新型コロナウイルスの陽性が判明した東海テレビの30代の番組スタッフが、6日間にわたり療養施設での生活を記録しました。それは、施設内で全く誰とも接触しない完全に隔離された生活でした。(2021年5月25日に放送した内容です)

 その軽症者などを受け入れる愛知県の宿泊療養施設の利用率は、およそ3割と十分に活用ができていません。その背景には、施設へ入所者を運ぶ手段や手間取る部屋の消毒作業など、様々な課題がありました。

■コミュニケーションは電話と健康監察アプリのみ…全く人に会わない緊張感漂う療養施設

(施設内のアナウンス)
「昼の検温の時間になりましたので、体温と酸素飽和度を測定しアプリへの入力をお願いします」

療養施設で隔離生活を送る番組スタッフ:
「1日に4回このような検温を促すアナウンスがされます。一部のエレベーターのみ使えるようになっており、他のエレベーターは封鎖されています」

 東海テレビの番組スタッフが、入所した療養施設での生活を記録。5月6日、38.2度の発熱があり検査で陽性と判定され、倦怠感やせき込むなど軽症の症状が続きました。

番組スタッフ:
「私の場合、71歳の母と2人暮らしをしております。自宅では過ごしてはいれないなと思っていたので…」

 一見するとビジネスホテルの部屋ですが…。シャンプーなどの入浴用品やタオルなど生活用品は自前。洗濯機は無いため、数日分の着替えが必要です。

番組スタッフ:
「机の上には電話ですね。健康観察の電話が1日4回、看護師からかかってきます」


 看護師が常駐し24時間体制で容体の急変に備えます。コロナに感染すると軽症や無症状の人は、療養施設か自宅かを選んで10日ほどの療養が求められます。

 番組スタッフは、同居する母親が高齢のため、感染リスクを考えて宿泊療養を希望しました。療養施設は緊張感が漂っていたと言います。

番組スタッフ:
「異様ですよね、すごく。本当に人と会わないので。誰かが訪ねてきたりとか、検査をしますとかで人が入ってくることもない。コミュニケーションは電話と健康監察のアプリでとるので…」

■県内3か所の療養施設の入居率は3割未満…入所が進まない理由とは

 愛知県によるとビジネスホテルを借り上げた療養施設は、県内3か所で1109室。しかし利用されているのは、5月24日時点で327室と3割未満に留まり、十分な活用ができていません。なぜ、療養施設の利用率は低いのでしょうか。

番組スタッフ:
「タクシーのような車なんですけど、中に入ると運転席と後ろの席が完全に隔離されている状態。そうか、自分は大変な病にかかっているんだなということで、怖いなと」


 感染後、療養施設には県が用意した専用のタクシーで移動します。運転席と後部座席が完全に仕切られた特別仕様車です。愛知県は26台を確保し、一日最大130人運べますが間に合わないと言います。

 入所が進まないもう1つの要因が、清掃と消毒。清掃員と入所者の接触リスクを避けるため、同じフロアが全て空室になってからでないと作業をしないため、効率的な利用ができていません。

希望しても入所できるのは2~3日後。その間、家族への感染リスクが高まり、体調の急変に対応できないという課題もあります。

 名古屋市の新型コロナウイルス感染症対策室の担当者は、「隔離ができる宿泊療養施設は、増えている家族内感染を回避する効果があるため、待っている人のためにも、もっと稼働率を上げていきたい」と話します。

■各部屋からは激しい咳の音が…部屋から出られるのは食事を取りに行く時のみ

 厚労省も推奨している「宿泊療養」。隔離生活は一週間ほど続きますが、番組スタッフは安心だったといいます。

番組スタッフ:
「まず家族にうつさないということができるのは、すごくありがたい施設だなと思います」


 部屋を出られるのは、食事を取りに行く時に限られます。

番組スタッフ:
「こちらは水。水は1日2リットル必ずとるように言われています。お弁当や水などを取りに行く時に、結構激しめの咳をする人が色々な部屋から聞こえてくるんですよね。それは、ここは病院に準ずる施設なんだなと感じるところでした」

 愛知県では今後、専用タクシーをさらに10台増やし、施設を個室単位で消毒・清掃する方法を取り入れて療養施設の利用率を上げたいとしています。

番組スタッフ:
「今のところ、母が検査の結果陰性だったので、うつすことはなく今まで過ごすことができたのは、療養者施設にいたことも原因の1つかなと思います」