新型コロナウイルスの集団感染が確認されたクルーズ船から、乗客ら32人が愛知県岡崎市の医療センターに19日未明に到着しました。しかし、うち4人に肺炎の症状が確認され、別の医療機関へ搬送されました。

 一方、突然の受け入れに、当日まで知らされていなかった地元住民からは不安の声も…。住民説明会ではそんな不安を逆なでするような担当者の発言もありました。

(リポート)
「午前2時15分です。患者を乗せたとみられるバスが医療センターの正面玄関に到着しました。バスの中は左右ともにカーテンが閉められていて、中の様子を見ることはできません」

 新型コロナウイルスの集団感染が起きている、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客ら32人を乗せた自衛隊のバス。岡崎市の藤田医科大学岡崎医療センターに到着したのは深夜2時を過ぎていました。

(リポート)
「自衛隊のトラックから荷物が下ろされました。たくさんのスーツケースが下ろされています。旅行者の荷物でしょうか。スーツケースが病院の中に入っていきました」

 18日夜、横浜港を出たバスには、感染が確認されたものの症状が出ていない24人と、同行を希望した家族ら8人のあわせて32人が到着しましたが…。

藤田医科大学病院 湯沢病院長:
「ある一定の体温の上昇、もうお一人の方は体のだるさ、倦怠感と脱力感がある。こういった症状をお持ちの方がお2人いる。37.5度以上の発熱に加えまして、酸素飽和度の低下。その症状がそろってみえる方がお2人」

 到着後のメディカルチェックで、男女4人に肺炎の症状がみられ、すぐに愛知県内の医療機関に搬送されました。

残った28人は、建物の4階と5階の部屋に入居し、決められたエリアで過ごしていると言います。

藤田医科大学 守瀬準備室長:
「(ウイルスが消えるまで)通常は2週間程度といわれています。今回12日余りの時点でPCR検査をいたしまして、PCR検査が2回陰性であればウイルスが消失したと判断して、出ていただくことは可能であると判断しようという計画を立てております」

 

 センターでは医療従事者が防護服を着用するなどし、関係者や地域の住民に感染が広がらないよう対策をとっていると説明しています。

 国からの要請で急遽、受け入れを決めた岡崎医療センター。しかし、感染者受け入れの公表が直前になったことから地元への説明は後手後手に…。

 センターがあるのはJR岡崎駅の南西1.5キロほど離れた住宅地。道路を挟んで向かい側には市立岡崎小学校があります。

 学校には事前に知らされることはなく、受け入れ後初日となった19日、マスクを着用して掃除をする子供たちの姿が目立ちました。

 また、医療センターの近くにある高齢者施設も突然の受け入れに戸惑いを隠せません。

和合橋ホーム 田辺施設長:
「それは怖いですね。どうしても高齢の方は免疫力とか体力も劣ってきていますので、ちょっとした風邪とかでもすぐ伝染しやすいので、本当にそういう事がないように願っています」

 こうした不安を払しょくするために、岡崎市は当日の夜になって住民説明会を開催。

女性:
「家がとても近くなので、見えるくらいの近さなんですよ。とてもびっくりしました。やっぱり心配ですね」

(リポート)
「住民説明会の会場です。中には100席ほどが用意されていたんですが、すでに立ち見が出るほど多くの住人の方が集まっています」

 厚生労働省東海北陸厚生局や岡崎市、藤田医科大の幹部らが受け入れの経緯などを説明しました。

しかし撮影は冒頭のみで、その後は非公開で行われたこの説明会。

 入手した音声データを確認すると、紛糾するやり取りが録音されていました。

市民:
「今日の今日になってこんな説明会を開いていただいても、すでに来ちゃっとりますよね…」

 住民からは説明の遅さを指摘する声が上がりました。さらには…。

別の市民:
「風評被害も商売やっている人とか被害ありますよね。それを補償されますか?って聞いているんですよ」

 こうした声に対し担当者は…。

担当者:
「1つ言えることは、少なくとも接触した人が、自由に外に出るということは決してない状態を作っております。そこは私どもが責任をもって体制としてやっております」

 と感染防止策を説明。住民側に理解を求めます。そんな中、厚生労働省東海北陸厚生局の金井要局長がこんな発言を…。

厚生労働省東海北陸厚生局 金井局長:
「小学校が前っていうことがあるんですが、それにしても小学生の方と交わることもないです。ましてや飛沫感染です。直接触らないと感染しません。めちゃくちゃ離れてまで飛ばすほど、大きな咳をする人はいないと思います。ゴジラでもなければ。…すいません、最後はちょっとジョークです。笑って頂いてよろしんですが…

市民:
「笑えないよ…」

「ゴジラでもなければ…」この発言に住民は…。

女性:
「ふざけてる場合じゃないって言いたかったです。厚労省の人にすごく腹が立ちました」

 これに対し、発言した金井局長は説明会後の会見で「ジョークを言ったつもり」だったと釈明。

金井局長:
「私の不徳の致すところです。非常にやり取りをしている中で、かなり和んできたかなと思ったところで、一つ笑いを取りたかっただけです。すみません」

 受け入れについて好意的な声もある中での発言は、一連の対応に冷や水を浴びせることに…。

 説明会では、このほか小学校には今後、藤田医科大の職員が直接おもむき、子供たちに感染防止対策を指導することなどが報告されました。

 医療センターには19日夜も25人が新たに到着する予定で、今後感染した乗客や同行する家族らあわせて170人程度が滞在して経過観察を続けることになります。