愛知県が長年更新し続けてきた不名誉な記録といえば、「交通事故の死者数」。これまで16年連続全国ワーストとなっていました。

 それが今回、17年ぶりに全国ワーストを脱却。去年の交通事故死者数は156人と千葉県を下回ったことがわかりました。脱ワーストのきっかけとなった2つの対策とは…。

 長年、愛知県民にとって「恥ずかしい記録」の1つだった交通事故の死者数。自動車の保有台数が、全国で最も多いことや、スピードの出しやすい広い道路が多いことなどが原因と言われてきました。


  愛知県の交通事故死者数がピークを迎えたのは「交通戦争」といわれた1960年代。

1969年には過去最悪の912人を記録しています。

その後は減り続け、2018年は189人と68年ぶりに200人を下回りましたが、それでも脱ワーストとはなりませんでした。

 それが今回…。

大村愛知県知事:
「(愛知県の昨年の交通事故死者数については)2003年から16年続いた全国ワースト1位を返上することができました」

 前年より33人少ない156人となり、千葉県に次いで2位。17年ぶりにワーストを脱却しました。これについて街の人は…?

津島市在住の60代:
「2位だったんだよね!久しぶりに。だって気になっとったから」

瀬戸市在住の10代:
「いいことだと思います。これからもワースト1じゃなくて、上がっていけばいいなって思います」

名古屋市守山区在住の30代:
「子どももいる身なので、事故が減ったというのは非常にうれしいですね。」

同・北区在住の30代:
「やっぱり子どもたちがいると、運転荒い人を見ると、うわっと思うし」

 中には、こんな声も…。

同・北区在住の80代男性:
「もうちょっとみんなで頑張って、さらに良くしないかんということですよ。

男性の奥さん:
「車も今月やめるって言ってね。70代でもずいぶん事故を起こしてらっしゃるから。この歳だから…ちょっと不便しますけど」

 実は、脱ワーストのポイントとなったのが「高齢者対策」。去年の死者数のうち、65歳以上の高齢者は前の年から23人減り80人と大幅に減少しました。

愛知県警が導入した2つの対策とは…。

<対策1:交通事故分析システム>

愛知県警交通総務課・渡邉室長:
「交通事故の分析システムを平成27年に改修しまして、これに基づいて、発生した交通事故を高度に分析しています」

 1つ目は愛知県警が2015年に採用した「交通事故分析システム」。各警察署の交通課に導入され、過去およそ10年分の事故のデータを地図上で見ることができるようになっています。

 色が濃い部分は高齢者の人口の割合が高い地域。赤いピンは、高齢者が関係した事故の発生場所を示しています。

同・渡邉室長:
「どういった所に高齢者の方が住んでいるかと、事故の実態の分析を重ね合わせまして、事故が発生するであろう場所で警察活動を展開して、事故の抑止に努めてきた」

 分析により、高齢者は自宅から半径およそ500メートル圏内で事故に遭うケースが多いことが判明。

このエリアを中心に取締りを強化してきたことが高齢者の交通事故の減少に繋がったといいます。

<対策2:サポカーのススメ>

 サポカーとは、セーフティサポートカーの略。安全運転をサポートしてくれる車のことです。

 例えば、自動ブレーキの機能を搭載した車では備え付けのセンサーが障害物を感知すると急ブレーキが自動的に作動し、壁などに衝突するのを防いでくれます。

 高齢者に多いアクセルとブレーキの踏み間違いですが、加速を抑制する機能が搭載されていて、サポカーは安全性が高いといわれています。

 愛知県警では、このサポカーをもっと知ってもらおうと体験教室を積極的に開催してきました。

渡邉室長:
「サポカーはより安全に運転することをサポートして頂けるということで、高齢者の方々の事故抑止の対策としては有効だろうと考え、普及に対して協力を進めている所です」

 17年ぶりの脱ワースト達成。とはいえ、依然として多くの死亡事故が発生している愛知県。

渡邉室長:
「達成できたという安堵はありますけども、これを節目として、さらに事故死者数を減少させることができるように、新たな出発ということで取り組んでいかなければならないと思っています」

 ちなみにこれら以外の対策として、自転車に乗った警察官が交通安全を呼び掛ける「B-Force」や、持ち運び可能な「可搬式オービス」を全国で初めて一般道の取締りに導入しました。

 また国は、今後自動ブレーキなどの安全機能がついた車のみ運転することができる、高齢ドライバー専用の限定免許制度を新たにつくることも検討しています。