愛知県春日井市に、日本画の世界では珍しい抽象画を描き続けている39歳の男性画家がいます。和紙に岩絵の具で描かれるその作品は、日本画の世界に新しい風を吹かせています。

■筆でなくエアブラシで色を付け描く…日本画に新しい風を吹かせる画家

 5月、名古屋栄の「ジルダールギャラリー」で、画家・山田雅哉さん(39)の作品が展示・販売されていました。コンセプトは「初夏の風」です。

女性客:
「いろいろな色を取り入れていて、見ていてすごく楽しい気分になる」

別の女性客:
「すごいキレイだなと思って。キレイさは、ただ者では出せない色なんだなって思いましたね」

 水の流れ、風の匂い、音の響き…。どれも目に見えないものを表現した作品です。

 春日井市にある山田さんのアトリエ。山田さんは、ここで毎日10時間絵を描いています。筆ではなく、エアブラシで色を付け、描き続けています。

【この記事の画像集を見る】

■音や言葉に色が見える…「共感覚」生かして描く抽象画

 子供の頃から絵が好きだった山田さん。愛知県立芸術大学で「日本画」を専攻し、博士号を取りました。山田さんには特別な感覚があります。

山田さん:
「(他の)みんなも、見えるというか感じると思っていたんですが、音楽聞いたときに色を感じるんですね。言葉を聞いたときも色とかカタチを感じるんです」


「共感覚」。音や言葉に色がついて見える感覚で、ダヴィンチやゴッホも持っていたといわれています。

山田さん:
「この英単語赤いなとか、この単語は黄色っぽいなとか、数字は何色だなとか…。『ま』の色がほしいって、絵具の中から、くすみ具合とかが『ま』っぽいもの探して…」

 使うのは、鉱石を砕いて作られた伝統的な「岩絵の具」。群青、若葉、茜色など、2000色以上あります。例えば青1つとっても岩の粒子の大きさによって色味が違います。

 そして、山田さんは自身で考案した新しい技法を用いて描きます。「墨流し」という伝統的な技法を応用した『新案・墨流し』。絵の具を水に垂らし、紙の上を滑らせて描きます。筆では描けない線を、水の流れで表現しました。

山田さん:
「現代アートとか、『現代を生きる自分の作品』だって思って日々作っています」

 日本画と現代アート。山田さんは去年、音楽家とコラボした映像作品に参加。日本画の可能性を広げています。

■描くことは生きること…画がある生活で暮らしを豊かに

 山田さんはアトリエだけでなく、自宅でも絵を描きます。去年始めたパステル画は、一枚描くのにわずか10分。絵のトレーニングとして、ほぼ毎日描いています。

 大学で知り合った妻の瑠芙菜(るうな)さんは、山田さんの絵が好きで結婚しました。日々近くにいる瑠芙菜さんは、夫の雅哉さんについて「絵を描くことが、すなわち生きること。そんな毎日を過ごしている人」といいます。

「家に自分の作品を置いてくれて、ふと目にした時に気分が上がったりしてくれたら嬉しい」。山田さんは、自分の作品でみんなの暮らしを豊かにしたいと考えています。

【この記事の画像集を見る】