1月24日投開票の岐阜県知事選挙では、新型コロナ対策に加え「コロナの打撃を受けた岐阜の観光業をどう立て直すか」も争点の一つです。

 苦境に陥った観光業に携わる人たちは、次の4年を担う知事に何を求め、4人の候補者はそれらにどう応えようとしているのか取材しました。

 岐阜県下呂市。日本三名泉のひとつとも言われる下呂温泉ですが、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発令される中、観光客の姿はほとんどありません。

 個室露天風呂が人気の温泉旅館「紗々羅」(ささら)。

「紗々羅」の大前社長:
「ここが露天風呂付きのお部屋で、ヒノキ(風呂)です。(予約は)半減というか7割8割は溶けています(キャンセル)」


 社長の大前文夫さん、相次ぐキャンセルに頭を悩ませていました。

 政府の「GoToトラベルキャンペーン」で、去年秋ごろから客の予約が増えていましたが、本格的な第三波の到来、さらに緊急事態宣言の発令を受け、今や「開店休業」状態です。

大前社長:
「これがきょう現在の明日の予約です。これだけキャンセルになりました。とんでもないことになりますね」


 1月16日に宿泊予定だった客のリスト。年明け時点ではほぼ満室となっていましたが、最終的に9割ほどがキャンセルに。予約表には数人の名前しか残っていません。

大前社長:
「東京とか名古屋からはキャンセルばかりで大変だなこりゃ。コーヒー係もあまりたくさんコーヒー出せないね…」

従業員:
「早く来ていただかないと豆の消費期限が…」


 旅館内のカフェバーも終日休業。従業員の雇用は、助成金を利用してなんとか維持しています。先行きも見通せない中、次の4年を担う知事に求めるのは、「今」を乗り越える支援です。

大前社長:
「今がえらいんです。これから2~3カ月がえらいんじゃないんです。きょうがえらいんです。緊急融資を県独自で考えてもらって、並行して県独自のGoToキャンペーンを考えてくだされば非常にありがたいですね」


 新型コロナの感染拡大前、多くの外国人観光客で賑わいを見せていた岐阜県。

 観光庁によりますと、2019年に県内で宿泊した外国人観光客は166万人。2009年の15万人から、この10年でおよそ11倍に急増していました。

 外国人観光客に人気だった高山市は、新型コロナの影響でその姿はもうありません。

土産物店の店主:
「去年2月にインバウンドがなくなって、すごく売上は落ちました。それに追い打ちをかけるように、悪いことが重なっている状態です」

 高山陣屋前の人気の朝市も人影はまばら。

朝市に出店する女性:
「どうやって生活していくかということになるんですけどね…」


 普段は先が見通せないほど観光客で溢れていた「古い町並み」ですが…。

(リポート)
「歩いてみますと、こちらの土産物店、さらに隣にあります団子屋も店は閉まっています。このように、かなり観光地への新型コロナのダメージは深刻なようです」

 営業を続けていた煎餅店を訪ねてみると…。

手焼煎餅堂の橋本店長:
「かなり商品を処分しました」


 店長の橋本正明さん。店内には外国人観光客向けに作った案内が…。

 外国人観光客の姿が消え1年。次の4年を担う知事には、国内に目を向け岐阜の魅力をPRして欲しいと話します。

橋本店長:
「インバウンドに頼り過ぎていた部分も確かにあります。地域の魅力もそうですし、いかに国内の需要を喚起して、日本国内で日本人が観光で行き来できるようなこともしてもらいたい」

 すそ野の広い産業と言われる観光。新型コロナの影響は宿泊業だけでなく、運送、小売、金融など様々な業界に波及し、地域経済に与えるダメージは計り知れません。

 知事選の4人の候補者は、観光業をどう立て直す考えなのでしょうか…。

江崎さん:
「今この時だからこそ、地元の人たちが地元の魅力を味わうキャンペーンをやる、これに対しては助成しても全然構わない。リモートで魅力を伝える、潜在的な需要を掘り起こすチャンスです」

 元官僚の江崎禎英さん。観光業の立て直しに打ち出すのは、地元向けの宿泊キャンペーンとネットを使った魅力発信。飛騨牛や鮎といった地元の食材を中心に、岐阜の魅力をオンラインで伝えていくとしています。

稲垣さん:
「孫が6年生で京都・奈良の修学旅行に行けなかったのですが、代わりに高山の日帰り修学旅行をやって、すごく喜んで『さるぼぼ』を作って帰ってきました。岐阜県内でも岐阜県の良さを知らない方が沢山いる」

「今の時期こそ県内の魅力を再発見する時」と訴えるのは共産党推薦の稲垣豊子さん。県民が県内の観光地を巡るキャンペーンを展開する考えです。

古田さん:
「コロナが一段落したら、おそらく急速にインバウンドは日本でまた復活する。海外のフェアなどとオンラインでコンタクトを取って、いざという時に一挙にインバウンドに乗っていけるような、そういう準備を進めてV字回復につなげていきたい」

 現職の古田肇さんは、自身が推し進め大きな成果があったとする「インバウンド」の再建へ向け、海外との連携を強めていきたいと訴えます。

 このほかに立候補している元県職員の新田雄司さんは、近隣県と連携し新たな需要を掘り起こしたいとしています。

 未だかつてない苦境に陥っている岐阜の観光業。携わる人々は誰に一票を投じるのでしょうか。岐阜県知事選挙の投開票は1月24日です。