東海地方ではおなじみの、アルミホイルに白と緑の紙で包まれた持ち帰り用のお好み焼き。このお好み焼きの元祖といわれるお店で聞いてみると、きっかけは、当時流行していたハンバーガーがヒントで生まれたことがわかりました。

■冷めないようにアルミホイル 緑の薄紙は食後に口を拭くため…合理的に包まれた東海地方のお好み焼き

 寒いこの時期に、特に人気のホイルに包まれたお持ち帰り用のお好み焼き。東海地方の人には、お馴染みの食べ物です。

 名古屋の伏見にあるテイクアウト専門店の「大潮屋」には、みたらし団子や大判焼きと同じく、定番メニューとしてお好み焼き(250円)も置かれていました。

 特徴的なのはその包み紙。焼いたお好み焼きを折り曲げて、アルミホイルと白い紙で包んでいきます。

大潮屋の担当者:
「アルミホイルは保温性ですね。白い紙はこのままだと熱いので。緑色の紙は食べ終わった後、口を拭いていただけます」


 まずは、お好み焼きの保温性を保つアルミホイル、そして手が熱くないように白い薄紙。最後に包む緑の紙は、食後に口を拭くためと、とても合理的な作りです。

 手で持って食べられる手軽さから、小腹が空いた時の間食で買っていく人が多いと言います。

男性客:
「近いのでたまに。この辺は昔から、スーパーとかでこんな感じで売っていたりとか」


 スーパー「ヤマナカ」のお惣菜コーナーでも、パック容器のスタンダードなお好み焼きの隣に、白い紙に包まれたこのお好み焼きが売られていました。

 同じく、アルミホイルと白い薄紙でくるんであります。名古屋市内の25店舗のほとんどで販売しており、平日には約200個、土日で約300個販売する人気商品です。

■広島お好み焼きの店長「全く別物」… “折り畳みお好み焼き” は東海地方で独自に発展

 東海地方では当たり前の、このスタイルのお好み焼きですが、他の地域にはないのでしょうか。

 名古屋市西区にある、広島お好み焼きのお店「じゃけん名古屋2号店」の、生まれも育ちも広島の店長に話を聞いてみました。

店長:
「あら銀紙に。名古屋のお好み焼きなんですね。見たことはない。広島では食べない」


 「初めて見た」と驚きの店長に食べてもらうと…。

同・店長:
「全く別物かなって…。広島のお好み焼きは、キャベツを蒸して甘みを出して、キャベツの良さを100%生かした甘さがなんともいえない美味しいところなので…」

 これはこれで美味しいけど、広島のお好み焼きとは“別物”とのことでした。では、その他のエリアの人から見たらどうなのでしょうか。

大阪出身の女性:
「お好み焼きなの?お洒落だねえ。へえ」

滋賀出身の男性:
「見たことはないです…。滋賀には無いですね…」


 どうやらこのお好み焼きのスタイルは、東海地方独特のようです。

■先代「お好み焼きも折り畳んで食べ歩けるように」…ヒントは40年前に流行りはじめたハンバーガー

 ルーツを探るために、名古屋市西区に発祥の店があると聞き、訪ねました。

 円頓寺商店街で昭和30年代から続く老舗の「甘太郎本舗」。地元の人たちから、長年親しまれてきたお好み焼き。そのスタイルはもちろんホカホカのお好み焼きを、アルミホイルと白い薄紙で包むものでした。

 店主の鈴木延久さんは、お好み焼きを折り畳むこのスタイルは、自分の母親の考案だと思うと話します。そこで、店主の母・鈴木多美子さん(85)に話を聞くと、このスタイルはある食べ物からヒントを得て生まれていました。

店主の母親・多美子さん(85):
「イメージはねハンバーガー。(お好み焼きを)折って包んで。その昔は新聞で包んでいたもんね」


 約40年前。円頓寺商店街で行われていた“七夕祭り”でお好み焼きを売っていた多美子さん。しかし、客はなかなか足を止めてくれません。その時ハンバーガーを食べ歩きしている子供を見て、ひらめきました。「そうだ、お好み焼きを折り畳んで、持ち歩けるようにしよう」。

 そこで多美子さんは、食べ歩きができるようにお好み焼きを折りたたみ、ハンバーガーのように紙で包んで売り出したところ、これが評判になり、いつしかお店の看板商品になりました。

 40年前はちょうど、東海地方の若者の間でハンバーガーが流行しはじめた時期で、街には食べ歩きの若者が、大勢あふれていて、それがヒントになったようです。

 今では東海地方で定着した、この気軽に食べられるお好み焼きは、円頓寺商店街の鈴木多美子さんのひらめきから生まれたものでした。