硬貨を入れレバーを回すと、カプセル入りの玩具が出てくる「ガチャガチャ」が、再びブームとなっています。

 子供向けのものだけでなく、大人の女性をターゲットとしたミニチュアの観葉植物や、飲食店に置かれている卓上呼び出しボタンなどユニークなものまで登場するなど、より魅力的に進化しています。

■市場規模は10年で1.5倍に…大人もハマる「ガチャガチャ」ブーム再燃

 正式には「カプセルトイ」という「ガチャガチャ」は、子供の人気はもちろん、大人の間でも今ブームが再燃しています。専門店が続々とオープンし、市場規模はここ10年で1.5倍、およそ400億円にまで膨らみました。

 ガチャガチャの台は、全国におよそ60万台あるとされ、その数は郵便ポストの3倍以上といわれています。

■人気のカプセルに入っていない「カプセルレス」のガチャガチャ

 東海地方で最大規模のカプセルトイの専門店「カプセルハウス大須店」(名古屋市中区)には、400台のガチャガチャが並びます。最近はカプセルに入っていないものも人気といいます。

 玩具メーカー「バンダイ」が出す「かめ02」(1回500円)。頭や手足を甲羅の中に入れることでカプセルが不要に。カプセルレスを実現しました。

 亀の骨格構造が精密に再現されていて、フィギュアとしてだけでなく、子供の自由研究にも生かされると人気です。

■出てきたのは直筆の「妹からの手紙」…様々なアイデア商品

 鳴り物系も人気です。例えば飲食店などのテーブルに置かれている「卓上呼び出しボタンコレクション」(1回300円)。実際に音も鳴り、リアルに再現されています。

「早押し!クイズボタン」(1回300円)などもあります。

 他にも、SNSで話題を呼んでいるのが、「妹からの手紙」(1回200円)。カプセルの中には、可愛らしく折りたたまれた色紙が入っていました。開くとそこには直筆の手紙が…。

(カプセルに入っていた直筆の手紙)
『おにいちゃん、ヒナはね。ヒナとの関係をリセットするべきじゃないかと思うんだ。ヒナは今でもおにいちゃんの事…』

 このような手紙が全部で6種類。手紙自体が年配には懐かしく、若い世代には新鮮で人気となっています。

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■「キン消し」ブームで一気にメジャーに…「ガチャガチャ」ブームの変容

「日本ガチャガチャ協会」によると、現在はガチャガチャの第4次ブームで、専門店がとても増えているといいます。

 国内に初めてガチャガチャが登場したのは、今から50年以上前の1965年、アメリカからの輸入でした。10円を入れ、ガチャガチャとレバーをひねると、カプセルに入ったおもちゃが出てくる、その斬新な仕組みが子供たちの心を掴みました。

 第1次ブームは1983年。「キン肉マン消しゴム」、いわゆる「キン消し」が爆発的にヒット。ガチャガチャは、一気にメジャーになり、価格も10円から100円に上昇。

 1995年には、ウルトラマンのフィギュアがフルカラーで登場し、第2次ブームに。2段式の台も登場し、価格も100円から200円以上に。この頃からガチャガチャは子供だけでなく、大人も熱中するようになりました。

 そして、2012年、第3次ブームが起きます。「コップのフチ子」が大人の女性を中心にSNSで話題となり、人気は爆発的に全国に拡大。累計2000万個が売れました。そして、現在…。

「日本ガチャガチャ協会」の会長:
「コロナの影響で(様々な業態の)店舗が閉まっちゃって…。その空き店舗にガチャガチャの専門店が増え、ここ最近ブームを引っ張っている気がします」

 機械を置くだけで人員をかけず運営できるガチャガチャの店舗は、コロナの影響で空いてしまったスペースに入居し、どんどん増えているといいます。

 商品そのものが進化し魅力的になったことに加え、専門店が増えた事でより身近となり、第4次ブームへ突入しました。

■「30~40代主婦・由美子・パート」…綿密にターゲット設定した商品開発

 ガチャガチャはどのように作られているのでしょうか。訪れたのは愛知県刈谷市のガチャガチャの製造販売を手掛ける「あミューズ」。

 行われていた商品の開発会議では、以前大ヒットした「三角ポーチ」の新バージョンについて話し合われていました。ホワイトボードには、「30~40代の主婦、由美子、パート」の文字が…。

「あミューズ」の担当者:
「商品を新しく作るときは、ターゲットをものすごく細かく設定して作る」

 
 年代はもとより、職業や名前まで細かく設定することでターゲットが明確になり、ヒット商品が生まれやすくなるといいます。例えば、ミニチュアの植物のターゲットは、「広告代理店勤務の20代女性のミカさん」。実際はどんな人が買っているかはわかりませんが、シリーズ化されるほど人気です。

「あミューズ」の担当者:
「ぱっと見の楽しさ、かわいさ、面白さがすぐに伝わるようなものじゃないと…。伝わるように努力をしています」


 こうして誕生した商品は30種類以上。商品化が決まると工場で製造。出来上がると、ほこりなどが残っていないか一つ一つ検品作業し、カプセルの中へ。「あミューズ」では、1商品につき3000~4000個を手作業で詰めています。

「あミューズ」の担当者:
「カプセルって色んな形やサイズがあって、機械化しにくい。最終的には人の手を介することが最も効率がよくなってしまう」

■ガチャガチャも電子決済時代…硬貨でなくQRコード対応の新機種

 今年、そのガチャガチャが、更なる進化を遂げていました。硬貨を使わないQRコードに対応した新しいガチャガチャ「PIPITガチャ」です。試行錯誤の末、今年ついにリリースされました。このスマホの決済サービスに対応した新機種ですが、敢えて残した部分もありました。

「あミューズ」の担当者:
「どんなに高度なシステムになっても、回すところだけはガチャマシーンの楽しいところなので残していければいいなと」


 ガチャガチャは「硬貨を入れるのではなくQRをかざして回す」。今後のトレンドになるかもしれません。

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