中国で2年に一度開催される、世界最大規模の「上海モーターショー」。4月に開催されたショーを埋め尽くしたのは、各社が力を入れる最先端のEV=電気自動車です。
中でも注目は、開発が進む中国メーカーのEV。中国のテスラと呼ばれるメーカーの最先端のEVから、機能を最小限に絞った48万円の格安EVまで。中国では今、テスラに追いつけ追い越せとEVの開発が進んでいます。
■上海モーターショーの潮流は各国の自動車メーカーが開発進めるEV

「世界一クルマが売れる国」の存在感が増す中国で開催された上海モーターショー。世界的な脱炭素の流れの中、中国でも2035年までに新車販売の50%以上を新エネルギー車とする方針が示されていることもあり、各社がアピールに力を入れたのはEV=電気自動車です。

トヨタは、SUVタイプの電気自動車を世界初公開。ホンダも、中国で2022年に発売する新型EVを発表しました。

しかし、中国はすでに日本や欧米のクルマを買うだけの国ではありません。EVの世界最大手のアメリカのテスラは上海に工場があり、中国でもとても人気がありますが、中国の自動車メーカーは今、そのテスラに追いつけ追い越せと新型EVの開発を進めています。
■充電式でなく交換式のバッテリー…『中国のテスラ』と呼ばれる企業の戦略

「中国のテスラ」と呼ばれ、実力派として注目されているのが2014年創業の「NIO(ニオ)」です。一番の売れ筋は、5人乗りSUV「es6」。

価格は日本円でおよそ600万円からと高級路線で、車内にはテスラにも似た大型のタッチパネルが設置されています。ただ、注目はこうしたスマートなデザインだけではなく、その利便性です。

EVは、ガソリン車に比べて充電時間がかかることが課題の一つですが、NIOのEVは「充電式」ではなくバッテリーそのものの「交換式」です。
通常の充電も可能ですが、中国国内に200か所ある専用のバッテリー交換ステーションに車を持っていけば、フル充電されたバッテリーに、わずか3分で交換ができます。

ユニークなのが、月額1万6000円の「サブスク」サービス。月6回までバッテリー交換ができるほか、バッテリーを買うのではなくレンタルにすることで、クルマ本体の価格も120万円ほどお得になります。
NIOの担当者は「私たちの車は、テスラより平均して250万円高く市場が異なるので、中国のテスラとは言われたくありませんが、テスラと一緒にEV市場を発展させていきたい」と話します。
■最も売れている「人民の足」…約48万円の小型格安EVは機能もコンパクト

最先端で高価格帯のEVが開発される一方で、中国で今、最も売れているのが小型の格安EVです。
2020年の秋以降、中国で一番売れたEVは、上汽通用五菱汽車の「宏光(ホングヮン)ミニEV」です。その価格は廉価モデルで、日本円でおよそ48万円。車内のデザインもいたってシンプルで、キャッチフレーズは「人民の足」です。

「安かろう、悪かろう」という不安もありますが、実際に試乗してみると…。
(リポート)
「そこまで運転席に圧迫感は無い感じがします。確かに電気自動車なので静かですが、走っている感じは意外としっかりしている印象です。すごく加速がいいというわけではありませんが、アクセルを踏み込む割とすぐに時速50キロくらいに達しました」

これで十分とも感じる性能、これで48万円という安さの理由は「割り切り」です。通勤や買い物など、まさに「中国人民の足」として使えるよう、最も低価格のモデルで航続距離は120キロ。電池も低価格のものが使われ、急速充電には対応していません。

販売する企業の担当者は、「長い距離や必要以上のハイテクは不要。目標はこのミニEVを世界に広げ、『世界の人民の足』にすること」と意気込みます。
格安から最先端まで…。持ち味でもあるこの「思い切り」と「割り切り」で、中国のEV開発が進んでいます。