15 真山明大さん(櫛山健役)

――生半可な気持ちでは取り組めない

 僕にとって健はまさに“挑戦”と言える役でした。昨年、「インディゴの夜」でもご一緒させていただいた星田(良子)監督からも最初に、「“インディゴ”と同じ演じ方では健は演じられないよ」と言われたんです。確かに昨年は、同世代のメンバーとワーワー言いながら、勢いを大切に演じましたが、今回はこの枠ならではの、まさに“THE昼ドラ”ともいえる作品。星田監督は、「真山にとって“ドラドロ系”の作品への挑戦は大変なことかもしれないけれど、一緒に健というキャラクターを作っていこう」とおっしゃっていただきました。信頼する星田監督からこのような言葉をいただき、「生半可な気持ちでこの作品に取り組むのは絶対によそう。自分のできる精一杯のことをしていこう」と撮影前に思ったんです。

 撮影に入ったら…。正直、普段の生活からは想像できない世界がそこにはありました(笑)。台本を読んでも“?”と思うことが多く、自分がこのセリフをどう言えばいいのか、このシーンをどう演じればいいのか、悩むばかりで。でも、台本を読み込んでみて、端からは滑稽で複雑な物語が展開しているように見えるかもしれないけれど、この作品の登場人物は誰もが自分の置かれた環境の中で、ひたむきに生きているんだということが分かりました。だからどのキャラクターも個性が際立っているんですよね。それにとても映像がきれいだったんです。「こんな風に健も撮ってもらえるなら、普通ならちょっと引いてしまうようなシーンでも、視聴者の皆さんにスッと見てもらえるかな」と安心しました。

――“天使”のその後

 健は子供の頃、純粋で天使のようだったのに、なぜあのように屈折した部分もある男に成長してしまったのか。やっぱり健の置かれた生活環境や、一番はおじいちゃんの遺伝子を父さんを飛び越えて受け継いだってことでしょうね(笑)。本物の愛情が何か分らないまま成長してしまったので屈折したところもありますが、根は悪いヤツではないと思います。その部分を表現するため、お母さん(桜子)の前では子供の頃と変わらずの健を演じるようにしました。

 子供の頃のまま、というのは陸雄に対しても言えることで、大人になって再会したところでは何だか皮肉屋で嫌なヤツに見えたかもしれないけれど、心の底では最初から陸雄の才能を認めていたと思います。小説家を目指す彼に対し、書いたものを「面白くない」とか「垢抜けていない」とか言いながら、心のどこかでは陸雄の成功を願い、資金的な面でのサポートを買って出て。ただ優位な立場でいたかったり、素直じゃなかったりするから「俺が面倒みたる」とか言っちゃうんですよね(笑)。

――見た目の印象が僕の武器なら

 物語は最後に来て、さくら、陸雄、そして健が何とも奇妙な三角関係になってしまいましたが、視聴者の皆さんには行くとことまで行ってしまった三人がどんな人生の選択をするのか、ぜひ見届けていただきたいです。本音を言うと、健の行動はやっぱり理解できないところがあって、台本を読んで「えー!!」って思ったりもしました。きっと視聴者の皆さんの中にも、「何でこんなことになるの?」と思われる方がいるかもしれません。でも健の本心は純粋にさくらも陸雄も好きで、それゆえの行動だと思っていただければ…。

 普段の僕は自分で言うのもなんですけど、しゃべり方もスローだし、ちょっと抜けてるところもあります(笑)。だから健は本当に正反対というか、自分の中にまったくないキャラクターなんです。周りのみんなからは、「真山は何を考えているか分らないとことがある」なんて言われるときもありますけど、マイペースなだけなんです。この作品の服部プロデューサーからは「見た目の印象がクールなのは真山の武器だ」とおっしゃっていただき、そんな部分を大切にしながら健を演じてほしい、とも言っていただきました。健ほど“大人”な役を演じたのは今回が初めてだったし、何より彼の多面性を演じることができたのは、ものすごく良い経験になったと思います。お母さんやさくらに見せる優しさ、陸雄に対する強気な態度。場面ごとに表情やしゃべり方をクルクル変えながら、集中してこの役を演じることは、これからも俳優を続ける上で、本当にかけがえのない経験になりました。

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