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太陽光発電でなく熱を熱のまま利用…『太陽熱温水器』脱炭素の切り札となるか 風呂好きの国民性にもマッチ

01月24日更新

愛知県知立市のソーラーシステムメーカーから「屋根の上に載せて太陽の熱で水を温める、太陽熱温水器は愛知県発祥ですがあまり知られていません。地元が生んだ技術をもっと知ってもらいたいです」と投稿がありました。

太陽の熱でお湯を作る「太陽熱温水器」は、かつて一大ブームを巻き起こした技術です。しかし現在は「太陽光発電」に取って代わられ、あまり見かけなくなりました。役割を終えたかと思いきや、調べてみるとその意外な実力が、脱炭素の“切り札”としての可能性を秘めていることが分かりました。

■冬でも家全体が20度以上の暖かさ…『太陽熱温水器』でぽかぽかの家

三重県桑名市の加藤さん一家。3年半前に新築したという家に入ってまず感じるのが、その“暖かさ”です。

妻:
「(冬場でも)裸足。裸足の方が気持ちがいいので」

1階はリビング・ダイニングとキッチン、子供の勉強スペースや書斎などがあり、ほぼすべての場所に床暖房が入っています。さらに…。

加藤勇祐さん:
「洗面は両方ともお湯が出るのと、あとお風呂。下のシステムで(温水と冷水を)ブレンドして調整した温度でここに出てくる」

どの蛇口からも、すぐにお湯が。この暖房や給湯のエネルギーにしているのが、“太陽の熱”です。太陽といっても、屋根などに載せたソーラーパネルで電気を作る「太陽光発電」ではありません。

この家では、屋根に載る“集熱器”に太陽の熱を集め、水や不凍液を温めることでお湯を作っています。温められた不凍液をパイプで床下に通して床暖房に。蛇口からは太陽の熱で作ったお湯が出ます。

加藤さん:
「下で暖まった温度が上に上がるので、自然に2階にも暖かい空気が行って、家全体が暖かくなっている」

床暖房の他に使う暖房器具はありません。この日の外の気温は約13度でしたが、部屋の中は27度以上と夏のような暖かさ。ちなみに、翌朝6時半は外の気温は約5度でしたが、部屋の中は約23度とポカポカです。

妻:
「年間通して、光熱費がフラットでいけている感じ。何もしなくても家全体が暖かいので、どこに行っても寒くない付加価値があります」

■オイルショックで大ブームもガス給湯器などの普及で下火に…三河発祥の「太陽熱温水器」

太陽の熱でお湯を作る「太陽熱温水器」は、愛知県の三河地方が発祥。全国で10社ほどある温水器メーカーの一つで、今回投稿をくれたチリウヒーターの刈谷工場を訪ねました。

チリウヒーターの社長(81):
「これが一般的な自然循環型の『太陽熱温水器』。タンクの中の水が下りてきます。薄いステンレスなので、日が当たるとすぐに温度が上がります。温かい水の方が冷たい水よりも軽いので、温かい水は上へ上へと」

太陽の熱で温められた水が上へと上がると、今度は冷たい水が下へ。その水がまた太陽熱で温められ上へと循環する仕組み。そもそも三河発の温水器は、“素朴なタンク”から始まったといいます。

同・社長:
「木で箱の上にガラスをのせて、その中に水を入れていくのが始まり」

「太陽熱温水器」の“元祖”といわれる「天日タンク」は、戦後間もない1940年代に、愛知県の農業改良普及員だった安城市の山本祐夫さんが開発しました。

ガラスの蓋をかぶせた四角い木製の桶で、中の水を太陽の熱で温めてお風呂のお湯として利用。シンプルな作りですが、基本的な役割は今と同じです。

当時、農村ではお風呂を沸かすために“わら”や“まき”を燃やすなどしていました。しかし、天日タンクを使えば楽にお湯が沸かせると、三河地方を中心に普及が進み、1950年代には愛知県内での設置台数が3万台を超えました。さらに…。

同・社長:
「1973年と1979年の石油ショック。これからはもう化石燃料が使えないよと(太陽熱温水器は)大ブーム」

オイルショックによる大ブームで、大手企業も参入。1980年には新規設置台数が80万台に達し、都市部でも屋根に温水器を載せた家が当たり前の光景となりました。

しかしその後、石油の安定供給に加えて多くの家庭でガス給湯器などが普及。1980年のピークを境に大手企業も続々と撤退し、設定台数は減少の一途をたどりました。

一方で国内に広まったのが、「太陽光発電」。その普及状況は太陽熱とは対照的で、この10年で急成長し、今や日本を代表する再生可能エネルギーとなっています。チリウヒーターの社長は、人々の意識から「太陽熱でお湯を沸かす」という発想自体がなくなってしまったと話します。

■熱を熱のまま使う“太陽熱”は風呂好きの日本人にピッタリ…環境の専門家が指摘する合理性

時代遅れになった感のある「太陽熱温水器」ですが、環境の専門家は「今の時代にこそ果たす役割がある」と話します。

名城大学理工学部の吉永教授:
「給湯は高々40~50度の温水。電気、ガス、他にもっと使い手のあるエネルギーを燃やして、そのぐらいの温水を作るよりも、熱は熱のまま使える再生可能エネルギー“太陽熱”が合理的」

太陽エネルギーに詳しい名城大学理工学部の吉永美香教授は、熱を熱のまま使う“太陽熱”は、合理的かつ効率的な再生可能エネルギーと指摘します。

特に、日本でこそ“太陽熱”は注目されるべきとして吉永教授が挙げるのが、“風呂好き”という国民性。日本の家庭で消費されるエネルギーの中で最も多いのは、全体の33.9パーセントを占める「動力・照明」。それに続くのが、28.8パーセントの「給湯」です。その割合は他の国の約2倍にあたり、これは“入浴の習慣”と大きく関係しているといいます。

吉永教授:
「夏に日射があって、午前中だけで(温水器で)お湯が沸きましたと。今日は昼風呂に入ろうと。午後にまたお湯が沸いたら、夜も入るかと。そういうプチ贅沢ができたりもします」

■専門家「“太陽熱”の利用は率先して導入すべき」…カーボンニュートラル実現のために

しかし、世界的にみると中国を筆頭にトルコやアメリカ、ドイツなどが“太陽熱”を積極的に導入しているのに対し、日本は“圏外”となっているのが現状です。

世界が気候変動問題に対し、脱炭素化の動きを加速させている中、日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するため、2030年度には2013年度比で46パーセント削減する目標を掲げています。

吉永教授:
「カーボンニュートラルにするには大量に導入できて、確実にCO2が減る信頼がおける技術という意味で、太陽熱利用はすごくいい。故障にも対応が簡単ですし、率先して入れるべき装置」

脱炭素社会に向けた有効な切り札の一つになりえる「太陽熱温水器」。“古くて新しい”その技術が再び見直されるときが来ているようです。

  • 中日新聞

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