2020年の夏、三重県志摩市の小さな港町に地元の食材を使ったバゲットサンドが人気の店がオープンしました。お店は県外から移住してきた3人の女性が営んでいます。彼女たちのこだわりとその思いを取材しました。

■地元の食材がたっぷり詰まったバゲットサンド

 三重県志摩市。市の全域が伊勢志摩国立公園内にあり、リアス式海岸をはじめ、海に緑にと自然豊かな地域です。

 近鉄の賢島駅から歩いてすぐ、目の前が海という絶好のロケーションに、志摩の食材を使ったバゲットサンドが人気のカフェ「カフェ エントラーダ」はあります。

 白を基調としたおしゃれなお店のショーケースには、10種類のバゲットサンドが並び、思わず目を奪われます。

志摩産のアオサをエサとして食べている「志摩あおさ豚」で作ったフランクフルト。

女性客:
「ボリュームがあって、食べ応えがある」


 ボイルしてから軽く焼いたフランクフルトは、パリッ、プリッとした食感と、しつこくないながらも旨味たっぷりの脂が食欲をそそります。

 卵サンドには、多気町の養鶏場から仕入れた平飼いの有精卵を使います。

黄身は箸でつかめるほど濃厚でコクがあり、海藻のアオサをたっぷり入れて、出し巻卵を作ります。

 卵のコクに、アオサの風味がいいアクセントに。ボリュームたっぷりですが、女性でもペロリといける味です。

 そのほか、松阪市の農園で収穫されたイチジクをクロワッサンにサンドしたイチジクのフルーツサンドや、地元の食材にこだわったドリンクなどが揃います。


■移住者同士が意気投合…一緒に店を開いた3人の女性

 このカフェは移住してきた3人が開いたお店です。そこにはそれぞれの思いがありました。

 名古屋市出身の森さんは、先に両親が移住していて、のんびりした空気や自然、おいしい食事があるので気に入って、4年前に移住しました。

 森さんのお気に入りは、目の前の海。志摩の豊かな自然に魅了されました。

 横山さんは東京・墨田区出身。夫の転勤で20年前に移住しました。子供のサッカーがきっかけでスポーツ栄養学を学び、その知識をメニューの考案に生かしています。

横山さん:
「東京は何でもあるんですけど、夫も子供もこっちに帰ってくると、やっぱり食べ物はおいしいって。外から来たからこそ、あなたたちの町の食材はおいしいだと、と伝えていけるのが私たちの特長」

 そして小椋さんは、滋賀県大津市出身。結婚を機に15年前移住しました。白あんに天然のパウダーで色をつけて象るフラワーケーキが得意で、教室も開いています。

 その特技を生かし、練りあんで花を作ったサンドイッチ「あんこのフラワーサンド」を出しています。

 3人は、県外からの移住者などの集まりで意気投合。森さんの「カフェを開きたい」という夢に賛同し、2020年7月、店を開きました。

女性客:
「この辺の食材を使っていてそれを食べるのも楽しみです。今までになかったお店なので、もっと広がるといいな」

別の女性客:
「地元産というのが、住んでいてもうれしいです」


■地元の人たちも歓迎…「着眼点すばらしい」「魅力が際立つ」

 彼女たちのことを、地元の食材を扱っている皆さんも歓迎しています。

さとうきびシロップを納品している女性:
「着眼点がすばらしい、伊勢志摩の食材を使って、若い方たちのアイデアで特別なものを作っているので」

地元の精肉店の女性:
「年々人口が減っていく中で、県外から来てくれて、光をさしてくれた。これに続いてたくさん若い人が来てくれたら、志摩もますます元気になってくると思います」

 店舗用の物件を、彼女たちに紹介した女性は…。

地域活性化の活動をしている女性:
「県外から来た人が志摩の魅力を発信してくれるのは、私たちが発信する以上に魅力が際立ちます」

 開店には地元の人たちの理解があり、開店してからもコロナの影響で県外からの観光客が少ない中、支えてくれたのは地元の人たちでした。

 地元の食材が詰まった絶品のバケットサンドを出す小さなカフェが、港町に活気を生みます。

横山さん:
「エントラーダはスペイン語で『玄関口』という意味です。私たちがやっているこの店を見て、若い人が色んなことにチャレンジしてもらえたらうれしいです」

 カフェ エントラーダは、名古屋から車で2時間半ほど、近鉄志摩線の終点・賢島駅から歩いてすぐです。