コロナ禍でおうちご飯が増え、手軽に簡単に作れる料理のニーズが高まっています。名古屋を代表するイタリアンのシェフに、家庭でよく使う身近な素材を使って、簡単においしいパスタを作ってもらいました。すぐに使えるテクニック満載です。

■150円の塩ジャケで本格イタリアン…ミシュランガイド一つ星店のシェフ直伝

 名古屋市東区にあるミシュランガイドで一つ星評価の「セッタンタ」。水口秀介シェフは素材を生かした料理に定評があり、名古屋を代表するイタリアンの達人です。

 水口シェフに、一般の家庭でも簡単に1人前を500円以下で作ることができる料理を教えてもらいます。

 簡単でおいしい『シャケとジャガイモのクリームパスタ』。メイン食材は食卓でお馴染みの1切れ150円の塩ジャケの切り身を使います。

水口シェフ:
「パスタに合わせるのは新ジャガですね。新ジャガって皮が薄いですよね。みずみずしいので水分が多い」

 塩ジャケと相性が良いという新ジャガに、スナップえんどう、生クリーム、カレー粉。オイルやニンニクは使いません。

 クリーム系のパスタは濃厚なソースがよく絡むため、太めの麺を使います。

■3リットルのお湯に30グラムの塩を…こだわりの塩分濃度1%のゆで汁

 まずは下ごしらえから。シャケは魚焼きグリルではなく、電子レンジで調理します。専用の容器に入れて500Wで3分~5分ほど。火が通るまで加熱したあと身は皮と骨を取り除き、手でほぐします。

「サバやサンマなど焼き魚の余りで何でもパスタができる」と水口シェフ。パスタの種類は無限といいます。ジャガイモとスナップえんどうを一口大にカットすれば、下準備は完了です。

 続いてパスタを茹でますが、このゆで汁にシェフの強いこだわりがありました。

水口シェフ:
「だいたい家庭で失敗するのは塩が弱いんですよ。3リットルのお湯ですけど、30グラムの塩を入れる」

 少し多いように感じますが、ゆで汁が3リットルなら塩は30グラム。この水口流の「塩分濃度1%」には、この後の調理工程が劇的に簡単になる秘密が隠されていました。

■作るパスタに応じて茹で時間を変更…クリームパスタは表示時間にプラス1分

 パスタの茹で時間にもこだわりがありました。商品パッケージには「1.6mm・ゆで時間7分」との表示がありますが…。

水口シェフ:
「クリームパスタなので、ちょっと麺が柔らかい方がおいしい。麺が固いと相性が悪い…。ちょっと茹で時間をオーバーします」

 クリームパスタはとろける口当たりが楽しめるよう、水口シェフは、茹で時間は表示時間プラス1分を目安にしています。他にもトマト系のパスタはマイナス1分など、作るパスタに応じて茹で時間を変えます。

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■パスタのゆで汁に具材を入れて…1つの鍋でどんどん作るのがイタリア料理

 時短のために、パスタを茹でているゆで汁の中に具材も一緒に入れます。まずはジャガイモを入れ、残り1分くらいでスナップえんどうを入れます。

 パスタと一緒にジャガイモは5分。スナップえんどうは1分、時間差で茹でます。

水口シェフ:
「イタリア料理、マンマの家庭料理ですので、いかに手間暇かけずに美味しくって、一つの鍋でどんどん作っちゃう」

「母親の家庭料理」が原点というイタリアンらしい調理法で、時短と洗い物の手間も省きます。主婦にとってはありがたいテクニックです。

■塩ジャケはうま味の塊…塩分濃度1%のゆで汁を使ってソース作り

 最後はソースづくり。まずはフライパンにゆで汁を入れます。塩分濃度1%のゆで汁があれば、追加の塩はいりません。ここにシャケのほぐし身を入れます。

水口シェフ:
「塩ジャケってうま味の塊ですよね。ブイヨンとか使う必要がない。煮るだけで鮭茶漬けじゃないけど、うま味が出てくるんですよ」

 ゆで汁で塩ジャケのうま味を引きだします。ここに生クリーム100ccを加えます。

水口シェフ:
「もともと北欧中心の料理ですけど、ジャガイモとクリームとシャケは鉄板です」

「ジャガイモが入ることによってコクがプラスされる」と水口シェフ。ジャガイモ入りのゆで汁はでんぷん質を多く含むため、ソースの乳化を促進。麺によく絡み、まろやかな仕上がりになります

■味見は麺でなく汁で…イタリアンで最も大切なのはゆで汁

 イタリアンではニンニクや唐辛子を使うことが多いですが、今回の隠し味はカレー粉です。カレー粉の香りが食欲をひき立てるとともに味を引き締めます。そして味見にもコツがありました。

水口シェフ:
「一番大事なのは、麺を食べるのではなく汁を。これが美味しければ、絶対に美味しいです。皆さん、ここで塩をしちゃうんですよね」


 イタリアンで最も大切なのは、ゆで汁。「ゆで汁がポイント」と水口シェフは言います。

 シャケ・ジャガイモ・生クリームという鉄板の組み合わせに、スナップえんどうで彩りをプラスした「シャケと野菜のクリームパスタ」。

 クリームに絡む太い麺に、柔らかいシャケの絶妙な塩加減。イタリアンの名門の極上パスタ。一流だからこそできる、シンプルを極めた一皿です。

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