こたつ用のヒーターを応用した暖房器具が今、病院の屋外診療室で活躍しています。赤外線を利用し、風の影響を受けないこの暖房器具は、元々は工場内で使用するために開発されたものでした。

■患者「暖かくなりました」…屋外で活躍 こたつのヒーターを応用した「オレンジヒート」

 愛知県豊田市にある中村医院。建物の横に屋外診療室を設け、新型コロナに感染の疑いのある患者さんを診察しています。

 この場所に10月末から「こたつ用のヒーター」を応用した暖房器具が置かれました。

中村医院の看護師:
「(導入)前の時を知っている患者さんとかは、『暖かくなったので落ち着きました』というような言葉はいただいています」

 このヒーターを作っているのが、愛知県安城市のメトロ電気工業。

 主力商品であるヒーターの国内のシェアは8割を誇り「ニトリ」や「イオン」、「無印良品」で販売される電気こたつに採用されています。

 注文に合わせてオーダーメイドで作るため、機械ではできない細かな作業は職人の手で行っています。

 このヒーターを応用したものが、長年の技術で独自に開発した「オレンジヒート」です。

 熱伝導率の高い、高純度のカーボンを加工し、1300度まで熱して赤外線を放射します。

 温風を出すエアコンなどの暖房器具と違い、赤外線の場合、赤外線が当たった身体が熱を吸収することで、温まる仕組み。

 そのため空間全体を暖めることはできませんが、その分風の影響を受けないため、屋外で使用するには最適です。

同・看護師:
「風とかに影響されないので。威力はすごく強くて、ここの面にいるとすごく暖かいなと」


■「暖かい空気は上にいってしまうから」…もともとは天井が高い工場向けに開発した商品

 この商品、医療用に開発されたものではありませんでした。

メトロ電気工業の社長:
「この辺は自動車産業が盛んで、(工場は)天井が高かったり、広くて(暖かい)空気が上にいっちゃいますから。赤外線で人のいるところだけを照射すれば、余分なエネルギーを使わなくて済む」

 モノづくり王国・愛知らしく、元々は工場用に開発されました。天井が高い工場で温風を出すタイプの暖房器具を使うと、温かい空気は上に行ってしまいます。

 しかし赤外線ヒーターなら、作業する人をピンポイントで暖めることができ、加えて電源を入れるとすぐに暖まる機能と、高出力で5メートル離れていても暖かさを感じられるように設計されました。

 実験のサーモグラフィーの映像を見てみると、約2メートル離れた人間の身体が、電源を入れる前は21度くらいを示す青や水色が目立ちます。

 しかし、電源を入れて30秒後には26度以上を示す赤や白に変わりました。

 僅か30秒で体の表面温度は5度も上昇しました。

■「まさかコロナ対策に貢献できるとは」…医療向けの発想全くなかったメーカー社長も感謝

 中村医院の中村院長は、 工場で利用されているこのヒーターのことを聞き、メトロ電気工業に導入を相談しました。

中村院長:
「屋外での診療を今まで全く想定してなかった。試行錯誤の中から暖房器具としては、今知る範囲内ではこれに行きついた」

 一方、思わぬ形で自社の商品が医療現場で使われることになったメトロ電気工業は…。

メトロ電気工業の社長:
「産業にばかり目がいっていたから、医療っていう発想は全くなかったから。コロナ対策に貢献できると思っていませんでしたし、ありがたいです」

 赤外線で暖める「オレンジヒート」。屋外の現場で広がっていくかもしれません。