岐阜県中津川市の森の中にあるパンのお店「キュルティヴァトゥール」は、こだわりの製法で人気があります。
遠方からもやって来る常連客の目当ては、店主が作る昔ながらの食パンに、季節限定のアップルパイなど、見た目は素朴ながらも絶品のパンです。
■毎日食べるからこそシンプルに…外はパリパリ中フワフワ 素朴な見た目ながら客絶賛の食パン

岐阜県中津川市。緑に囲まれた湖畔に小さなパンのお店「キュルティヴァトゥール」はあります。

交通の便はよくありませんが、大勢の人がやってきます。絶賛のパンは、昔ながらの食パンに季節限定のアップルパイなど約30種類。見た目は素朴ですが、どれもおいしいと評判です。

店主の渡邊俊介さんは朝4時からパンを焼きます。

バケットにカンパーニュなど、低温熟成発酵でうまみを引き出します。

俊介さん:
「作るというよりは生地を育てるという感覚。酵母が発酵していくのを僕が手助けするような感じが好きですし、魅力かなと思いますね」

特にこだわるのは食パン。毎日食べるものだからこそシンプルに。飽きのこない味にしました。

女性客:
「皮はパリパリ、中はフワフワで、私は高いパンよりもここの食パンが一番おいしい」

また、この時期ならではの人気商品が、地元で採れたリンゴを使ったパイです。

使うのは、隣町・恵那産の紅玉という酸味の強いリンゴ。

クロワッサンと同じバターを練り込んだ生地で、甘く煮詰めたリンゴを包みます。

オーブンで焼くこと35分。

秋冬限定の人気商品アップルパイの出来上がりです。
■「他のパン屋さんにはない食感。ここが無いと困る」…8千円以上買う常連も

売り場を担当するのは妻の由三子さん。開店前は、パンの袋詰めに追われます。

開店後、続々客がやってきます。

岐阜県瑞浪市から通う常連の女性:
「美味しい。孫が待ちに待っているところです」
同・男性:
「大好きです、食感と甘さ」
孫と自分用にと、8000円以上も購入していきました。10年以上ここの食パンのファンという女性は…。
女性客:
「この食感は他のパン屋さんではないですね。ここが無いと困ります」

また、売り場の奥のカフェスペースでは買ったパンをその場で食べられます。

景色を楽しめるテラス席もあり、ドリンクやランチを楽しめます。

この日のランチは、トーストにチーズと目玉焼きをトッピングした「クロックマダム」(1320円)。

それと、フォカッチャの「テリヤキチキンサンド」(1320円)です。

愛知県大府市から来た女性:
「すごくいいロケーションで、気持ちいいです」

自然豊かな景色もごちそうです。名古屋からちょっと足を伸ばしただけで別世界。それにおいしいパンがあれば、格好のドライブスポットです。
■梁の太い木は解体された木造校舎のものを譲り受け…パンだけでなく店も手造り

お昼過ぎ、お客さんが落ち着いたところで、夫婦そろって休憩です。

名古屋で出会った2人。俊介さんは三重県熊野市出身。由三子さんは、中津川市の出身です。2人とも町ではなく、故郷で暮らしたい思いがありました。
そして13年前に、故郷の中津川でパン屋をやりたいという由三子さんの夢を叶える形で、店を開きました。

しかもパンだけでなく、この店舗の建物も2人の手作りです。由三子さんの父親が木工職人だったこともあり、手助けしてもらいながら、4年がかりで店を手造りで建てました。材料にもこだわりました。

俊介さん:
「この梁とか太い木は、小学校の木造校舎が解体された時に譲り受けたもの。こちらの檜の柱とかは、節が多い物を安く譲っていただいたり」

パンだけでなく、お店も手造りです。
■デンマークのコンテストで最優秀賞…休業中に生み出したクリームチーズが独自の風味のイタリアの伝統菓子

そんな2人が今最も力を入れる自信作のパンが、イタリアの伝統菓子「パネットーネ」です。

俊介さんが、9月にデンマークのクリームチーズメーカーが、2年に1度開くコンテストに出場。その焼き菓子部門に「パネットーネ」を出品し、見事最優秀賞に輝きました。

俊介さん:
「7年前に思いついていたんですけど、どうも納得いくものができなくてお蔵入りしていました」
生地に使う発酵バターからチーズの香りを感じたことから、さらにクリームチーズを合わせることで独特の風味を出すことに成功。

コロナによる休業中に、もともとあったアイデアから新しいパンを生み出しました。

最優秀賞に輝いた「ブ・ギル・ブロー(パネットーネ)」(1728円)。外はカリッと中はしっとりフワフワ。口に入れると、チーズのほのかな酸味を感じます。

緑に囲まれた小さなパン屋さんをのぞいてみたら、そこにはおいしいパンと、力を合わせてパン作りに取り組む夫婦の姿がありました。
由三子さん:
「“田舎だからこんなものでいいでしょ”っていうものじゃなくて…、そういうものを目指してやっていきたい」
俊介さん:
「今に満足するんじゃなくて、ゆっくりでいいので新しいものを作りながら、長くやっていければなと思います」
岐阜県中津川市の「キュルティヴァトゥール」は、名古屋から車で1時間ほど、中央道・恵那ICが最寄りです。