立ちはだかる壁に、またもはね返されました。5日、将棋の王将戦の挑戦者を決めるリーグ戦で、愛知県瀬戸市の藤井聡太二冠と、同じく愛知県の一宮市出身・豊島将之竜王が対戦。
藤井二冠がAI予測で99%勝利というところまで追い詰めていましたが、最後の最後で豊島竜王が逆転で勝利しました。豊島竜王の対藤井二冠戦は、公式戦6戦全勝です。
注目された王将のタイトル挑戦を決める5日のリーグ戦…。

藤井二冠は午前中からスーツの上着を脱ぎ、前傾姿勢で早々と戦闘態勢に…。
そして、注目の将棋メシは、両者とも将棋会館1階のレストランで注文。

レストラン イレブンの店長:
「藤井先生はキノコ類があかんから、たぶんロースとんかつかな。ハンバーグのソースにマッシュルームが入っているんで」
と店長は予想しましたが、藤井二冠が頼んだのは「ハンバーグと海老フライの盛り合わせ」。じっくり煮込まれたソースなので、苦手なキノコも大丈夫なのでしょうか。

そしてキノコよりも苦手にしているのが、5日の対戦相手、豊島竜王。ここまで公式戦5戦全敗。しかし5日は…。
解説者:
「おっ、腕まくりしましたね。後手(藤井二冠)がなかなかなもの。顔つきから見ると、少し自信がありそうな」
中盤から終始優勢に進めていた藤井二冠。そして対局開始から10時間…。AIはついに「藤井二冠99対豊島竜王1」。

しかし、藤井二冠の手が流れを変えました。
106手目に打った4四角で豊島竜王の「玉」を睨みますが、豊島竜王は返し技を用意していました。この一手に、藤井二冠の師匠・杉本昌隆八段は…。
杉本昌隆八段:
「この角そのものをちょっと軽視というか、うっかりしてしまったようなことを藤井二冠が後で言っていましたね」
解説者:
「豊島さん、生気が蘇ってきた感じです。だんだん(豊島竜王の)姿勢が良くなっているような」
豊島竜王が驚異の粘りを見せ、ついに逆転。
解説者:
「うわー、(藤井二冠)非常手段ですよ、これ。とてもいい手には見えない。これは恐ろしいものを見ましたね。これだけの大逆転、プロになってから初めて受けた洗礼って感じでしょ、公式戦で」
そして、悔しさがあふれたのか、膝を叩いた藤井二冠。
解説者:
「シャツ戻してますよ。投了の準備でしょ、これ。すごい大逆転でしたね、まだやっていますけども。これ一生忘れないでしょう」
対局からおよそ11時間がたった、午後8時56分。
藤井二冠:「負けました」
またもや、豊島竜王の壁を破れませんでした。

藤井二冠:
「そうですね、やはり実力が足りないのかなと思います」

豊島竜王:
「これからも成長されていく方なので、これからは厳しくなっていくのかなと思います」

対局後、一緒に名古屋に帰ってきた杉本八段は…。

杉本八段:
「珍しくというか、悔しそうな表情を隠さなかったですね。納得のいかない将棋を指してしまったという無念さが伝わってくる雰囲気でした」
豊島竜王(感想戦):
「銀ひかれても、ちょっとまずいかな」
藤井二冠(感想戦):
「あー強くやるんでしたか」

藤井二冠は、圧倒的な優勢からなぜ逆転されたのでしょうか…。
杉本八段:
「確かに後から見直すと、かなりミスが出ているんですよね。普通の棋士だったらよくある話ですけど、藤井二冠って本当に間違えない棋士なので、かなり珍しいなと思いました。将棋って逆転のゲームなので、終盤で一手前まで99対1で勝っていたのが、一手の悪手によってくるっとひっくり返る、本当によくあることですね」

そして、王将のタイトル挑戦の可能性は…。
杉本八段:
「王将リーグ2連敗となったのは、挑戦に向けては赤信号になってしまったのかなと思います」
藤井二冠:
「結構厳しいスコアになってしまいましたけど、最後まで頑張りたいと思います」