10 笛木優子さん(櫛山桜子役)

――撮影を振り返ると…

 物語は桜子の娘、さくらが成長して新たな展開を迎えましたが、ここまでを振り返ると本当にいろいろありました。まずは比呂人さんと心中するまで。心中に至るまでの桜子の心情は、とても悲しいものでした。演じていても、「こうするしかなかったのか」「他に手はないのか」と考えずにはいられなかったし、シーン的にも辛いことの連続だったので。それで実際、心中の場面を撮ったときは、正直死ぬかと思うぐらい大変だったんです。というのも、心中しているのが見つかり、目を覚ますよう水を浴びせられるほどに飲まされましたが、桜子はそれでも意識が戻らない、という設定でした。撮影では口だけでなく鼻からも水が入ってきて…。ギリギリまで耐えましたが、「カット!」との声がかかる前にガバッとものすごい勢いで起き上がってしまいました。きつい場面でしたが、本作の撮影が始まってすぐの収録で、桜子を演じる上では、最初に大変なところを撮影したのは良かったかな、と思っています。

 比呂人さんと心中した時点で桜子は雄一さんと結婚していましたが、台本だと雄一さんってデリカシーもなく無神経なキャラクターとして描かれていました。ところが大熊さんが演じると、とっても良い人の部分がにじんでいたんです。実は雄一さんの評価は私の周りでも高かったんですよ。あまりに桜子が雄一さんに対して冷たい態度を取っていたときは、「桜子、ひどい!」なんて言われたりもしました。でも、思うんですけど、人って誰だって自分勝手なところってありますよね。この作品は、そういう面も描かれているから、桜子だけでなく登場人物一人ひとりに説得力があるんだと思います。私はここまで桜子を演じてきて改めて感じているのは、桜子はとても強い女性だな、ということ。一見流されるまま生きているように見える桜子ですが、その中で自分の意志を貫こうと頑張ってきたし、若いときに心中という衝撃的な出来事を経験しながら、それを乗り越え生きていくことって、気持ちが強くなければ出来ないんじゃないでしょうか。そんな強さが桜子の女性として、人間としての良さだと私は感じています。

――女性として理解できた心境

 雄一さんと別れた後、桜子は唯幸さんと結婚しましたが、笛木優子としては「えー、何で!?」という気持ちでした。きっと「さくらのため」という想いが一番だったんでしょうね。守らなければならない存在が出来ると、女性っていくらでも強くなれるはずですから。私の友人でも独身時代は弱々しかったのに、結婚して子供ができたら、びっくりするぐらい強く、というか、たくましくなった子がいるんです。だから桜子の行動も、決して非現実的でない気がして。唯幸さんと暮らしていく中でそれなりに情も沸いていたのに、比呂人さんと再会してまた気持ちが揺れて…。という展開の中で、比呂人さんをめぐり明美さんと対立しましましたが、明美さんの比呂人さんを思うがゆえの過激な行動も、女性としてはすごく分かりました。女性ってそう簡単に愛する人のもとから去ったり出来ませんよね。私自身、明美さんの気持ちが理解できたから、「比呂人さん、少しでいいので明美さんに優しくしてあげて」と思ったこともあります。桜子が明美さんを駆り立てていると思うと、演じていて本当に苦しかったです。私もチャンスがあれば、明美さんのような感情を持つ役にも挑戦したいですが…。ただ、あそこま行動が過激な人物は演じるとなると、心身ともに相当大変だとは思います。

――母として女性として

 今後は母としていろいろな経験を重ね、一層強くなった桜子がどう生きていくのか見ていだきたいと思います。愛するさくらのために母として生きようとしながら、桜子に大変な出来事が起こります。演じながらも、悩むことばかりで。母としての顔だけでなく、一人の女性としての顔がまた出てくるので、“桜子の選択”というものに注目していただけたらうれしいです。

 この作品は展開が衝撃的なので、私を含め共演者の皆さんは演じているときは集中して激しいシーンに臨みました。でもワンシーン終わるごとに気持ちを切り替え、空き時間には冗談を言い合ったりしました。中でも勝役の松田(賢二)さんは大阪出身でおもしろいことを言っては、みんなを笑わせていたんですよ。私も気がつくと、どうにかして皆さんを笑わせようと、変な競争心を燃やしてましたね(笑)。

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