愛知県の大村知事へのリコール運動を巡る署名偽造事件で、ついに容疑者が逮捕されました。

 警察は19日、リコール団体の事務局長ら4人を逮捕。なぜ大規模な署名偽造が行われたのか、その真相は解明されるのでしょうか。

(リポート)
「次男の田中雅人容疑者が自宅マンションから出て、愛知県警の捜査員に連れられ、警察車両へと乗り込みました」


 大村知事へのリコール運動を巡る署名偽造事件で、警察は19日、偽造に関わったとしてリコール団体の事務局長・田中孝博容疑者(59)、妻のなおみ容疑者(58)、次男の雅人容疑者(28)、それに団体の会計担当・渡辺美智代容疑者(54)の4人を逮捕。

 強制捜査開始から3カ月…民主主義の根幹を揺るがす署名偽造事件は、大きな転機を迎えました。

河村名古屋市長(去年10月):
「大村知事リコール署名、ちゃんとやってってちょーよ」

高須院長(去年10月):
「ここで最後の署名ができます。ぜひお願いします」

 去年8月から10月にかけ行われた大村知事へのリコール署名活動。その発端は2019年の「あいちトリエンナーレ」です。

 企画展「表現の不自由展・その後」で、慰安婦問題をテーマにした少女像や昭和天皇の写真を燃やす作品が展示されると、主催した愛知県への批判が殺到。

座り込みを行う河村市長(2019年10月):
「陛下への侮辱、許すのか~!」

高須院長(去年6月):
「愛知県民にとって恥ずかしい。県民に現実を知っていただいて、改めて判断を仰ぎたい」

 高須クリニックの高須克弥院長や河村たかし市長らが中心となり、大村知事へのリコール運動へと発展しました。

 しかし去年12月、提出されたおよそ43万5000人分の署名のうち、選挙管理委員会に8割以上が「無効」と判断されました。東海テレビの記者が、実際に署名簿に名前が載っていた人を訪ねてみると…。

署名簿に記載された人:
「この筆跡には全然覚えがないですね。書いてません」

別の人:
「(記載された名前は)私ですけど、字が違うな」


 署名偽造疑惑が発覚したのです。

 署名偽造は愛知県から遠く離れた佐賀市で行われたとみられます。署名を書き写すアルバイトをしたという男性は…。

アルバイトの男性:
「『愛知県のリコールします』と書いてあり、そこに100人近くの人間がもくもくと作業していて、行った瞬間おかしいなと思いました。名簿の束が置いてあって、転記する用の名簿があって、そこに名簿を見ながら書き写すようにと指示がありました」


 男性は人材紹介会社からの案内で、時給950円で書き写しの作業に参加したといいます。

アルバイトの男性:
「(署名を)書くところが10カ所くらいあるんですけど、なぜか指示が『7~8人までにしてくれ』と。10人埋まっていたら怪しいと思われるからでしょうね。それで『7人とか8人くらいまでにして書いてくれ』という指示がありました」


 署名偽造疑惑発覚後、リコール団体側は…。

高須院長(今年2月):
「明確に何の関係もありません。もしやるんだったら、もっと堂々と大がかりにやります。みんながアッと驚くような、ホントに貧乏くさい」

田中事務局長(今年2月):
「佐賀の状況の中で今、田中が行ったのかどうか、行っていません。具体的に指示をしたか、知りません。佐賀の業者がどこか、知りません。発注書出しているか出していないか、出していません。契約もしていません」

 警察は地方自治法違反の疑いで、提出された署名簿を押収。リコール団体の事務所があった建物に家宅捜索に入るなど、捜査を進めてきました。

 そして19日、逮捕されたのは事務局長の田中容疑者ら4人。4人は去年10月、アルバイトを動員して大量の署名を偽造した地方自治法違反の疑いが持たれています。

 これまでの関係者への取材で浮かび上がってきた署名偽造の構図です。 リコール団体は高須院長がトップ、河村市長が支援する形で活動していました。

 今回逮捕された田中容疑者が、名古屋の広告関連会社におよそ470万円でアルバイトを発注したとみられています。その後、下請け会社のポスティング会社を通じてアルバイトを募集。佐賀市に集められたアルバイトが書き写しをしたとみられます。そして、妻のなおみ容疑者や次男の雅人容疑者は、その現場に立ち会っていたとみられます。

 警察は4人の認否を明らかにしていませんが、逮捕前の取材に対し4人は次のように話していました。

田中容疑者(4月27日):
「否認はしない、僕はカンモク(完全黙秘)です。だって警察に罪作らせたらいかんじゃん。調書つくって、彼らは一つのロジックにはめていきますよ。だけど、裁判でひっくり返して勝訴したらどうするんですか」

次男の雅人容疑者(5月13日):
「お前らにしゃべることない、帰れ。(Q.リコールに関与はありましたか?)…。二度と来るなよ!わかったか?」

 別の日には…。

Q.お聞きしたいのは、リコールの関与があるのかどうかです。あのハイエースで佐賀に行ってますよね?

次男の雅人容疑者(5月17日):
「ふはははは!そうか、へぇ~、そう?何を根拠に言ってんの?(タバコを記者の方へポイ捨てする)」


 妻のなおみ容疑者は…。

妻のなおみ容疑者(5月14日):
「迷惑なんで、どうして会社まで来るんですか?」

 会計担当者の渡辺容疑者は…。

渡辺容疑者(今年3月):
「(Q.リコール署名偽造は全く関係ない?)ないです」


 別の日には…。

渡辺容疑者(5月14日):
「(Q.いつだったらお話聞けます?)時が来たら。ごめんなさい、その件に関しては時期が来たら」

「時が来たら」話をすると、笑顔で約束していました。

 今回の逮捕を受けて、リコール団体のトップ高須クリニックの高須克弥院長も、電話で取材に応じました。

高須院長(電話):
「去年から『自分は真っ黒黒だ』って、『逮捕される』って言い続けてますから、田中さんは。なぜ今頃なんだろうなと思って。逮捕は驚きません」

河村名古屋市長:
「これでちゃんと全容が明らかになって、河村さんは本当に(事件への)関与が全くなかったんだということがはっきりすると思いますよ、これで。ぜひ事務局の皆さんには本当のことをしゃべって欲しいと」

大村愛知県知事:
「全ての活動の起点が河村氏の発案で始まったことでありますし、その成れの果てが、この偽造・捏造・犯罪行為でありますから。首謀者であり、河村氏が主導者でありますから、責任を取るべきだと」

 警察は19日、4人の関係先を一斉に捜索。署名偽造事件の全容解明を進める方針です。