料理に添えられる菊の葉。彩りをよくする“つまもの”は会席料理などでは欠かせない存在ですが、その生産農家が危機に立たされています。

 全国で唯一の菊の葉の生産地、愛知県豊橋市の農家では、収穫した商品を捨てる、つらい現実がありました。

菊葉生産農家の柳田さん:
「菊の葉っぱと言いまして、主に『つまもの』で使われている葉っぱです」

 日差しを浴びて腰の高さほどに成長した菊の葉。人の手で丁寧に収穫していきます。苗から育てて2か月で収穫できるようになりますが…。

柳田さん:
「出荷できなかったやつを廃棄しています」


 出荷調整という名の廃棄。コロナがもたらした農家の厳しい現実です。

 会席料理などに添えられる菊の葉。つまものとして欠かすことのできない存在です。

 愛知県豊橋市にある料亭「高千穂」。刺身に添えられた菊の葉が料理を引き立てます。

高千穂会館の担当者:
「菊の葉は宴会料理には欠かせないものでして、刺身やてんぷらなどの添え物として使ったり。宴会需要が少なくなると、どうしても仕入れる数も減ってしまいますので」


 新型コロナの影響で、大規模な宴会は自粛。感染が広がり始めた去年4月以降は、予約が全く入らない状況が続いています。

高千穂会館の担当者:
「どこの宴会場さんでも菊の葉の需要はあると思いますので、やっぱり宴会が減れば当然、菊の葉も需要が減っていく状態になっております」


 その菊の葉、実は愛知県豊橋市が全国で唯一の生産地。シェア100%です。

 豊橋市内の温室を持つ農家の組合で、菊の葉を育てるグループのリーダーを務める柳田さんは、約600坪の敷地にある8つの温室で菊の葉を生産しています。

柳田さん:
「業務用なので、飲食店が時短営業とかになってしまいますと、軒並み注文が減ってしまって、1月のパーセンテージからいうと前年対比が21%、80%減ですね」


 苗の購入に始まり、水や肥料にかかる費用、温室栽培のため暖房費、さらに出荷できなくても収穫は行うため人件費も…。かかる経費は例年と同じです。

柳田さん:
「出荷できなくなったものはすべて廃棄しています。廃棄せざるを得ないです。もう悲しいですね、一言で言うと悲しいです。廃棄を初めてしたのはもう一年くらい前です。一年くらい捨て続けています」

 緊急事態宣言が出てからはほぼ毎日、廃棄する日が続いています。

 食べる事もできる菊の葉。美味しく食べられるレシピを提案して家でも食べてもらおうと考えていますが、販路の拡大にはつながっていません。

柳田さん:
「ピンチはチャンスじゃないですけど、今までは業務用一本だったところを、こちら側にも目を向けて販売していけたらなと思っております」


 緊急事態宣言下での飲食店の時短要請。その先にある生産農家。感染の抑え込みまでの時間が長引けば長引くほど、苦境に耐えきれなくなる農家が出てきます。

 柳田さんは、「普通に作ったものを出荷できる生活の日常を早く取り戻したいです」と話しています。