去年の夏、愛知県豊橋市の寺で罰当たりな事件がありました。巻き込まれたのは仏像。先日、“長い旅”から無事に戻って来ました。

 愛知県豊橋市の北東部にある嵩山町。人口およそ1400人の小さな町で起きた事件。

住職:
「8月23日のときにお参りしようと思って開けたら、中が空っぽだったということで」


 お地蔵さまがいない…町にある唯一の寺「十輪寺」の仏像が何者かに盗まれてしまったのです。

女性:
「自分が子どものときには親に連れられてお地蔵さまにお参りに行き、自分が大人になって子どもが生まれたら、子どもを連れてまたお参りに。で今、自分の孫をつれてお参りに行くような」


 代々受け継がれてきた大事な仏像が盗まれた事件は住民たちに大きな衝撃を与えました。

<地元の美術館のツイート>
「仏像を探しています」

 事件を受け、盗まれた仏像の情報を集めようと、地元の美術館がツイッターで呼びかけたところたちまち話題に。すると、その2か月後、警察に一本の電話が…。

<通報内容>
「オークションに出品されていた仏像が、盗まれたものかもしれない」

 なんと、盗まれた仏像は古物商らのオークションに。出品したのは同じ豊橋市内に住む42歳の男です。男は別の寺からも仏像を盗み出し、窃盗容疑ですでに逮捕されていました。

 仏像を、盗まれる前と後で比較してみると、手首からかけていた左手は自然な形で修復され…。

右手も接ぎ木されさらに錫杖まで…。仏像はオークションで購入した男性が修復し、かつての姿を取り戻していたのです。

 男に“連れ去られて”から9か月、警察の手によって寺に戻ってきた仏像。地元では「お地蔵さま」として親しまれています。

地蔵堂はこの日のために住民らが修理し、すっかりきれいになっていました。そして開かれた「お地蔵さまのお帰りを祝う会」。皆さん、わが町のお地蔵さまに手をあわせ、念仏を唱えていました。

寺を管理する住職:
「お地蔵さんについてはですね、ある日突然何者かによって誘拐をされたと。大変なご苦労をこの間して、悩んでみえたと思うんです。こうして皆さん大勢お集まりいただいてですね、今日は安座のお参りと言います」


 雨の日も、雪の日も、風の日も…。この地を見守り続けてきた十輪寺のお地蔵さま…。

地元の女性:
「嬉しいだけ。ただほんと嬉しいの気持ちの一言だね。良かった良かったって…」

別の女性:
「先祖が守ってきたものを、私たちが次の世代に残していくことが、私たちの仕事なので。やはりそれをきちっと、次の子供たち、次の人たちに伝えていけたらいいかなと」

また別の女性:
「当たり前にあるものがどれだけ大事かっていうのは、今回のことを通して実感できたかなと思うので。これからも無事にみんなが過ごせるように、元気にこれからも見守っていってもらえればと思います」