08 須藤温子さん(櫛山沙也香役)

――久しぶりの“初めて”の連続

 この枠の作品に出演するのは「真実一路」(’03)以来になります。前作では清純な娘を演じましたが、今回の沙也香という役は…(苦笑)。演技を始めて10年以上経ちますが、こんなにたくさんの“初めて”が重なる役は本当に久しぶりです。デビュー当時は何もかも全てが新鮮で初めてづくしでした。でもそこから新たな役を演じるたび、「あんなこともあった、こんなこともあった。それで今回は…」という風に、それまでやってきたことの中から近い経験を思い出して、役作りに生かしてきたんです。沙也香はそれでは対応できないキャラクターですね。正直、難しいです。行動があまりに支離滅裂というか、予測不可能なので、展開についていくだけで精一杯です。

 桜子さんと親友だったときは、演じていても楽しかったんです。もともと笛木さんのことも大好きだから、そんな気持ちのまま演じれば良かったので。でも、沙也香の性格がそこからまさに一転したところは、私にとって「女性として、そうであってはいけない代表」みたいな人物になってしまいました。演じていても「なぜなんだろ、どうしてなんだろ」と思うことばかり。沙也香はさくらのことを、桜子さんと勝さんの間に出来た子供だと思って育てようとしましたが、勝さんの子でないと分ったことをきっかけにどんどん性格が歪んでしまいました。「子供を育てよう」という気持ちって素晴らしいですよね。どうしてそんな純粋な気持ちをすぐ捨ててしまったのか。それに、どんなゴタゴタがあったとはいえ、櫛山家の二階に住まわせてもらえることになったところでも、私ならまず“感謝”なんですよ。「二階に住まわせていただき、ありがとうございます。お借りします」と。でもそういう態度は一切なしで、図々しい要求をよくしますよね。「もう~、沙也香は!」っていつも思ってます(笑)。

――歪んでしまった強すぎる母性

 物語が進んで雄一さんとの子供も大きくなり、母親になった沙也香を演じる前は、「もしかしたら沙也香は、家族に対しても愛情がなくなっているんじゃないか」と不安でした。でも雄一さんや娘に対して愛情を感じさせるような描写があったので、まだ救われました。私は沙也香って、決して根は悪い人間ではないと思っています…というか思いたいです(笑)。ただ母性が強すぎるゆえ、それが変な方向に行ってしまっただけのことで。こういうキャラクターを演じるのは本当に初めてなので、目標としては自分の中にある違和感を克服して、沙也香のような“性悪”な人物を演じてもそこに楽しみや面白みを見つけたいと思っています。クランクアップを迎えたとき「あー、沙也香を演じられて良かった、楽しかった」と言いたいですね。

“良い人”ではない沙也香ですが、視聴者の皆さんからは少しでも楽しんでいただけたら、うれしいです。沙也香ほどでないにしろ、周りをひっかきまわしたり、混乱させたりする人っていますよね。多くの方は沙也香みたいなこと、普通なら出来ないと思うので疑似体験として、その言動を楽しんでほしいです。私がいち視聴者だったら「あちゃー、また沙也香ったらとんでもないこと言っちゃって!」なんて楽しみながら観ると思います。でも何度もいいますが、観るのと演じるのは大違いなんですよ。

――女優として私を成長させてくれる役

 沙也香に対して、否定的なことばかり言ってしまいましたが、女優としてはすごく良い経験をさせてもらっていると思っています。私は常々、「こういう役をやりたい」でなく「どんな役でも演じられるようになりたい」という気持ちが強いので、まさに挑戦のしがいがある役ですから。撮影現場では、雄一役の大熊さんと一緒のことが多いんですが、すごく助けられています。「めっちゃ緊張する」とおっしゃりながら、私から見るといつもフラットな感じというか…。どんなに大変なシーンでも、ハードな撮影が続いても、穏やかな表情を浮かべている大熊さんは、私にとって「こうありたい」という理想ですね。
ドラマの中では、雄一さんと沙也香のコンビネーションを磨いて、番組の楽しみの一つになってほしいですね。願わくば、沙也香にはこれ以上、周りを振り乱すのでなく、雄一さんと穏やかに幸せをかみ締めて暮らしてほしいんですけど…。そこはどうなるんでしょうね?

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