三重県津市に、「小学生の双子の防災探検家」がいます。2人は自分たちが住む地域をまわり、避難所の場所をはじめ土砂災害が発生しそうな所や、高いブロック塀があり危険な所などを記載した「防災マップ」を作りました。

 自分たちで調べた危険度を、写真でわかりやすく解説したその防災マップは、2020年「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で最上位の賞の1つ、文部科学大臣賞に選ばれました。

■全国から960作品が応募…小学生の防災コンクールで最上位クラスの賞を受賞

 三重県津市に住む小学6年生の双子の兄の北川英崇くん(12)と弟の尚崇くん(12)が作成した大きな防災マップのタイトルは、『安全な避難方法を探せ!ウィズコロナ~みんなのために~』です。調査のために通学路や近所をまわり、1か月かけて完成させました。

 近所の避難所や津波や大雨で浸水する可能性のある地域、そして栗が落ちてきて怪我をしそうな場所まで。大きな地図に、写真を使いわかりやすく解説されています。

弟・尚崇くん:
「コロナ禍やから…。災害とか南海トラフ地震とか起きそうやから」

父・朋央さん:
「共働きでしたので。(子供だけ)2人でおる時にどうやって逃げたらいいんやって話が素朴に出たので…」

 父の朋央さんは『災害時に、どう逃げるのか』という子供の素朴な疑問に、親として答えられなかったことから、一緒に調べ始めました。

 2人は、小学2年の時から毎年、防災マップを作ってきました。そして去年、子供の防災意識向上を目的として実施されている「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で、全国から応募があった960作品の中から、最上位の賞の1つ「文部科学大臣賞」に選ばれました。

■ハザードマップに載っていない危険な場所を指摘…来年度の市の「土砂災害」マップ掲載へ

 中でも評価されたのが「土砂崩れ」の実験です。

弟・尚崇くん:
「危険なところの土と普通の土を比べて、割りばしがどっちが先に倒れるかを実験してやりました」

 その実験とは、崩れやすい地盤を見つける実験です。色と性質の異なる2種類の土に、樹木に見立てた「割りばし」を立てます。土台の段ボールを揺らして、“地震の揺れ”を再現。それぞれの割りばしが倒れるまでの時間を測った結果、土砂崩れで木が倒れやすいのは「黒の土」よりも「黄土色の土」ということが分かりました。

 実際に確認するため、2人が土砂崩れが起きやすいと指摘する、津駅の西側にある「偕楽公園」へ。この公園は、海抜約18メートルの高台にあり、地域の一時避難場所にも指定されています。しかし…。

弟・尚崇くん:
「ここらへん、黄土色やから危ない。(斜面を触って)ちょっともろい…。落ちてくるかもしれへんから…」


 公園の近くの斜面は、ところどころ、木の根がむき出しになっています。地震や大雨で土砂が崩れた場合、木が倒れてきて危険な場所として、2人の防災マップにも記載されています。実際に危険な場所なのでしょうか。市に確認してみると…。

津市危機管理部防災室の担当者:
「偕楽公園の南側や西側には傾斜や山がありますので、土砂災害が発生する恐れがあります」

 市が来年度新たに作る「土砂災害」のハザードマップにも、警戒が必要な場所として盛り込まれる予定です。津市の防災担当者は、2人の防災マップを「ハザードマップには載っていない危険箇所が、自分で町を歩き地図におこしてあり、防災対策上素晴らしい」と感心します。

 実際に町を探検したからこそ、気付くことのできる地域の防災です。

■倒壊の危険性があるブロック塀を自治会に指摘…要望受け安全に補強

 他にも、2人が塾に行く時に通る細い抜け道には、高いブロック塀が…。

兄・英崇くん:
「前、地震でブロック塀が倒れたということを知ったから、揺れで倒れてきたら危ないから」

 2018年6月に起きた震度6弱の大阪北部地震。大阪府高槻市の小学校で、通学路のブロック塀が倒壊。登校中だった女の子が下敷きになりました。2人は危険なブロック塀を見つけると、地域の自治会に伝え、補強してもらいました。

弟・尚崇くん:
「市かわからんけど直してくれました。ブロック塀が安全に補強されていた」

 過去の災害を教訓にした実用的な防災マップです。

■災害時に役に立ちそうな古い井戸を発見…市の「災害時協力井戸」へ登録

 ある日、2人は町を探検する中で、災害時に役立ちそうな古い井戸を見つけました。

 この一帯には墓地が広がり、墓参りで使われていた井戸がたくさん残っていました。近くの寺に聞いたところ、30年以上前にポンプが故障。修理できる職人がおらず、そのまま放置されているといいます。

弟・尚崇くん:
「まず、水を出してくれるようにしてほしいというのと、災害のやつに登録してほしいってことです」

 津市では災害時、断水などが起きた場合、住民の生活用水として「災害時協力井戸」の登録を募っています。市の地図では、2人の自宅の半径およそ700メートル圏内に井戸はありません。そこでこの井戸を災害時に使えるようにできないか、自ら市に連絡して要望しました。

津市の防災担当者:
「井戸を調査して、水質等異常がなかったら登録。大規模災害が発生した時に、使わせていただく」

「みんなに住んでいる場所の安全確認と、事前に避難所の確認もしてほしい」と2人は話します。改めて町を歩き、避難所や危険な場所を事前に確認しておくとよさそうです。