「黒い煙を突き破り星空を見つける」そんな絵本のストーリーに、コロナ禍の中の自分たちの状況を重ねる若者がいました。
今週末に映画の公開を控え、話題となっている『えんとつ町のプペル』。原作の絵本の読み聞かせイベントが名古屋で開かれました。参加したのはコロナで活動の機会を奪われた高校生たち。
何かに夢中になりたい…。表現する場を求める若者を取材しました。
平彩葉さん:
「ハロウィンプペル。君はこんなところで何をしているんだい?」

愛知県瀬戸市の高校1年・平彩葉さん。読んでいるのは、黒い煙に覆われた「えんとつ町」で、星を信じる少年ルビッチと、ゴミから生まれたゴミ人間のプペルが黒い煙を突き破り、星空を見つけるまでを描いた絵本『えんとつ町のプペル』です。

平さん:
「コロナで、もう真っ暗というか、心の中は晴れない時が多かったりして、そういうところはプペルの世界と似てるかなって。高校生ってキラキラしたイメージがあったので」
絵本の世界と自分の置かれた状況が似ている…。この春高校に入学し、放送部に入って充実した毎日を送るはずだった彼女ですが、「文化祭がまず無くなっちゃったのが大きくて。毎年、朗読劇をやっていて、半年ぐらい練習していたので、発表したかったなというのはあるんですけど、無くなっちゃって」と表現の場を失っていました。

そんな時に飛び込んできたのが、絵本の読み聞かせイベントの話でした。
平さんの父親:
「本人もちょっと落ち気味のところもあったと思うんですけど、(読み聞かせ会は)すごくいい機会として本人も喜んでいるみたいで良かったなと思います」
本番2週間前。平さんと同じく、コロナで活動の場を失った演劇部や軽音楽部などの高校生たちが集まり、役を分けての合同練習です。

平さん:
「なんかもう凄い子が多くて、負けていると思いました。これから練習していって、本番には思いっ切り演技出来たらいいなと思います」
本来であれば直接会って練習したいところですが、コロナ禍とあって、その後はリモートでの読み合わせを重ねました。

そして迎えたイベント当日。

平さん:
「お客さんの前で生で発表するというのは、本当に今日が(今年)初めてぐらいなので、緊張もすると思うんですけど、しっかり伝えたい思いとかも表現できたらいいなと思っています」
会場は、名古屋テレビ塔の展望台。短い練習期間でしたが、希望を持つ大切さを子供たちに読み聞かせます。

平さん:
「ねぇプペル、『ホシ』って知ってるかい? この町は煙でおおわれているだろ?だからぼくらにはみることができないけど、あの煙のうえには『ホシ』と呼ばれる光りかがやく石っころが浮かんでいるんだ」
物語が終盤になるにつれ、平さんの声にもさらに気持ちがこもります。

平さん:
「プペル、ホシはとてもきれいだね。つれてきてくれてありがとう。ぼくはキミと出会えてほんとうによかったよ」

聞いていた男の子:
「楽しかった。お兄ちゃんとかお姉さんが『えんとつ町』の字読んでくれて、映画見たくなった」
聞いていた女性:
「すごく心がこもっていて、感動しました」

読み聞かせを終えた平さんは…。
平さん:
「みんなコロナで苦しい思いをしていたりとか、暗い気持ちになってしまったりとかあったと思うんですけど、今日の私たちの発表で明るい気持ちになってくださったのかなって思いました。先が見えない感じですけど、2020年の思い出を作らせていただいたので、とても感謝しています。私たちが星になれたんじゃないかなって思っています」