縁日などでよく見かける駄菓子のたません。東海地方の人たちには馴染み深く、名古屋が生んだ駄菓子と聞いたことがあるかもしれません。しかし本当にたませんは名古屋生まれなのか調査しました。

■「たません」は名古屋名物!?そのルーツを求めて・・・

 まずは名古屋の街でたませんについて聞いてみました。

男性:
「小さいころ近所のお祭りとかで食べていたので身近かなと」

女性:
「たませんはお祭りで食べるくらいかな。最近は食べてないけど」

別の女性:
「小さいころよく食べていました。(Q.たませんが名古屋名物という印象は?)ないです」


名古屋名物という印象はないようですが、東海地方では、駄菓子屋やお祭りなど、幼い頃から親しんできた食べ物のようです。一方で…。

Q.「たません」って知っていますか?

東京から観光で来た女性:
「たません?多摩線…電車じゃなくて!?」

埼玉出身の女性:
「ふーん。なんか、せんべいがしなしなになっちゃいそう…」

他のエリアの人にはなじみが薄いようで、どうやらたませんは名古屋オリジナルのようです。

たませんは本当に名古屋生まれなのか。そのルーツを求めて、「たません」の人気店で昭和34年創業の老舗「ふくや」へ。

名物のたませんを改めてどんな食べ物か見せてもらいました。

まずは、卵を焼きます。

せんべいの上にたっぷりとソースをぬって…。

揚げ玉を乗せます。

ここへ先ほど焼いた卵をのせて…。

マヨネーズをかけ、せんべいを折りたためば、ふくや自慢のたませんの出来上がりです。

(リポート)
「パリパリですね。中がしっとりしいてて卵の香りもよくソースもきいていますね」

Q.「たません」は名古屋名物ですか?

お店の女性:
「たませんは名古屋名物です。よそにはない」


他の地域の人たちが知らなかったことも考えると、どうやら名古屋名物のようです。

Q.たませんの発祥の場所はわかりますか?

お店の女性:
「うーん。このあたりはお菓子問屋が昔からあるので。辻商店さんが(たません用の)せんべいを扱ってみえるので、何か詳しいことがわかるかも」

 たませんの命ともいえるせんべいを卸している問屋さんで聞けば何か分かるかもしれないと、「ふくや」から歩いて3分のところにある「辻商店」へ。

そこで名古屋名物たませんの話をすると見せてくれたのが…。

辻商店の主人:
「これ(たません専用のせんべい)なの。碧南で作ってみえるの」

こちらが「たません」の材料にも使われているおせんべい。

では、「たません」はどこでどうやって生まれたのか?すると、ご主人から意外な事実が。

主人:
「初めてやったお店はもう無くなった。もうおばあちゃん亡くなった」

ご主人によれば、南区笠寺にあった「竹内商店」がたませんの発祥とのことでしたが、すでに閉店しているそうで、残念ながらたません誕生の話は聞くことができませんでした。

■「たません」のルーツは大阪!?「たません」と見た目そっくりな「たこせん」とは

「たません」の更なる情報を求めて、名古屋めしに詳しいSwindさんに聞いてみることに。すると「たません」のルーツに関してこんな話が。

名古屋めし専門研究家Swindさん:
「(たませんは)笠寺の駄菓子屋さんが始めたと聞いています。ただ、大阪にも似たような料理があるらしくて、『たこせん』という名前で売られているようで、どっちが先なのかは不明」


「たません」そっくりの「たこせん」という名物グルメがあり、どっちが古いかは分からないといいます。 

もしかしたらルーツは大阪という可能性も。確かめるために大阪へ向かうと「たこせん」の写真が並ぶ店がありました。

 訪れたのは大阪市中央区の「甲賀流 アメリカ村本店」。お店の前にはたくさんの若い人たちが集まっていて人気店のようです。

早速、「たこせん」を注文してみると、「たません」と比べると確かに見た目はそっくりです。

「たこせん」の作り方は、「たません」に似たおせんべいを使って…。

ソース、揚げ玉を乗せるのも全く同じ。

違うのは挟む具材だけ、大阪名物のたこ焼きが3つ入ります。

しかし、ここまでそっくりなのが偶然とは考えにくく、どちらかが真似たのでは…。店長を直撃すると…。

店長:
「ちょっと分かんないですけど、ボクたこ焼き屋なので「たこせん」の方が先にあるんちゃうの」


「たません」は、「たこせん」を真似たのか?ところが、意外なことが判明。

Q.このせんべいはどこから仕入れているのですか?

店長:
「愛知県が産地(ということ)までは分かっているんですけど」

「愛知県」というキーワードが出てきました。お店で使っているせんべいのパッケージを見せてもらうと、せんべいは碧南で作られたものでした。

■どちらが先?名古屋のたませんか大阪のたこせんか

 たませんのせんべいとたこせんのせんべい。作っている会社は違っても、どちらも碧南のせんべいを使っていることが判明。これはせんべい工場に聞けば、どちらが先かわかるのでは。

そこで「たません」と「たこせん」どちらのせんべいも作っている碧南の「ヤマサ製菓」に確認すると、社長さんが先代から聞いた話として教えてくれました。

<ヤマサ製菓の社長が先代から聞いた話>
「もともとは大阪のたこ焼き屋から『ごみを減らすために、たこ焼きを乗せる皿が欲しい。お宅のせんべいを使いたい』と打診があり売った。そしてその後、愛知に卸し始めたような記憶がある」

つまり「たこせん」が先ではないかとのこと。

 更に、大阪の駄菓子の卸売りをしている方が作っている菓子紹介サイトにそれを裏づけるような記載を発見しました。

<大阪の駄菓子問屋の人が作成した菓子紹介サイト>
「昭和40年代、学習塾の前にたこ焼き店がありました。たこ焼きのトレーが隣近所に散らかり、苦情が絶えません。そこでたこせんべいを容器として利用した」

 やはり大阪の「たこせん」が先か、と思ってしまいますが、一方、名古屋が先ではないかとのエピソードもありました。それが「駄菓子屋で子供が頼んだ説」です。

「昭和40年代、『たません』発祥の地と言われている名古屋市南区の竹内商店で『(ばら売りしていたせんべいを)鉄板で焼いてほしい』と子供からリクエストがあり、卵と合わせて焼いてみたら大好評だった。それ以来『たません』として定着した」との話もありました。

 名古屋の「たません」と大阪の「たこせん」どちらが先か?どちらも昭和40年代に生まれているようですが、どちらが先かという確固たる証拠は出てきませんでした。真相は果たして…。