2021年3月14日に行われた「名古屋ウィメンズマラソン」で、ランナーを先導する白バイの隊員を務めたのは、愛知県警交通機動隊に所属する長澤華乃巡査長とその妹の夢乃巡査の姉妹です。
白バイ隊員だった母親の背中を追いかけて、白バイの世界に飛び込んだ2人は強い風が吹く中、息ぴったりに先頭集団を誘導。子供の頃から抱いてきた夢を実現させました。
■大型バイクを操る2人の小柄な女性…白バイ隊は共に愛知県警所属の姉妹

2020年12月、名古屋市内の自動車学校で、愛知県警による交通安全の広報活動が行われました。中でも観客の目を釘付けにしたのが約300キロ、1300CCの大型バイクを操る白バイ隊員です。
6メートル間隔で置かれたパイロンの間を縫うように走る「スラローム」に、バイクで逃げる犯人役を目にも留まらぬ速さで追いかける「追尾走行」など。
大型バイクの免許を持つ観客の女性:
「なかなかあそこまでは操れないので。厳しい訓練の賜物だと」
別の観客の女性:
「細い小柄な女の人でも大きなオートバイに乗れるっていうことの感動。すごかったです」

愛知県警第二交通機動隊に所属する長澤華乃巡査長(25)。身長157センチと小柄ながら白バイ隊員になって3年が経ちます。
長澤華乃さん:
「白バイ隊員になりたいって思ってくれる人がいて、でも小さくて(諦めている)人に勇気を与えられたら」

華乃さんは、最初はバイクを起こすことも、エンジンをかけずに坂道をのぼることもできませんでしたが、訓練を重ねることでできるようになりました。

普段は、こうした交通安全の広報活動や交通違反の取り締まりなどを行っています。華乃さんの2歳違いの妹・長澤夢乃巡査(23)も、愛知県第一交通機動隊に所属する白バイ隊員です。同じ愛知県警ですが、所属する隊は異なるため、一緒に仕事をするのはこの日が初めてでした。

妹・夢乃さん:
「めちゃめちゃうまいです、お姉ちゃんの方が。私はまだまだなので」
姉・華乃さん:
「妹が(白バイに)乗れない時から見ていたので、すごく成長していてびっくりしました」
■母親がかつて経験したマラソンの先導役…背中追って姉妹で飛び込んだ「白バイの世界」

姉妹そろって白バイ隊員になったきっかけは1枚の写真…。そこに写る母・早苗さん(51)の白バイ隊員姿に憧れ、姉妹も同じ世界に飛び込みました。

そんな2人には、白バイ隊員として叶えたかった夢があります。それは「名古屋ウィメンズマラソン」の先導です。
姉・華乃さん:
「やっぱり白バイ隊員になったら一度は先導するのが、みんな夢じゃないかなって」
妹・夢乃さん:
「姉と一緒に先導している姿を、母親にも見てもらいたいなって」
2人の夢は約30年前、かつて白バイ隊員だった母が経験した「マラソンの先導」を姉妹そろって行うことでした。

姉・華乃さん:
「まさか妹と(先導役に)なるとは思ってなかったです。本当に小さい頃から憧れていたので」
今年、その夢が叶うことになりました。母の早苗さんは「本当に良い機会を頂いたので、しっかり先導してほしい」と2人を応援します。
■息ピッタリで臨むために入念な準備…姉妹そろって名古屋ウィメンズマラソンの先導役に

本番の2週間前の3月1日、「名古屋ウィメンズマラソン」で姉妹そろって先導をすることが決まった2人は、本番に備えて去年マラソンを先導した隊員と一緒に練習をしていました。

妹・夢乃さん:
「20メートルの間隔をランナーと保たなきゃいけないので、どの位の位置が20メートルなのかを(ミラーに)印をつけて」

先導中はランナーとの間に常に20メートルの距離を保ちながら、時速15キロから20キロのスピードで走り続けることが求められます。それに加え、沿道からの乱入者など万が一に備え、常に四方を確認しなければならないため2人の息が合うことが大切です。

姉・華乃さん:
「普段から(妹が)思ってることもよく分かるし、顔の表情だけで。本番も息ピッタリで臨みたいと思います」
距離感を確認した後、2人はスタート位置や路面状況などの確認のために、実際のコースを走ります。ポイントごとに会話を交わしていく2人、何やら楽しそうです。

姉・華乃さん:
「夢と警ら出とったら面白そう。パトとか」
妹・夢乃さん:
「絶対楽しい」

警察官は原則として親族で同じ警察署に配属されることはありません。そのため、姉妹で白バイ隊員として路上に出たのは、この日が初めて。

妹・夢乃さん:
「(一緒に仕事することは)2度とないと思うので、最初で最後だなって思います」
姉・華乃さん:
「絶対に失敗できないなと。夢見てきたことなので、しっかり噛みしめて走り切りたいと思います」
■後ろには5000人の女性ランナー…本番は最後まで安全で息の合った先導を見せる

3月14日「名古屋ウィメンズマラソン」当日の朝。2人は、バンテリンドームナゴヤから一気に駆け出す、5000人の女性たちを先導します。

強い風が吹く中、序盤から力強い走りを見せる松田瑞生選手を、姉妹そろって先導。22キロ過ぎから独走態勢に入り、一気にゴールを駆け抜けた松田選手を、安全に息ピッタリで最後まで先導しました。

母親の背中を追いかけて、2人で飛び込んだ「白バイの世界」。子供の頃から抱いてきた夢が実現しました。