秋の行楽シーズン、例年は多くの観光客で賑わう世界遺産・白川郷は、今年はコロナの影響で訪れる人が減っていますが、少しずつ活気が戻りつつあります。感染対策をしながら奮闘する老舗旅館を取材しました

■少しずつ戻る賑わい…「GoToキャンペーン」頼みでない自治体の独自な取り組み

 10月18日日曜日。世界遺産・白川郷は、GoToキャンペーンの影響もあって観光客で賑わっていました。国の重要文化財・和田家を覗いてみると…。

男性客:
「白川郷二回目ですけど、秋の白川郷、いいと思います」

女性客:
「昔ながらの風景で、癒されました」

和田家館長:
「去年と比べちゃうと、やっぱりまだまだですが、一時の誰もいなかった時を思うと、本当にありがたい」


 和田家の館長は、観光客が戻ってきたことに安堵していました。

 にぎわいを取り戻したのは、GoToキャンペーンの影響だけではありません。

 村独自でも、キャッシュレスの支払いで、買い物や入館料などが、30%オフになるキャンペーンを始めました。

 例えば、人気の飛騨牛コロッケは、1個250円が175円に。

 行列ができるお蕎麦屋さんでも、かけそばセット1100円が770円、確かにうれしい取り組みです。

 しかし人口わずか1600人の白川村にとって、これはかなり思い切った出費ではないでしょうか。

白川村観光振興課の担当者:
「白川村は観光立村ですので、宿泊割引キャンペーンとQRキャッシュレス割引キャンペーンを展開することで誘客を考えています」

 白川村にとって観光業は生命線。独自に1億6000万円の予算を付けて、観光の活性化に力を入れています。

■老舗旅館の四代目「人と人との関わりのありがたさを感じる」…オンラインで広がる支援の輪

 建物は築130年以上。明治末期から続く、白川郷の中でも屈指の老舗旅館「城山館」。家族で営んでいます。

 宿の魅力はくつろげる造りに、飛騨牛を使った会席料理ですが、春先は予約が全てキャンセル。苦しい状況の中、家族が頼ったのは、クラウドファンディグでした。

 今年4月、四代目の松古卓也さんは支援者から資金を募り、苦境を乗り越えようと考えました。

 10月、宿泊者を4組限定から3組に制限してはいますが、GoToキャンペーンや自治体独自の取り組みもあり、週末は満室になるほど好調。出資を募ったクラウドファンディングの結果も上々のようでした。

松古さん:
「予想以上の目標額の倍ぐらいで、実はクラウドファンディング以外にも、直接お送り下さる支援の方もいて、本当に人と人の関わりのありがたさを感じています」


 目標の2倍、600万円ほどが集まりました。

松古さん:
「勇気を振り絞って前へ前へと進んでいく。無い知恵を絞りだしながら、一歩一歩進む。振り返ると、本当に、あの時立ち上がって良かったなと」

■新型コロナで高まったのは…“家族の絆”と“おもてなしの心”

 そんな城山館に、ある変化がありました。換気のために玄関に網戸を付け、カウンターにはアクリル板。さらに部屋には1台20万円以上する、オゾン発生器を設置。

松古さん:
「こんな古い明治からの建物です。だからこそ、お客さまに不安の無いように、新しい物を導入してコロナに負けないように」

 施設だけでなく、家族の気持ちも随分と変わりました。

女将の真紀子さん:
「次じゃなく、“今日この日を”って感じで、お客様に接するように心がけているし、毎日楽しく生きていきたいってコロナ禍の中で学ばせてもらいました」

次女:
「当たり前なことは一つもなくて、日々感謝だなって思います」

 苦しい時期があったからこそ、気付いたこともありました。

 そんな城山館に嬉しい知らせも…。来年2021年3月の予約が台湾から入りました。

松古さん:
「海外の方を中心に営業していたところもありますので、胸が痛みますが、1日も早い海外の方がお越しになられる準備をしていきたいなと思います」


 白川村は、村独自でキャンペーンを行っていて、宿泊は50%割引(5000円上限)、飲食や入場券などのQRコード支払いで、30%割引(3000円上限)になります。年内は実施する予定です。