2020年7月、岐阜市で不倫相手と再婚するため妻を殺害し、遺体を川に捨てたなどの罪に問われている男の裁判は、5月28日に判決が言い渡されます。裁判のこれまでの経緯やポイントをまとめました。

 岐阜市の稲見勝利被告は去年7月、自宅で妻の美紀さんを殺害し木曽川に遺体を遺棄。その後、離婚届を偽造して市役所へ提出したなどの罪に問われています。

 5月17日に開かれた裁判員裁判の初公判で、稲見被告は「ベルトで首を絞めたことは間違いありません。手では絞めていません」と話し、起訴内容を概ね認めました。

 稲見被告は当時、岐阜市内で清掃員をしていて、取材では近所の人から「真面目で人柄はいい」という声があった一方、被害者の兄の意見陳述では、スキー場で拾ったゴーグルやスポーツクラブで拾ったとするシューズを、オンラインのフリーマーケットで売ったりしていたといいます。

 検察によると稲見被告は2年前、別の男性と婚姻関係にあった不倫相手と交際を始めます。2か月後、殺害された妻に発覚しますが、その後も不倫相手との交際を続けます。

 不倫相手は当時の夫と離婚し、被告に妻との離婚を迫りました。被告は離婚を申し出たものの拒否され、ケンカが絶えなかったということです。

 そして去年7月末、ベルトで妻の首を絞めて殺害し、木曽川へ遺棄。殺害後、妻の記入欄を偽造した離婚届を岐阜市役所に提出していますが、受理はされませんでした。

 被告は殺人、死体遺棄、有印私文書偽造などの罪に問われて、おおむね認めていますが、主張が一部異なる点があります。

 弁護側は「被告は不倫を追及される生活がほぼ毎日続き、心身ともに疲弊していた。事件当日、被害者に何度も『殺して』と言われたため、今までの苦しみから解放されると思い突発的に殺害した。殺害方法は、ベルトでのみ首を絞めた」と主張しています。

 検察側は「不倫相手から『離婚しなければ別れる』と迫られ、離婚に応じない被害者への殺意が芽生えていた。被害者は復縁を望み周囲にも相談をしていて、本当に『殺してほしい』と望むはずがない。殺害方法は解剖医の証言から、ベルトだけでなく手でも首を絞めた」と主張しています。

 この裁判について牧野太郎弁護士に伺うと、「ベルトだけでなく手でも首を締めたのか?」がポイントになるといいます。

 ベルトで絞めただけと比べて、手で絞めた後にベルトで絞めたとなれば、「相手が死亡する危険性がより高い行為」をしている認識があるため、「より強い殺意」が認められることになります。手で直接首を絞めたことが認められた場合、刑が重くなる傾向があるということです。

 判決は5月28日に言い渡されます。