「第5波」を引き起こすといわれる変異ウイルス「デルタ株」、さらにデルタ株が変異した「デルタプラス」について、感染症の専門家に聞きました。

 愛知県豊明市にある藤田医科大学病院。重症者用ベッドの使用率は減少してはいるものの、岩田充永副院長によると新たな不安材料があるといいます。

岩田副院長:
「インド型・デルタ株ですね。これは感染力が第4波の主流になったイギリス型・アルファ株よりもさらに強い。第5波は必ずやってくる」


「インド株」や「デルタ株」など、変異ウイルスの名前は複雑ですが、当初は「イギリス」や「インド」など最初に検出された国や地域の名前で呼ばれていました。

 その後、WHOが「差別につながるので地域名を使わないように」と指示を出し、それ以降はギリシャ文字の頭からアルファ株、ベータ株と名付けました。

 その中で、インド株と呼ばれていた「デルタ株」が、今回注意しなくてはならないといわれています。

 従来株とデルタ株との違いについて、愛知県がんセンター病院の伊東先生に伺いました。

 まず感染力については、現在主流のアルファ株より感染力が強いといいます。

 スーパーコンピュータ「富岳」の分析によると、従来のソーシャルディスタンスともいわれる2メートル離れてマスクをせずに会話した場合、従来株では10%の感染確率に到達するまで45分かかっていたのが、デルタ株は半分以下の20分弱で到達するという分析が出ています。

 理化学研究所によると、飛沫の量は同じでも飛沫に含まれるウイルスの量が多く、ひとつひとつのウイルスの感染させる力が強いため、感染力が上がっているといいます。

 伊東先生は「少しの飛沫でも感染してしまうリスクがあるため、鼻を出したりせずにしっかりマスクをすること、大声でしゃべらないこと、長時間の会話をしないことが大切」と話しています。

 重症化リスクについては、これまでは高齢者が中心だったのが、今は30代~40代を含めた若年層も重症化しやすくなっていて、アルファ株と比べて入院リスクも約2倍といわれています。

 ワクチンの有効性についてはファイザー社製、モデルナ社製、どちらも効果は期待できるということです。しかし今のスピードでは、希望する全員が接種するよりも早くデルタ株の流行が先になり、第5波へ向かってしまうのではと心配されています。

 京都大学のシミュレーションでは、「遅くとも8月には緊急事態宣言相当の流行になる」と予測されています。

 デルタ株関連で最近耳にする「デルタプラス」についても伊東先生に伺いました。

 デルタプラスはデルタ株がさらに変異したもので、6月21日現在、日本ですでに37例が確認されていて、世界であわせて11か国に広がっています。

 感染力の強さなど、詳しいデータは分かっていないのが現状です。

 新しい変異ウイルスと聞くと警戒してしまいますが、「コロナに関わらず、ウイルスは変異するのが当たり前なので、過度な心配はせずに感染対策を継続することが大切」と伊東先生は話しています。