貧困や差別など世界が抱える様々な問題について、17の目標を掲げ、2030年までに達成しようという取り組み「SDGs(持続可能な開発目標)」。その目標の1つに「飢餓をゼロに」があります。
30年後に世界の人口は97億人となり、現在の2倍の食糧生産が必要となります。注目されているのが“昆虫食”です。
名古屋に本社を置く「敷島製パン」は、多くの人が普通に昆虫を食べる環境を、SDGsの目標でもある2030年までに作っていく計画を立てていて、2020年には食用コオロギを使って作ったバゲットやフィナンシェを販売するなど、未来の食糧問題を解決しようと取り組んでいます。
■100匹のコオロギを粉末状にして使用…パンメーカーが開発「コオロギ」のパンや菓子

名古屋に本社がある「敷島製パン」が2020年に販売したのは「コオロギのバゲット」(540円)と「フィナンシェ」(6個2160円)です。

インターネットで発売すると、わずか1時間で完売しました。このコオロギパンは専用ライン「未来食Labo」で作られています。
敷島製パンの開発担当者:
「完全に粉末状にしてあるので元のコオロギは想像しにくいかなと」

バゲット1本に約100匹分のコオロギパウダーが練りこまれています。使っているのは、昆虫食のベンチャー企業「フューチャーノート」が開発した、食用のヨーロッパイエコオロギのパウダー。

小麦粉、水、麦芽などと合わせ一晩かけて発酵させた生地を、焼きあげていきます。
(リポート)
「ちょっと酸味のある香ばしい香りがします。噛めば噛むほどエビやカニのようなうま味を感じます」

続いて、コオロギ30匹分を使ったフィナンシェ。黒い細かいつぶつぶが、コオロギパウダーです。

(リポート)
「ナッツのような味が。シャリっという食感が、アクセントになっています」
■創業のきっかけは“食糧難の解決”…その理念受け継ぎSDGsに取り組む老舗パンメーカー

去年、100周年を迎えた敷島製パン。大正時代に起こった米騒動による食糧難の解決が、パン作りの始まりでした。創業の理念を受け継ぎ、2年前からSDGsに本格的に取り組んでいます。

敷島製パンの担当者:
「未来の食糧難が迫っている、それを解決したいという思いがあって、いま昆虫食に取り組んでいます」
世界の人口は30年後に97億人となり、現在の2倍の食糧生産が必要となります。コオロギは、牛肉や鶏肉よりもたんぱく質を多く含んでいるのが特徴。

飼育にかかるエサは、牛の12分の1、水は52分の1、温室効果ガスの排出も少なく、環境にやさしい“未来のたんぱく源”と言われています。

敷島製パンは、多くの人が普通に昆虫を食べる環境を、SDGsの目標でもある2030年までに作っていく計画です。