今年の新入社員は、「オンライン授業」「大学祭中止」「前例のない就職活動」など、人生の節目に新型コロナに翻弄されました。

 しかし新年度を迎え、様々な制限により学生時代が不完全燃焼に終わった若者たちが、社会人として力強く一歩を踏み出す姿がありました。

■大学に行ったのは年に数回だけ…学生最後の年を「コロナで歪められた」

 4月1日、名古屋市熱田区のIT企業での入社式。緊張した面持ちの新入社員たちの中で、笑顔を見せる男性は名古屋大学出身の近森大輝さん(22)です。

 在学中の3月9日。近森さんは、約2か月ぶりに大学を訪れました。

 名古屋大学ではオンライン授業や、学内の立ち入り禁止などの対策を実施。対面授業も行われていますが、三重県川越町に住んでいる近森さんは県をまたぐ移動を避け、一貫してオンラインで参加しました。最後の1年間、大学に来たのは数回だけです。

近森さん:
「友達と直接会うことも難しい1年でした。この時期に日本一周しようって決めていたんです。バイトの掛け持ちをして100万円ためてってずっと考えていて…」

 日本一周の目標、そして友達との卒業旅行…。全てコロナで諦めざるを得ませんでした。近森さんは「学生としての最後の年を、コロナで歪められてしまった」と残念がります。

■5年ぶりに大学生の内定率90%割れ…就活へ与えた大きな影響

 そして、新型コロナは就職活動に大きな影響を与えました。

 コロナ対策で、就職説明会や面接は軒並み中止に。ほとんどの学生が人生で初めて経験する就職活動は、コロナで一層先が見えないものになりました。

 その不安は実際のデータにも表れていました。

 厚労省と文科省の調査によると、2021年3月に卒業した大学生の就職内定率は89.5%で、5年ぶりに90%を下回りました。下がり幅としてはそれほど大きくないものの、学生たちはそれ以上に苦労をしました。

 就職情報サイト・マイナビの担当者は、「通常だと、例年通りに就職活動をしていくが、コロナで全く前例がない状態となり、採用する企業側も混乱したため、かなり苦労したのではないか」と話します。

■「3年間しか通っていないような気分」…実感がわかない卒業式

 桜が満開となった3月25日、名古屋大学では卒業式が開かれました。密を避けるため、式典は学部別に時間を分けて開催。リモート会場も設置されました。近森さんも久々に友人と再会。

 長く会えなかった分、思い出話に花が咲きましたが、近森さんは「最後の1年は、ほとんど大学に来ることがなかったため、3年間しか通っていないような気分。卒業の実感がわかない」と話します。

■入社して思うこと…「潰された1年を社会人生活の中で取り返す」

 4月1日、近森さんの社会人としての最初の一日が始まりました。内定式もなかったため、この日4人の同期とも初めて会います。

 近森さんが入社したのは、熱田区のIT企業「ネオレックス」。企業の勤務管理をするタイムカードのシステムを手掛ける、社員47人のベンチャー企業です。まずは同期と挨拶。初対面のため、まだ会話も敬語です。

 そして入社式が始まりました。社員に囲まれて一人一人意気込みを語ります。

近森さん:
「たくさん考えて決めたので、人一倍ネオレックスに対する思いは強いと自負していて、その思いを仕事でも発揮したい」

 入社式が終わり、ランチタイム。よそよそしかった同期とも、徐々に打ち解けていきます。

 近森さんは「最後の1年がコロナで潰され、できないことがたくさんあったが、それを社会人生活の中で取り返していきたい」を意気込みます。