梅雨空の6月に賑わう場所「コインランドリー」には、雨のち晴れの人間ドラマがありました。

■「コインランドリーがないともう無理」…4世代家族10人分の洗濯をする女性

 名古屋市北区のコインランドリー『ボーテ』。東海地方で96店舗を展開しています。曇り空の下、午前中は奥様たちで賑わいます。バッグいっぱいの洗濯物を両脇に抱えた女性が…。

主婦(46):
「部屋干しするにも、すごい量だから無理で…。コインランドリーがないともう無理」


 この女性は、雨の日は必ずやって来ます。2袋で1日分。この女性の家族は祖父母と両親、娘夫婦、孫、次女ら4世代10人家族です。4月から新居に住み始めました。

 洗濯は朝から1日4回。洗濯機から取り出し、1階から2階に運び、乾かすのも大変です。干せない分は、コインランドリーに持っていくといいます。干し方にもこだわりが…。

同・主婦:
「タオルの向きとか、全部一緒じゃないと嫌。あと表と裏もちゃんと干すのが好き。自分の楽しみだから」

■「じいちゃんの畳んでいるとギュッてなる」…くも膜下出血で倒れた父が帰るのを祈る

 家族で家事は分担。食事は長女が、山積みの洗濯はこの女性の担当です。女性にはいま心配事があります。5月に父親がくも膜下出血で倒れ、一命をとりとめたもののまだ入院をしています。

同・主婦:
「じいちゃんのものを畳んでいると、1人でギュッてなる。早く帰ってきてみたいな」

「家族が多いと、洗濯など大変だけど、家族が一人でも欠けると寂しい」と話す女性は、洗濯物の量に「家族の絆」を感じています。

 家族10人揃っての生活を願うばかりです。

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■「80過ぎると干すという行為が大変」…乾燥機の利用で訪れた年配の男性

 午後になるとコインランドリーの洗濯機と乾燥機18台は、フル稼働。小雨が降る中、多くの人が訪れます。カートをひいて洗濯物を持ってきた年配の男性は、空きがないため一休みです。

男性(84):
「ここでは乾燥だけです。家内も私も80過ぎると肩とかに異常がでてくるわけ。干すという行為が大変なの」

 足元にも乾燥機があり、腰が曲がったおじいちゃんでも大丈夫です。

 カップルは、大量のタオルを持ってきました。

女性(26):
「他のものは家で干しているんですけど、タオルだけは(乾燥機を)回しに来ました」

男性(26):
「ふんわりしていたほうが気持ちいいので」

 店内で販売されている「リンス剤」(2枚入り100円)を洗濯機に入れました。ふわふわの仕上がりになるそうです。

■頑張っている父の靴を綺麗に…親子二人三脚でコロナの苦境を乗り越える

 女性は、父親の靴を洗いにきました。靴は手洗いするのが大変なため、専用の洗濯機と乾燥機で綺麗にします。

女性(27):
「(父親は)自営でやっているんですけど、この状況下なので、今は別の仕事としてコロナとかの消毒の仕事を…」

 イベント会社を経営するこの女性の父親(58)は、イベントがコロナの影響で全て中止になりました。

父親(58):
「怖い状況。本当厳しいです。頭の中がくちゃくちゃですよね。先が見えない」

 新たに始めた事業が、店舗などの消毒作業。その際愛用しているのがこの靴です。親子二人三脚で、コロナの苦境を乗り越えます。

■就活中の男性は待ち時間に人生設計…コインランドリーを訪れる人たちのそれぞれの人生

 午後5時。雨が上がれば、いつしか日が差します。毎日仕事終わりにやって来る親子がいました。

製造業の男性(32):
「保育園のお着替えだったり、エプロンだったりタオルだったり。いっぱいやっぱり汚してくるので」

 4年前に妻と死別したという男性も…。

アルバイトの男性(78):
「(息子が)こっちきて一緒に暮らそうと言うけれど、まだ1人で暮らしたいものですから」


 息子夫婦から同居の提案がありましたが、1人暮らしを続けています。

 コロナで業績が悪化したアパレル会社に勤務していた男性は、今年2月に早期退職。待ち時間に将来の人生設計です。

元アパレル会社勤務の男性(47):
「45歳以上手を挙げる人は、手を挙げて下さいということで…。就職活動していますけど、やりがいがあるところにめぐり合えたらいいなと思っています」

 午後9時。すっかり雨はやみました。人生、雨のち晴れ。梅雨空のコインランドリーには、いつか訪れるはずの晴れ間を待ち続ける人々の姿がありました。

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