お弁当や総菜が、とにかく安いという大盤振る舞いの店が名古屋駅近くにオープンしました。コロナ禍を物ともしない人気の裏には、ある秘密と店長の思いがありました。

■客「びっくりするくらい安い」…サラダにお茶、果物も付く大人気のお弁当

 名古屋駅・太閤通口に7月にオープンした「八百屋ダイニングやすべえ」。午前10時半、店先で店長の鳴尾さんが弁当の準備をしていました。

 ターゲットは近所の住民やサラリーマン。この日は唐揚げに、ハンバーグ、サバの塩焼きなど8種類。値段はどれも400円。名古屋駅という立地を考えるとお値打ちです。

男性客:
「びっくりするくらい安いですよね。サラダがすごい。これで400円は他にはない」

女性客:
「おいしいし、安いしね。野菜とかいろいろ付くからありがたい。りんごまで付いています」


 正午になると、飛ぶように売れていくお弁当ですが、皆さんが手にするのは弁当だけではありません。弁当を買うと、お茶にカップサラダ、さらに果物まで付いてきます。これだけ付いて値段は400円です。

 しかも、このりんごは鳴尾さんが午前3時に起きて、自ら長野県で仕入れた新鮮なものです。客にとってはうれしい破格のサービスですが、店はこれで採算がとれるのでしょうか…。

鳴尾さん:
「とれるかとれないかっていったら、とれない。お客さんに少しでもお店を知ってもらったり、喜んでもらいたい思いでやっています」


■安さで大評判の『八百屋ダイニング』…店長は青果店の三男

 午後1時には弁当は完売。すると鳴尾さんが店を出ます。向かった先は近くの青果店。鳴尾さんの実家の「安兵衛青果」です。こちらも客から安いと人気の店です。

 この日、トマトは2つで100円、ごぼうも3本で100円。大根は1本50円と、野菜の高騰が久しい中、どれもうれしい値段です。

 鳴尾さんの父親を筆頭に家族で営むこの店では、朝、各々が市場へ出かけSNSで情報交換をしながら、お値打ちに野菜を仕入れています。そして鳴尾さんは、ここの三男です。

鳴尾さん:
「こちらの野菜をお店で使っている。八百屋である分、原価率が抑えられます」

■夜も驚きの安さ…入場料500円でドリンク1杯とおばんざいが食べ放題

 安さがウリの青果店が営むお店だから店名が、「八百屋ダイニング」。ではなぜ、青果店が弁当を出す店を別に開いたのでしょうか。

鳴尾さん:
「食品ロス、捨てる野菜が出ちゃうのでそれを解消するために。あと父親がうちの野菜を使ったおばんざいのお店をやりたいということで、オープンしました」

 社会問題にもなっている「食品ロス」。激安で人気の安兵衛青果でも、野菜が売れ残ることがあります。そこで父親が「おいしく食べられる野菜を捨てるのはもったいない」と、昼は弁当を販売し、夜は念願だったおばんざいをウリにした居酒屋を開きました。

 午後5時、再び「八百屋ダイニングやすべえ」を訪ねると、青果店で仕入れた野菜を使ったおばんざいがズラリと並んでいました。

 この日は、ゆでた枝豆をたっぷりのにんにくで炒めた枝豆のペペロンチーノに、じっくり煮込んだ大根に和風餡をかけた大根の煮物、それに青果店でも人気の手作りキムチがありました。

 そして夜も驚きの安さです。入場料として500円を払えば、ドリンク1杯に野菜を使ったおばんざいが食べ放題です。

男性客:
「おばんざい食べ放題っていうのはすごい。野菜が好きなのでありがたいです」

別の男性客:
「八百屋さんがやっているので、体に良いものが食べられそう。おばんざいも種類があって全部おいしいです」

鳴尾さん:
「(食品ロスは)ちょっとずつ減っています。こんなに野菜が出る所は(他には)ないと思いますので、毎日の野菜の消費量は多いです」

 午後7時。鳴尾さんは、翌日長野に仕入れに行くため、早めに上がります。

鳴尾さん:
「おいしいよとか安いねとか、言ってほしい。みんなの笑顔が糧になっているので。野菜は高い時期ですけど、その中でどの野菜が安くておいしいのかっていうのを探して、提供していきたいと思います」

 「八百屋ダイニングやすべえ」は、名古屋駅の太閤口を出てすぐです。