三重県の近鉄・伊勢市駅から西へおよそ2キロのところに宮川堤の桜があります。堤防沿い、およそ1キロにわたり600本のソメイヨシノが植わり、県内でも有数の桜の名所です。

 しかし、このソメイヨシノの大半は樹齢およそ70年の老木で、地元のボランティアが立ち上がり、街の誇りを守るために奮闘しています。

■桜の寿命は約70年…「桜を後世に残したい」宮川堤の桜を守る人々

 3月末、宮川堤公園の駐車場に、人が集まってきました。地元の人で結成する「中島学区まちづくり協議会」のメンバーです。ボランティアで清掃活動を行っており、この日は花見客に備え、公園内の駐車場の整備をしていました。

 協議会のメンバーにとっても、街の人にとっても、地元の誇りである宮川堤の桜並木。これまで、大切に守ってきましたが、ある深刻な問題を抱えていました。大半が老木のため、枝が折れるなど弱ってきているのです。

 一般的に、ソメイヨシノの樹齢は70年から80年ほど。宮川堤の桜の多くが樹齢およそ70年で、寿命が近づいています。河川法により新しい桜を河川敷内に植えることはできないため、今ある桜をどのように守っていくのかが、喫緊の課題です。

■樹木医「適切な手入れで寿命延ばせる」…新芽を育て古い木から新たな木へ

 そこで2年前、「宮川堤桜再生プロジェクト」を立ち上げました。資金は全国的にも珍しい桜の再生を目指すクラウドファンディングで集めました。

 桜の手入れは、鈴鹿市在住の樹木医・中村昌幸さんに依頼。中村さんによると、幹に腐りが入るなど弱ってきているものの、適切に手入れをすることによって、寿命を延ばすことは可能といいます。

 2020年は4本、2021年も4本と、少しずつ再生処置を施しました。根が元気にならないと、幹も枝も元気にならないため、根の周りの固く踏みしめられた土を特殊な機械で取り除き、肥料を入れて土をかぶせました。

樹木医の中村さん:
「これが根本から出ている今年出た新芽。これがどんどん栄養を吸収し、古い木から新しいものへ再生させる」

 芽が成長すれば新しい木として成長します。この小さな芽が新たな希望です。中村さんは「桜を後世にまで残せるのが一番うれしい」と話します。

■散り始めると桜吹雪に…ベストスポットは堤の小径の『桜のトンネル』

 そのプロジェクトを先頭に立って進めるのは、中島学区まちづくり協議会の竹内正幸会長です。竹内さんの一番のお気に入りスポットは、満開時に両側から垂れかかる枝が、桜のトンネルを作る堤の中の小径。散りはじめると桜吹雪で素晴らしい光景になります。

 竹内さんらが切望する宮川堤の桜の存続。そこには「たくさんの人に来てもらい、我々の地区を知ってほしい」という思いがありました。