国が旅行代金の一部を負担するGoToキャンペーン。東京除外が波紋を広げていますが、地方の観光地では期待と不安が交錯しています。「全国で行けるようになってからでも」「矛盾している」「周囲にうつしてしまわないか不安」…。

社会経済との両立、その難しさを改めて浮き彫りにしています。

■オーシャンビュー魅力の温泉旅館は“東京除外”に「全国で行けるようになってからでも」

 蒲郡市の三谷温泉にある「ホテル三河海陽閣」。

全ての部屋から三河湾が眼下に望めるオーシャンビューが魅力です。

ホテル三河海陽閣の若女将:
「2月くらいからインバウンド(訪日外国人)のお客さまが完全になくなってしまったので、まともに営業ができなくなってしまって」


 緊急事態宣言で休業を余儀なくされ、ようやく7月から営業を全面的に再開。GoToキャンペーンにも期待していますが、東京からの宿泊客が対象外となったことについては…。

若女将:
「今までも東京からお越しいただいたお客さまはいらっしゃるので、そういった方たちが旅行に来れないというのは影響が出てくるのかなと思っております」

困惑気味の様子です。

 国が実施する「GoToトラベルキャンペーン」。コロナの影響で落ち込んだ観光産業の立て直しを図るため、国が旅行代金の最大5割を補助します。

しかし、7月22日のキャンペーン開始を目前に控え、東京の感染者が急増。国は、都内に住む人や都内を発着する旅行を対象から除外することに。東京では17日も感染者数は過去最多の293人となっています。

赤羽国交相会見(17日午前):
「東京都に居住する方の旅行につきましても、当面事業の対象外とし、割引支援は行わない」

「ホテル三河海陽閣」では、国のガイドラインに従って感染防止策を徹底。ソーシャルディスタンスを確保するため、広い宴会会場でも、一度に食事ができるのは2組までにしました。

また、温泉も一度に入浴できる人数を制限。安心安全な時間を過ごしてもらうための「新たなおもてなし」に力を入れています。その甲斐もあって、7月23日からの4連休は予約でほぼ満室です。

若女将:
「政府の方々はGoToキャンペーンで観光・宿泊業のことを考えていただいたのには、すごくうれしく思っておりましたが、全国の方々が旅行に行ける状況になってからでもいいのではないかなとも少し感じてしまいました」


■旅行代理店「感染拡大防止とGoToは矛盾」…コロナと豪雨でダブルパンチの岐阜

 キャンペーンの実施を複雑な思いで受け止めているのは、旅館などの宿泊施設だけではありません。

 岐阜市の旅行代理店ケイツーリスト。国内外問わず様々な旅行プランを販売していて、中でも売上の中心は団体旅行です。

ケイツーリストの代表:
「これ全部、オールキャンセルです

 コロナの影響は大きく、今年5月の予約は全てキャンセルに。6月も状況は改善せず、売上がほどんどない状況が続いています。さらに、下呂市や高山市など県内有数の観光地を襲った豪雨も。

古田岐阜県知事:
「コロナの問題でねいろいろと全県あげて苦労しているわけですけれど、いよいよ観光についても積極的に打って出ようかという矢先にこの集中豪雨ですから。そういう意味ではダブルパンチですからね」

 コロナと豪雨のダブルパンチ。ケイツーリストではなんとかこの状況を乗り越えようと、キャンペーンを利用した岐阜県内を対象にした日帰り旅行プランの販売を始めました。

ケイツーリストの代表:
「やっと会社としても存続できると考えてやっていきたいと思ったんですが、やはり感染拡大(防止)の観点からみると矛盾しているんですね。GoToキャンペーンと」

矛盾と向き合う、苦しい経営が続いています。

■飲食店では自身の感染や周囲への拡大に不安…首都圏からの宿泊客4.6%の三重

 一方、全国有数の観光地で、東京からも多くの観光客が訪れる三重県伊勢市。

伊勢海老や大ぶりのアワビなど、伊勢志摩の海の幸は訪れる人の舌をもてなします。

GoToキャンペーンから東京が除外されたことについて、三重県の鈴木知事は…。

鈴木三重県知事:
「東京を除外してスタートする、感染拡大防止を大事にするという観点から、今回の措置は妥当な判断だと考えています」

理解を示したうえで、県外からの宿泊客は愛知や関西圏が多く、東京を含む首都圏からは4.6%で、大きな影響はないと話しました。

 伊勢神宮・外宮前にある、伊勢海老やアワビのお造りなどを販売する「鈴木水産」では…。

鈴木水産:
「うれしいことでも不安もあります。両方ですね、半分半分ですね」

店はコロナの影響から徐々に回復し始め、東京をはじめ全国からの観光客が戻りつつあると言います。

鈴木水産:
「東京のお客さんも、もう1割2割ぐらいは来ていると思うんですけれども。(ウイルスは)どこにでもあると思うんですよね。僕らに感染してしまうとか、それを家族に持っていくとか、そういうことが一番不安ですね」

期待半分、不安半分…胸の内は複雑です。

 GoToキャンペーンへの期待と不安の声が交錯する中で、観光産業に携わる業者とそれを支援する自治体も、コロナ禍の難しい対応が続いています。