より前に独自で避難促した地区

 飛騨川も穏やかさを取り戻し、少しずつ日常に戻りつつある被災地。そんな中、豪雨被害を教訓に次の災害への備えを始めた住民たちがいます。

 飛騨川沿いにおよそ100世帯が暮らす、下呂市萩原町中呂地区。行われていたのは、自宅から避難所までの経路を確認する訓練です。区長の今井さんは、豪雨の際に学んだある教訓を住民に伝えたいと考えていました。

区長の今井さん:
「災害が今までの常識や経験が通じなくなっています。いち早く自分の身を守って避難してほしいです」


 それは「今までの経験にとらわれない素早い避難」。浸水被害はあったものの、人的被害がなかった中呂地区。実は今井さんらは、避難指示より前に住宅を一軒一軒周り、避難を促していました。

区長の今井さん:
「私たちは各家庭を訪問して避難を呼びかけたが、『避難しなくても大丈夫だと』と自分の経験から話される方が多かった。今までの経験が役に立たないことを力説させてもらった」

 教訓を生かした次の災害への備えが、着実に始まっています。

住民の女性:
「中呂でも被害があったし、みんな気持ちが1つになっていると思う」

別の女性:
「忘れはしないけど、いい加減になってしまって。普段から気を付けて用意するものは用意しておこうと思います」

■生きた画像で情報把握…被害や安否の確認に『ドローン』

 最新の技術を使った新たな備えを進める自治体もあります。

 清流・白川が町の中心部を流れる白川町。7月豪雨では飛騨川の増水で、そこに流れこむはずだった白川の水は行き場を失い氾濫。いわゆる「バックウォーター」と呼ばれる現象で、住宅25棟が浸水被害を受けました。

 白川町と協定を結んでいた町内のドローンスクールが撮影した空からの映像を見ると、浸水箇所がはっきりとわかります。

白川町役場の防災担当者:
「今までは写真や静止画になっていました。今回のメリットは、上空から全体像が見えて生きた映像になったことです」

 ドローンの可能性を感じた白川町は、この最新技術を使った新たな備えを模索し始めていました。

 ドローンが向かった先は、孤立集落を想定した広場。取り残された住民に空から声掛けをし、安否確認などを行います。

 あらかじめ録音しておいた音声をドローンから出し、それに反応した住民たちの様子を撮影。映像がリアルタイムでモニターに表示され、現場の状況が把握できる仕組みです。

ドローンスクールの校長:
「職員の方が災害後に調査に行きますが、危険な所に行かなくて済むのが一番大きいですね。スピード感ある状況把握だったり、撮影が可能になってきます」

 白川町とドローンスクールは、今後、ドローンを使った物資輸送や土砂崩れ現場の測量なども計画しています。

 未曽有の豪雨被害から2か月、復興や新たな備えに乗り出した住民と自治体。それぞれが少しずつ前に進み始めています。

※9月8日に放送したニュースです